05.27
ハーバード大学に合格した。父は沈黙し、祖父母は衝撃的な言葉を私にぶつけた。
トランプ政権は、ハーバードなどの大学に対する攻撃を強めている私は3月27日、ハーバード大学の合格通知を受けた。その後4日間、父は私と口を聞いてくれなかったー。
合格発表の日、私は世界中の何千人もの入学志願者と共に、息を止め、目を閉じ、ハーバード大学のウェブサービスで「申請状況」のボタンをクリックした。
脳より先に体が反応し、椅子に倒れ込みながら、驚きのあまり息を吐いた。母は叫び、父はただ画面を見つめていた。
私はその瞬間、喜びと興奮しか感じなかったーー画面を見つめている父が、同じ気持ちではないと気づくまでは…。
ネットでよく見る「合格発表動画」のように、父が飛んで喜び祝福してくれるのを待ちながら、父にとって私の合格は単なる「誇り」ではなく、より複雑な感情を呼び起こしたのだと理解した。
トランプが大統領になってからの家族
私は厳格な共和党員の家庭で育った。ずっと伝統的な共和党員だった母は、第一次トランプ政権で起こったことを受け、その後はトランプに投票していない。一方、父と父方の祖父母は、MAGA(Make America Great Again:アメリカを再び偉大にというトランプ氏のスローガン)」路線を突き進む共和党とトランプ氏を支援し続けている。
私は8歳にして、家族が分裂したことをはっきりと感じていたことを覚えている。第一次トランプ政権誕生前は、祖父母の家に行くと、湖で泳ぎを習ったり、祖父に釣りを教えてもらったり、早朝に一緒にランニングをしたりするのが習慣だった。
しかしトランプ氏が大統領に初当選してからは、居間ではFox Newsが流れ、母と私はインスタントラーメンの匂いを批判されないよう、離れで調理して食べた。
私が作家になる夢や、母がアジア系移民であることなど、それまで祖父母が称賛してくれていたことの全てが、トランプ大統領の誕生後は政治的に扱われるようになった。
祖父母は、私のアマゾンAI音声サービス「アレクサ」にさえ、「ディープステートが私たちの会話を監視するための機械」だと警戒心を抱いた。
祖父母の家の温かさや居心地の良さが失われるに連れ、私たちが訪れる頻度も減り、彼らは私たち家族だけでなく、友人たちからも孤立していった。
やがて私は、以前は受け入れていた考えや人々に対する祖父母の侮辱や恨み、そして彼らが今信じていることを、不快ながらも静かに受け入れるようになった。
彼らが政治について話したり、無知なコメントをしても、ぎこちない笑みを浮かべ何も言わなかった。すでに亀裂の入った家族にこれ以上負担をかけたくなかったからだ。
白いMAGA帽を被っているトランプ大統領=2025年5月25日、米ホワイトハウス「ハーバード?それってリベラル派の学校じゃないの?」
時が経つにつれ、私は祖父母を「以前のように戻す」という子どもっぽい願望を手放さざるを得なかった。その時感じた無力感が、政治的見解の異なる人々に手を差し伸べたいという私の情熱や、高校時代に生徒会や模擬国連に参加し、外交スキルを理解し習得しようという気持ちを刺激したのだろう。
しかし、ハーバード大学を皮切りに、ブラウン大学、スタンフォード大学、コロンビア大学、と多くの名門大学から合格通知が届き始めると、傷口が再び開いた。
「ハーバード?それってリベラル派(自由主義、保守派と対立)の学校じゃないの?」
私がビデオ通話で合格を伝えた時、祖父母が最初に放った言葉がこれだ。
「何の役に立つの?」
私はその言葉にショックを受けた。それが、合格するために私がしてきたすべての努力に対する祖父母の反応だとは信じられなかった。
その言葉にさらに父の沈黙が加わり、私は限界に達した。
「ハーバードには世界トップレベルの教授や学生がいる。議論する余地もない。事実だから」
祖父母に本気で怒りをぶつけたのは、これが生まれて初めてだった。彼らが否定したのは、私の考えや動機だけではなかったからだ。夜遅くまで勉強したこと、力を注いだ全ての課外活動、寝室の壁にテープで貼った私の全ての夢…祖父母は、これまで私が努力してきたこと全てを否定したのだ。
私は泣き始めた。みんなが一緒に祝ってくれなかったからじゃない。自分の祖父母が一緒に喜んだり、私の偉業を祝ったりしてくれないことが信じられなかったのだ。彼らの反応は、家族や自然の法則に逆らっているように感じた。孫の偉業以上に意味のある政治思想があるだろうか?
