08.08
<ミャンマー>拘束された久保田さんはどんな扱いを? 経験者が語るインセイン刑務所の実態とは 北角裕樹
ドキュメンタリー作家の久保田徹さんが7月30日にミャンマーで拘束されてから1週間が過ぎた。8月4日には久保田さんを起訴したと国軍側が発表。同日には警察署からインセイン刑務所に身柄が移されており、拘束の長期化が懸念される。久保田さんの友人でもありミャンマーで拘束された経験のあるジャーナリストの北角裕樹氏に、インセイン刑務所の収監環境について説明してもらった。
◆VIP用独房に収容か
久保田さんが囚われているインセイン刑務所は、筆者も昨年4~5月に1か月弱収監されていた経験がある。200人もが一緒の部屋で雑魚寝する一般の政治犯と違い、外国人や閣僚ら重要視される政治犯はVIP用の独房に収容されていた。久保田さんも同様の扱いを受けるとみられる。
私の体験では、独房は幅2・5メートル長さ4メートルほどで、扉の外にコンクリート敷きの水洗い場があった。トイレは陶器製の穴があるだけで、トイレットペーパーはないので手で処理することになる。水洗い場には大きな水桶があるが、熱帯のミャンマーではすぐにコケが湧いてしまうので、数日おきに水を抜いて掃除をする必要がある。また、現在ミャンマーは雨期だが、独房の出入り口は鉄格子のため、激しい風雨があると水が部屋の中まで入ってきてしまう。
食器や掃除用のブラシなどの生活用品は、同じ獄舎に収監されて住んでいた政治犯らが分けてくれた。また、刑務所には銀行のように資金をプールしておくシステムがあり、誰かが現金を刑務所に届けてくれれば、タオルなどの生活用品のほか、ビスケットやバナナなどの食品も購入できる。
在ミャンマー日本大使館は差し入れなどを行い、久保田さんをサポートする方針だ。私の場合は、丸山市郎大使が自ら差し入れを運んでいたといい、毎回刑務所長に面会して待遇改善を申し入れしていたそうだ。
食事は豆のカレーやナスのカレーなどミャンマー料理が1日に3回提供される。週に2~3回ほどは肉も出る。久保田さんは拘束後に警察署で出されるミャンマー料理が受け付けられず、日本大使館がおにぎりなどを差し入れていたという。食べることの以外に楽しみがないので食事が合わないと辛いかもしれない。
◆国軍は7月に4人処刑 久保田さんの早期解放を
日本の家族や友人らの心配は募るばかりだが、インセイン刑務所内で外国人が暴力を振るわれることは基本的にない。軍の尋問施設で凄惨な拷問を経験したミャンマー人政治犯でも、「ここ(インセイン刑務所)は安全なのでほっとした」などとこぼすほどだ。
ただ、7月末に国軍側は元議員ら4人の死刑を執行しており、その後インセイン刑務所で政治犯たちが抗議活動を行い、鎮圧されたとも伝えられる。こうした混乱に久保田さんが巻き込まれる可能性もあり、早期の解放が必要なことは言うまでもない。
日本では、久保田さんの友人と在日ミャンマー人らが中心となり、拘束翌日の7月31日に約100人が参加して久保田さんの解放を求めるデモを行った。また同時にドキュメンタリー仲間がオンライン署名キャンペーンを開始、5日に鈴木貴子外務副大臣に約5万筆の署名を提出した。こうした思いが実を結ぶことを祈っている。
北角裕樹(きたずみ・ゆうき)
ジャーナリスト、映像作家。1975年東京都生まれ。日本経済新聞記者や大阪市立中学校校長を経て、2014年にミャンマーに移住して取材を始める。短編コメディ映画『一杯のモヒンガー』監督。クーデター後の2021年4月に軍と警察の混成部隊に拘束され、一か月間収監。5月に帰国した。
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Source: アジアプレス・ネットワーク