06.06
<北朝鮮内部>少子化で堕胎を目の敵にする金政権 不法堕胎で元助産師逮捕 「避妊具すら売っていないのに…女性が憐れだ」

北朝鮮両江道(リャンガンド)金亨稷(キムヒョンジク)郡で先月15日、闇で堕胎手術を執り行ったとして50代の女性が逮捕される事件があった。深刻な少子化が進む北朝鮮では、堕胎行為は「非社会主義的行為」として厳しい取締りと法的処罰の対象になっている。しかし、女性たちには堕胎をせざるを得ない理由がある。両江道恵山(ヘサン)市に住む取材協力者の女性が、5月中旬に伝えてきた。(洪麻里/カン・ジウォン)
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◆妊娠2カ月までなら2000円で闇手術
取材協力者が伝える事件のあらましは以下の通りだ。
「5月15日、堕胎手術を行った産婦人科助産師出身の50代の女性が逮捕される事件があった。郊外でひっそりと個人宅で手術を引き受けていたのだが、手術をしたところ、患者が出血多量になって病院に運び込まれ、発覚したということだ」
逮捕された女性は、妊娠2カ月までであれば100元(約2000円)、6か月までであれば300元(約6000円)の料金で堕胎手術を請け負っていたという。国営企業の一般労働者の月額労賃の水準は3万5千ウォン(約178円)~5万ウォン(約255円)程度なので、高額な手術費だ。それでも逮捕された女性は1日最大4人まで手術をしていたということから、不法な堕胎術の需要の多さがうかがえる。
※北朝鮮1000ウォン=5.1円(5月末現在)のレートで換算。
協力者は、「当局は、堕胎は反動であり、手術を受けた人を全て調査する、無条件に厳重処罰に処すと言っている。銃殺もありうるという話まである」と話す。
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◆出産すれば米5キロ支給…貧弱な出産奨励策に「どうやって育てるの?」
子どもを産むか産まないかはもちろん、中絶をするかしないかも、女性自身に決める権利がある。それが、なぜ「不法」行為となるのか?
北朝鮮当局は2023年12月、平壌で「母親大会」を開いて以降、「全ての母親が子どもをたくさん産み育てることが愛国」とし、出産奨励政策を積極的に宣伝してきた。背景には、女性が結婚も出産も忌避する傾向が強まる中、出生率を何とか上げようという狙いがあるとみられる。
もともと堕胎行為は厳しい取締りの対象だったが、「母親大会」以降はさらに厳重になった。前述の逮捕された女性も、恵山市内では取締りが厳しいため、郊外の自宅で密かに堕胎を希望する女性を受け入れていたという。
協力者は、当局の政策に憤りを隠さず、こう話す。
「『母親大会』以降、党は、児童支援、食糧支援、おむつ支援など色々制度を作ったけれど、それだけでどうやって子どもを育てるのか? 子どもを産めば、洞事務所が米5キロとトウモロコシ10キロをくれるというが、それで子どもを育てようという人がどこにいるのか?」
◆合法的な堕胎はあるものの…
協力者によると、一切の堕胎が認められていないわけではないという。
「病院で(合法的に)堕胎するには、夫、夫の家族、人民班長、洞事務所まで承認を得なければいけない。しかも、家庭の暮らし向きと堕胎せざるを得ない理由まできっちりと明示する必要がある。あまりにも手続きに時間がかかるので、堕胎できなくなる場合もある。だから、(不法でも)個人で手術をしてくれる人を探すしかないのだ」
こうした状況を踏まえて、協力者は、男中心の社会を嘆き、女性の不憫を憐れむ。
「(国は)男性の精力にいいというものは作っても、避妊具は中国産だけで国産のものはない。そもそも、中国産の避妊具も薬局での販売を承認しないから売れない。取締りに引っかかれば、産めといわれる。厳しく取締りをするから、密かに堕胎手術をしようとして、事故が起きている。この国の女性たちは本当に可哀そうだ」
◆女性たちに認められない「産まない」という選択
「産まない」という選択は、女性たちの境遇の苦しさの反映である。
ただでさえ食べて行くのにも大変な状況なのに、結婚して子どもを産めば、職場に出てもろくに現金収入が得られない夫に代わって、稼ぎに出なければならない上、子育てや家事の負担はほとんど女性の肩にのしかかる。
昨今の北朝鮮では、個人の経済活動が強く制限され、現金収入が激減している。子どもを産んでも、お腹いっぱい食べさせられるのかという心配も付きまとうだろう。
だからこそ、北朝鮮の女性たちに結婚も出産も忌避する傾向が強まっているのだが、望まない妊娠をすることは常にあり得る。「産まない」という選択を取らざるを得ない女性たちに、厳しい統制と処罰で応じるのではなく、当局が他に取るべき政策があるはずだ。
※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。

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Source: アジアプレス・ネットワーク

