02.10
<ウクライナ東部>病院ミサイル攻撃 ロシア軍の「ダブルタップ攻撃」警察医療隊(2) 写真13枚+地図

<ウクライナ東部>「住民を必ず救う」ミサイル攻撃下で救助続けるポクロウシク警察医療隊(1) 写真13枚
◆ロシア軍の「ダブルタップ攻撃」
ウクライナでロシア軍が多用する戦術「ダブルタップ攻撃」。被害拡大を狙い、同じ標的に向け、時間差をおいてミサイルを撃ち込む手法だ。東部ドネツク州セリドヴォで警察医療隊に同行し、「ダブルタップ攻撃」直後の病院に向かった。取材は2024年2月下旬。※取材から8か月後、セリドヴォはロシア軍が制圧。 (取材:玉本英子)


◆集合住宅攻撃、その負傷者搬送した病院に連続ミサイル
ドネツク州ポクロウシク(ポクロフスク)の南東に位置する小さな町、セリドヴォ。ここでも、ミサイル攻撃が繰り返し加えられてきた。ロシア軍はミサイルを撃ち込んだあと、時間差をおいて同じ場所に第2波、第3波とミサイルを撃ち込む戦術をよく使う。これは「ダブルタップ攻撃」と呼ばれ、消火活動や負傷者の捜索・救助にあたる消防・レスキュー隊員までもが犠牲となる例があいついでいる。
「ロシア軍が時間差で同じ場所を狙うのは、市民の犠牲を拡大させるためだ。現場に到着しても、そこに次のミサイルが飛んでくることもしばしばで、救出が手遅れになることもある」
警察医療隊のオレクサンドル・サヴェンコ隊長(36歳)は、苦渋の表情をにじませる。

◆婦人科病棟に炸裂、妊婦と母子が犠牲に
2月13日深夜に起きたセリドヴォでの連続ミサイル攻撃は、ダブルタップを複合的に組み合わせたものだった。市内の5階建て集合住宅に、まず1発目のイスカンデルMミサイルが撃ち込まれた。レスキュー隊や警察医療隊は負傷者を救出し、セリドヴォ中央病院に搬送。ところがその約40分後、タイミングを見計らったかのように、今度はその病院にS-300ミサイルが3発、続けざまに炸裂したのだ。


攻撃から4日後、警察医療隊に同行し、病院を訪れた。産婦人科病棟の破壊はすさまじく、屋根やコンクリート壁は吹き飛び、床は崩落していた。
病院に駆け付けた警察医療隊のイリーナ・シュシュラ隊員(40歳)は、暗闇のなか、瓦礫をかき分け、負傷者を探したという。
「犠牲になったのは、妊婦と母子の3人。救えなかったのが無念でならない。彼女たちにどんな罪があったというの」
崩れ落ちて瓦礫になった病棟に立ち、顔をこわばらせた。


◆「もうこの戦争を終わらせて…」
この病棟で亡くなった妊婦、カーチャ・グーゴワさん(39歳)は、妊娠8か月だった。体調を崩し、診察を受け、夫のセルゲイさんとともに病院に泊まることになった。深夜、最初のミサイルが自宅近くに落ちたと、妻の母から電話があり、セルゲイさんは様子を見るため急いで家に戻った。その直後、カーチャさんがいた産婦人科病棟をミサイルが襲った。
「妻は、まもなく生まれてくる赤ちゃんを心待ちにしていました。それがこんなことに」
セルゲイさんは、妻を助けられなかったことを悔やんだ。


私は、カーチャさんの自宅を訪ねた。部屋には、たくさんのぬいぐるみが並んでいた。
母のオルガさんは、力なく言った。
「人が、子どもが毎日殺されている。私は感情すら失ってしまった。もうこの戦争を終わらせてほしい…」
日々、断ち切られる住民の命。地震のような自然災害でなはなく、戦争という人為的に引き起こされた殺戮によって奪われた命である。本来、止められるはずの犠牲、それを国際社会も誰も止められないでいる。


◆「命を救うことが敵に対する勝利」
警察医療隊のシュシュラ隊員とセリドヴォの町を歩いた。ロシア軍が迫るなか、脱出する住民も出始めていた。
「ひとりでも多くの命を救うこと。そのひとつひとつが敵に対する勝利と思っている」
彼女は最後までとどまって、住民に寄り添いたいと話した。
取材から8か月後、ロシア軍はセリドヴォを完全に制圧。現在はポクロウシク(ポクロフスク)まで迫りつつある。医療隊員は別の町に移り、任務を続けている。


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Source: アジアプレス・ネットワーク

