2021
10.25

中国当局、不動産税を試験的に導入、専門家「経済的不確実性が高まる」

国際ニュースまとめ

 
国営新華社通信によると、全人代常務委員会は、課税対象となるのは「居住用」と「非居住用(商業用など)」の各種類の不動産物件と定めた。また、同委員会は「条件が揃った時に、タイムリーに(不動産税関連)法律を制定する」と明示したという。

 
習近平国家主席はここ数年、国内不動産市場の過熱化を巡って、「住宅は住むためのもので、投機活動の対象ではない」と複数回発言し、市場の沈静化を図った。

 
習当局は8月、国内の格差是正を目指し「共同富裕」方針を掲げた。今月16日、習近平氏は共産党理論誌、「求是」で、『共同富裕を推進する』と題した評論記事を掲載し、「不動産税の立法と(不動産税制度)改革を推し進め、試験導入に取り組む」と主張した。

 
いっぽう、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)19日付によると、中国共産党内では、習近平氏が不動産税の導入を加速することについて、反対意見が多数を占めた。反対者らは、無理やりに不動産税を徴収することは、「社会不安」を招くと示した。習近平当局は強い反発を受けて、試験的な導入実施の都市数を当初の30から10に減らしたという。

 
反発

米サウスカロライナ大学の謝田教授は24日、不動産税の導入を巡って、共産党内では以前から根強い反発があると大紀元に語った。

 
2011年、上海市では、2軒目の住宅購入の市民を対象に、不動産税を試験的に導入した。四川省重慶市は、1戸建ての住宅、または「高額」住宅物件に対して課税すると決定した。

 
「しかし、約10年間にわたる2都市での試験的な導入は、上海市と重慶市の不動産市場や住宅市場を沈静化できなかった」と謝教授は指摘した。

 
中国国内で不動産税の導入に反対する人が多い理由は、「法的根拠がないため」だと教授は示した。「中国共産党は土地を国有化している。住宅を購入した市民は、住宅使用権を持つが、土地の所有権を有しない。当局の不動産税徴収は『筋が通らない』と主張する人が多い」

 
反対者は、不動産税は各家庭にとって大きな負担になることも強調している。

 
謝教授は、「不動産税率は不動産相場の約1%にあたるという米国の基準で試算したところ、一世帯が支払う年間不動産税の金額は1万元(約18万円)以上という結果を得た。中間層にとって大きな負担であることがわかる」と述べた。

 
教授によると、反発が最も強いのは、複数の物件、あるいは数十軒、数百軒の物件を持つ党内の既得権益集団だ。「当局が不動産税を本格的に導入すれば、彼らは税金逃れのため、物件を次々と売却することが容易に想像できる」

 
今年1月、収賄罪などで、当局に死刑判決を受けた国有不良債権処理大手、中国華融資産管理股份有限公司の頼小民元会長について、中国メディア「財新網」は、「100軒余り」の住宅物件を持っていたと報じたことがある。

 
不確実性

台湾の経済評論家、黄世聡氏は、今、不動産税の試験導入を他の都市に拡大するのは「タイミング的に悪い」と指摘した。同氏は、不動産市場の中国経済に対する貢献度が大きいとし、不動産企業の過剰債務問題に加え、「不動産税の導入は市場への打撃が大きく、中国経済の不確実性がさらに高まる可能性があると述べた。

 
中国不動産市場に詳しい評論家、鄭義氏は、当局が不動産税を導入することに2つの目的があると分析した。「1つは国内の不動産価格、住宅価格の高騰を抑える狙いがある。もう1つは、税収を増やすためだ」と話した。

 
鄭氏は黄世聡氏と同様に、市民に不動産税を納めさせることで「不動産市場はさらに低迷する恐れがある」との見方を示した。同氏によると、現在の中国の不動産市場において、取引件数はすでに減っているだけでなく、住宅ローンを払えず物件を手放す人も増えている。

 
謝田氏は、習近平当局の政策で不動産バブルが崩壊すれば、「購入者らの住宅ローン返済の延滞や不動産企業の債務返済困難が予想され、金融機関の資金回収は一段と悪化する」と示した。

恒大集団を含む不動産企業の過剰債務が解決されていない今、不動産税の導入は中国経済に「重大な影響をもたらす」と同氏は警告した。

 
「習近平政権がこの悪影響に気付き、不動産税政策を棚上げする可能性はある」

(翻訳編集・張哲)

ソース:https://www.epochtimes.jp/p/2021/10/80969.html

Source:DIGIMA NEWS
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