11.20
AIで業務効率化⇨さらに仕事が積まれる問題。 組織はどうすればいい?がAI活用の調査結果から見えてきた
生成AIの利用によって、更に仕事が忙しくなった――。
マスコミなどに生成AIを用いたコンテンツ編集サービスを提供するStoryHubが、ユーザーであるメディアの記者・編集者に対して行ったアンケートデータで、そんな結果が見えてきました。
AI利用の先を考えなければ、こなせる業務の「量」が増えるだけで、仕事の「質」が高まらないのではないかと思える点も見えてきます。
このままでは、人生が「つらたん」すぎませんか?
生成AIで生産性が高まったあなたがいる。でも…
まず、事実を確認してみます。
アンケートデータでは、生成AIを使うことによって生産性が「高まった」と回答したユーザーが91%に上りました。
活用の成果としてあげられたのは、コンテンツ公開までの時間短縮や、作成するコンテンツ量の増加、制作コストの削減などです。ありがたい。
StoryHub「生成AI活用状況に関するアンケート」より確かに効率が上がったように見えます。業務にかける時間が短縮できましたものね。
でも、ちょっと待ってください。
「効率化に比べて、労働環境の改善を上げる人が少ない」
というのが気になります。
StoryHub「生成AI活用状況に関するアンケート」よりHuffPost Japan編集せっかく効率化できたのに、なぜだろう?
考えるヒントは、同じアンケートデータの、「何をAIに任せているか?」という回答の中にありました。
StoryHub「生成AI活用状況に関するアンケート」よりこのデータをみると、あなたは次のような感じでAIを使っているのではないでしょうか。
– 月曜日:ニュース記事を書くときに、AIで30分、作業を短縮
– 火曜日:解説記事を書くときに、AIで1時間、作業を短縮
– 水木金:同じように既存の業務を早く終わらせる
– 金曜日の夜:「あ、時間ができた。でも何をしよう?」⇛ そのまま、翌週の定例業務の準備に充てられてしまう…
つまり、せっかく得られた時間を、再び「やらなきゃいけない業務」に使っちゃってるということです。
こんな状況が続いたとして、1年後のあなたを想像してみて下さい。
AIが使えるようになったあなたは、幸せでしょうか?
ここでStoryHubは、1つの問題提起をしています。
「業務効率化、品質の向上がヘビーユーザーでは進むものの、さらに仕事が増えている…?」
同じ生成AIによる成果を、AI編集アシスタントサービス「StoryHub」を週に数回以上使うヘビーユーザーと、それ未満の利用をライトユーザーで分けてみましょう。
StoryHub「生成AI活用状況に関するアンケート」より顕著な違いは、ライトユーザーのほうが「労働環境の改善」を成果に感じているという点。
ちょっとびっくりしますよね。
なんだか、ヘビーユーザーのようにコンテンツを作っても作っても作っても作っても、「我が暮らし、楽にならざり」なのではないか。
そんな気持ちになってきます。ガーン。
人生、楽しみたいよね。そのためのAIであってほしい。
私たちがAIを使って楽しくやれそうなヒントは、何かないでしょうか。
注目してほしいのは、「新規事業への挑戦」を成果にあげた人が、ライト層にも20%存在するという点です。
StoryHub「生成AI活用状況に関するアンケート」よりアンケートの自由回答の中には、「新たな人員を割けない状況の中、電子書籍の出版など新しい挑戦ができた。(テレビ局 / 番組制作)」という機会創出に関する回答がありました。
私たちの心の中には「本当は、こんなことをやってみたい」という気持ちがあるかもしれない。
でも、「既存業務が優先」だったり、「新しいことをやる具体的方法がない」という現実によって、そこが実現できてないだけではないのか。
ということは、「やらなきゃいけないこと」より、「やってみたいこと」へもっとAIを活用できるようになったら、「AI使うと楽しいわ」が増えるんじゃないかと考えられます。
さぁ、じゃあ、どうしたらそれができるようになるのか。
今、何が課題になっていて、その課題をどうすればよいかを3つ考えてみます。
1.「空いた時間は、新しいことへ使う」とマネージャーが意思決定する
AIを頻繁に使っているヘビーユーザーでさえ、得られた時間短縮を「コンテンツ量の拡大」に充てており、新規事業に向けていない状況が明確なデータで示されました。
ここには、「空いた時間は、既存の仕事の量をもっと増やす」というのが暗黙のデフォルト選択状態になっていることが考えられます。
つまり、組織的な「その先の」AI戦略が考えられていない、システム課題がある。
この課題への回答は、例えばソフトバンクのように「効率化」だけではなく「事業化」を、メンバーに意識してもらえるように、マネージャー陣が示すことで解決できそうですね。
ソフトバンク「全社員に向けた生成AI活用推進の取り組み」より2.ノウハウを属人化せず、組織的に展開する。
組織の中で、「空いた時間を別のことに使おう」という号令がくだされても、何をやったらいいかわからないということもあるかもしれません。
「本当はやったらいいとは思うんだけど、どこから手を付けていいのかわからない」という状況ですよね。
そんなときのヒントを、会社の中の別の人のやり方から学べたらどうでしょう?
