2021
06.11

賢い資産運用のため何よりも優先して検討すべきこと…超一流投資家に学ぶ

国際ニュースまとめ

<自分の弱点を知り過剰なリスクは避ける。投資と人生の「必勝法」を模倣せよ> もっとリッチに、もっと賢く、もっと幸せに──。誰もがそう願うはずだが、現実はそんなに甘くない。 4月刊行の『もっとリッチに、賢く、幸せに──世界の超一流投資家たちの市場と人生への投資術』は著名投資家たちから教訓を集め、それを毎日の生活に応用する方法を紹介した本だ。「注目すべきは、一流投資家たちが大惨事を回避し、ゲームを続け、相場の急落を生き抜くことの大切さを説く点だ」という。 本誌米国版と人脈サイト「リンクトイン」のインタビュー・シリーズ「ベター」に、同著の著者でジャーナリストのウィリアム・グリーンが登場した。その中から重要なポイントを5つ紹介しよう。 * 脆弱性を減らす 先を読もうとする代わりに自分の脆弱性を減らすよう意識して。自分のエクスポージャー(特定のリスクにさらされている資産の割合)について考えてみる。「私の脆弱性はどこか。資金を全て一つの銀行、国、投資機関に集中させているか。一つの株式だけに投資しているか。その株式のことを分かっているか」 投機的でないほどうまくいく可能性が高い。投資運用会社ファースト・イーグルのマシュー・マクレナンの言う「相場の急落を生き抜く」態勢づくりが重要だからだ。コロナ禍で痛感するように、パンデミック(感染症の世界的大流行)であれ結婚生活の危機であれレイオフであれ、人生に「急落」は付き物。分相応に暮らし、過剰なレバレッジ(自己資本に対する負債の比率)や負債を抱え込まないことが必要だ。 子供に複利を教える 子供に早くから投資させよう。100ドルや1000ドルが10年後、20年後、40年後にどうなるかを教えれば、驚くべき結果になる。インド系アメリカ人投資家モニッシュ・パブライは、貧しいがIQの高いインドの子供たちに、彼の17歳の娘が夏休みのバイト代4800ドルを投資すれば60年後には何百万ドルにもなる可能性があるという話をした。目を丸くする子供たちに「複利の威力を覚えておくかい」と尋ねると、全員が「はい」と答えた。 成功法をクローンする 模倣は、実行する人はほとんどいないが、ものすごく強力なツールだ。例えばパブライは、空港で伝説的投資家ピーター・リンチの著書を読んでいて、バークシャー・ハサウェイCEOのウォーレン・バフェットの収益率を知った。「バフェットのやり方が正確に分かるとしたら? それを逆行分析し、再現し、それらの法則を人生と投資法に徹底的に応用できるとしたら?」 パブライはこれをクローニングと呼ぶ。パブライは資料や文献に当たり、20年間バークシャー・ハサウェイの年次総会に足を運んで、本当にバフェットとパートナーのチャーリー・マンガーのやり方を突き止めた。一から作り直すのではなく賢い人々のやり方を実際に逆行分析するのは効果絶大だ。 ===== 私自身、『もっとリッチに』を書くに当たってマイケル・ルイスやマルコム・グラッドウェルといった優れたノンフィクション作家の本を参考にした。とはいえ、クローニングとはただ対象をなぞって複製することではない。真に頭の切れる人々が手に入れた習慣やひらめき、行動指針を理解し、それを自分の環境に当てはめる方法を探ることだ。 自分自身の才能に合っているかどうかも重要だ。私がタイガー・ウッズのまねをしようとしても意味がない。 投資家としての自己を分析すべし 私が取材した大物投資家たちの多くは「たいていの人はインデックスファンドを買うべきだ」と語っていた。 投資家としての自分を客観的に分析できるなら、それは大きな武器になる。自分は投資というゲームで勝てるタイプの人間か。情報面で有利な立場にあるか。ほかの人より知識は豊富か。相場が下落するとすぐに動揺してしまう性格か。相場が急騰すると浮き足立ち、自分もブームに乗っかろうとしてしまうタイプか。 自分は投資で勝てるタイプの人間だと思ったら、バフェットやパブライといった人々の行動原則を参考にすればいい。だがやはり大半の人にとっては、インデックスファンドに絞って分散投資するのが賢いやり方と言えるだろう。 若くない人が投資で資産形成することは可能か 年齢次第だが、まずは手持ち資金を減らさないように努めることが肝心だ。攻撃的な投機で大きなリスクを冒したりすれば、出遅れている上にさらに後れを取ってしまいかねない。生活に必要な金まで失って、時間がさして残されていないのに資産形成をやり直す羽目になっては元も子もない。 少々の負けにも耐えられる体力を付けるには、負債を減らすかゼロにするとともに、過剰な支出がないか目を光らせるのが肝要だ。身の丈に合った暮らしをするといった比較的地味な対策を取れば、長期的に辛抱強く株価の上昇を待つ投資が余裕を持ってできるだろう。手元不如意になって悪いタイミングで現金化する必要に迫られることもない。 本書で私は、伝説的投資家のアービング・カーンの言葉も引用した。取材した当時、彼は108歳だった。 カーンは私に、投資の秘訣を「安全」に尽きると語った。「マイナス面を考慮することは、投資家がやらなくてはならない何よりも大事なことだ。この作業は、利益獲得のためのいかなる検討にも先立ってすべきである」 これは年齢を問わず、みんなに当てはまることだと思う。真っ先に考えるべきは、損を出さないということだ。年齢が高くなってから始める人は、失敗した分を取り戻す時間がないから余計にそうだ。 今のように市場が強気に傾き、警戒心を手放してしまう人が多いときにはなおさら、失地回復のためにむちゃな運用で大き過ぎるリスクを冒すのは避けたいところだ。

Source:Newsweek
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