驚いたのは、祖父母からの反応だけではない。私が合格した大学について、多くの隣人、親戚、友人が、悪意なく意見や彼らの政治的スタンスに沿うか否かを述べてきたのだ。スタンフォード大学やブラウン大学は「リベラルすぎる」から行くべきではないとか、「今ハーバードで起きていること」を理由に進学を考え直すべきなどと言われたりした。
トランプの標的にされたハーバード大学
ハーバード大学は今、政治的要求に応じない高等教育機関に対するトランプ氏の前例のない攻撃に対し、勇気を持って反撃している。
大統領がエリート教育を標的にする中、低所得家庭の学生で学資援助や連邦政府の奨学金プログラムを受けている友人たちは、支援を完全に失い教育を受けられなくなるのではないかと心配している。
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私たちは、大学での新学期を楽しみにする代わりに、一生懸命努力し入学資格を得た大学が、一つの署名で損害を受けたらどうしよう?という新たな不安に駆られている。そもそも、なぜこんなことが起こっているのだろうか?
2025年の始め、私のハーバード大学への進学をめぐる家族内の論争が起こる前、私はニューヨーク州ウェストポイントにあるアメリカ陸軍士官学校への入学を辞退した。
現政権が同学校から、社会から疎外されたコミュニティのための居場所を奪い、ピート・ヘグセス国防長官のように「女性は戦闘任務に就かせるべきではない」という考えを他の士官候補生たちが堂々と述べ始めるようになったのを見て、私はこの学校で安心して学ぶことはできないと思ったからだ。
安心できるはずがない。自分の信念を主張したら、かつて私のような女性士官候補生を助けてくれたグループのように、静かに消されてしまうかもしれない。
私はまだこの国を信じているし、奉仕したいと思っている。私はハーバードの予備役将校訓練課程(授業を受けながら軍事訓練を受け、卒業後の数年間軍役に就くことが義務付けられているが、学費支援や奨学金が受けられる)にも入学する予定だ。それなのに、愛国心を促進すると主張する政権に幻滅させられているのがいまだに理解できない。
ハーバード大学キャンパス内での集会に集まる学生や教員たち=2025年4月17日アメリカの大人たちよ、目を覚ませ
私やクラスメイトたちは若い大人として、人生の出発点にいる。しかし、苦労して勝ち取った成功を祝うどころか、政治的な地雷を踏まないよう渡り歩いている。本来なら期待に満ちた瞬間が、この政権の行動によって影を落とされている。
大学の合格発表シーズンは、休暇中に祖父母の家を訪れる時のような緊張と不安の時期になってしまった。
トランプ政権の目標は恐怖を作り出すことのようだ。私と同じ年代の人々は、発言すること、教育を求めること、厳しい質問をすること、不当と思われることに疑問を呈すること、この国を受け継ぐ世代として自らを表現する権利を行使することを恐れている。
トランプ政権の行動は、私たちが夢を見ることさえ安全ではないと明らかにした。私たちは、権力争いの中で使われる政治的ポーカーのチップに過ぎないのだ。
私の家族やコミュニティを洗脳したこの「不安定化現象」について、トランプ大統領だけを批判したいと強く思っているが、それ以前からアメリカには深い政治的分断が生じており、真に非難すべきはメディアの偏向報道やSNSなどでの真実への攻撃であることはわかっている。トランプ大統領は私が経験した敵対心を生み出したのではなく、それを助長し、利用したのだ。
その人にとって、もし私が娘、孫、隣人、学生、友人であることよりも、政治的主張が相容れるか存在かどうかが重要なのだとしたら、何かが壊れている。
それがこのムーブメントの間違っているところであり、これはMAGAだけの話でなく、今私たちの国を覆っている過激主義と政治的偏見の拡大に加担している全ての大人たちに言っているのだ。
それは、父の車内で絶え間なく流れていた保守派ラジオトークショーであり、祖父母の家の居間で何時間も流れていたFoxニュースでもある。SNSの暗い溝で起こっていたジャーナリズムと民主主義の理想の静かな死が、今や一般的に広がり始めているのだ。
私は、自分の人生における権威ある人物…つまり、支援や指導、賢明なアドバイスを提供するはずの人物の自己満足のために沈黙を守ることを拒否する。時が経ち、独立記念日や感謝祭を家族と過ごさなければならなくなったとき、私はハーバード大学での教育の信頼性について多くの疑問を投げかけられるだろう。
私はこうした疑問を、事実と自らの経験を共有するという自分が唯一知っている方法で跳ね返すつもりだ。この状況により、父や祖父母を嫌いになりかねないが、そんなことはない。私は彼らを愛しているし、彼らも私を愛してくれている。
トランプ大統領に、共感と思いやりを奪われたりしない。私の選んだ進学先が原因で、家族がより分断してしまわないか心配しているが、でもそれ以上に、この国の分断を心配している。
アメリカの大人たちよ、目を覚ましてほしい。政治的な偏見によって、高等教育を受ける子どもたちが敵意を持たれるような未来を作ることは、政党に関わらず危険なことだ。これはハーバードだけの問題ではないし、私だけの問題でもない。私たちが築こうとしている国、つまり、若者たちが前の世代と違うことを考え、夢を描き、信じることで罰せられる国の問題だ。
私たちはあなたたちの文化戦争ではない…あなたの子どもであり、未来なのだ。
▼筆者は、この秋からハーバード大学に通う予定の現役高校生で、Bella Pazはペンネームです。
ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。
Source: HuffPost