この、「他の人からやり方を学ぶ」というのが、2つ目の課題です。
というのも、StoryHubのアンケートによると、社内での生成AI活用の課題の72.1%が「ノウハウ属人化」だったのです。
StoryHub「生成AI活用状況に関するアンケート」よりこれは、ほぼ3人に2人の編集者が、「このままではAIノウハウが個人の中に閉じ込められてしまう」という危機感を持っている状態と考えられます。
一方、同じグラフの中で、組織的な対策に当たる項目を見てみると、とたんに少なくなります。
– 公式な定例会や勉強会 → 32.7%のみ
– AIに関する担当者やサポート体制の整備 → 36.5%のみ
– ガイドラインやルール作成 → 34.6%のみ
つまり、「ノウハウ属人化は問題だと認識しているのに、組織的な対策は全体の3割程度に留まっている」という、認識と行動のギャップが存在しています。
属人化されたノウハウを組織全体に広げるために、一例として、故・野中郁次郎さんが提唱した「SECI(セキ)モデル」を使えそうです。
ここでは細かい説明は省きますので、マネージャーの皆さんに、全体感を考える部分は頑張って考えてもらうとして、じゃあ、それを考えてもらったあと、今度、個人として何ができるのかをみてみましょう。
3.「なぜこのタイミングでAIを使ったのか」「なぜこのプロンプトを工夫したのか」という背景や意図を言語化する。
他の方のやり方を学ぶためには、その情報が会社に溢れているということが必要ですが、あなたも自分のやり方を、他の方に共有することが大事になってきます。
このやり方は、課題の2番目に紹介したSECIモデルの「表出化」に該当するのですが、3つステップで考えるとわかりやすいです。
SEKIモデルの「表出化」3つのステップと例(1)ステップは、「何をしたか」→「なぜそれをしたか」→「なぜその問題があったか」の3段階。
わかりやすく、タイトルを考えるときにAIを利用したときについて考えてみます。
「タイトルを考えるとき」の表出化の3ステップと例
ステップ1.何をしたか
例 「 ChatGPTで複数のタイトル案を生成させた」
ステップ2.なぜそれをしたか
例 「手作業だと時間がかかり、想像力の限界があるから」
ステップ3.なぜその問題があったか
例 「 読者層ごとに響くキーワードが異なり、1人の編集者では複数の視点を持ちにくいから」
ここまで考えることで、この業務だけでなく、例えば「異なるターゲット向けのコンテンツ案出し」という他の業務においても、同じ手法が使えないか考えられます。
もちろん、AIを使わない条件などの制限についても検討できます。
「AIを使わず記事を書くとき」の表出化の3ステップと例
SEKIモデルの「表出化」3つのステップと例(2)ステップ1.何をしたか
例 「 AIを使わず、人間のみで執筆した」
ステップ2.なぜそれをしたか
例 「AIが生成した文章だとブランド固有のトーンが消えるから」
ステップ3.なぜその問題があったか
例 「 読者がこのメディアを選ぶ理由は『この編集者の視点』。AIの標準的表現だと、競争優位性が失われるから」
つまり、 「ブランドアイデンティティが重要な領域」はAI活用を限定するという制限についても共有ができますし、または、この事によって「ブランドに沿ったAIエージェントは作成できないだろうか」と、別の事業案を検討することだってできるかもしれません。
ここまで考えることで、あなたの知識が横展開されて、同じ事業でも違う事業でも、社内の誰かの役に立つかもしれないというのが想像できるのではないでしょうか。
StoryHubの「レシピ」という、編集業務の定型的なワークフロー(企画から初稿まで)をテンプレート化し、複数回再利用できる機能を活用している人の中にも、次のような感想が見られています。
共有しにくかった仕事のノウハウを伝えられるようになった。レシピをつくることは、すなわち自分の仕事のやり方を見つめなおす機会に等しい気もしています。レシピ作成を通して仕事の言語化が進む効果があるように思います。(その他 / コンテンツマーケ担当)
ビジネスのお宝ヒントを探してみる
最後に、アンケートデータより「編集工程における生成AIの現状と期待」についての回答を紹介します。
StoryHub「生成AI活用状況に関するアンケート」よりこのデータから、「企画・リサーチ」や「取材・インタビューの実施」といった、編集工程の「川上」に当たる部分は、生成AIについて期待が低いことがわかります。
結果の裏側には、川上工程は本質的にクリエイティブ・判断・関係構築に左右されるという事実があったり、「人間として、この仕事をやりたい」という思いがあったりすることなどが考えられます。
一方で、「この川上部分から、ビジネスを創出するとするなら?」と生成AIと壁打ちしてみることは、他社との差別化へのヒントがあるかもしれません。
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以上、「生成AIを使えるようになる」という目標を据えるよりも、「“自分の人生を楽しくするために”生成AIをどう使うのか」と問いながらAIを使うほうが、よりやりがいのある人生を生み出せるということを考えてきました。
また、やりがいのある人生のためには、自分の知識を組織全体に使えるように、私たち個人も意識して取り組む必要があることもみえてきました。
まだまだ、AIの本格的な活用は、始まったばっかりです。
より楽しんで使えるようになるとよいですね。
【画像】AIノウハウを組織展開するときに意識するべき「表出化」の3ステップとは
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Source: HuffPost




