2025
02.12

<北朝鮮内部>白昼の覆面強盗相次ぐ 若者による組織的犯行が多発 治安悪化に緊張する当局 咸北道の会寧

国際ニュースまとめ

国境近くの道路を封鎖して通行人を検問する兵士。保衛局が管轄する「10号哨所」と見られる。身分証や通行証、携帯電話を主に検査するという。2023年9月、平安北道朔州郡を中国側から撮影アジアプレス

北朝鮮北部の咸興北道(ハムギョンブクト)会寧(フェリョン)市で、1月以降、若者による白昼の強盗事件が頻発し、当局が警戒を強めているという。5~7人で役割分担した組織的犯行が多く、安全局(警察)による検挙や取り締まりもうまくいっていないようだ。治安悪化の背景には、パンデミック後もずっと続いている経済苦境がある。会寧市に住む取材協力者が1月末に伝えてきた。(洪麻里/カン・ジウォン)

◆白昼堂々の組織的犯行

取材協力者の報告によれば、1月に次のような事件があった。

「1月12日頃、望陽(マニャン)洞の個人宅が真っ昼間に強盗に入られた。機動巡察隊が厳重にパトロールをしているので、見張りを立てるなど役割分担をして、家電製品まで全部持って行ったとのことだ。監視カメラで確認したところ、5人組の組織的犯行で女性もいたらしい。犯人はまだ捕まっていない」

1月16日にも、通り沿いの売店に強盗が押し入ったという。

「暖をとりたいと言って入ってきた男女が、刃物で店の主人を脅迫して金とタバコを奪っていった。人通りが多い道路沿いだったのに、入口に3人が見張りに立ち、他の人が入れないようにしていた。主人は口をふさがれ、体も縛られ、入口も閉じられていた。娘が見つけて通報したのだが、この事件も犯人は見つかってないそうだ」

白昼堂々の犯行にも関わらず、なぜ検挙されないのだろうか? その理由の一つに、最近の犯罪が組織化されているということがあるようだ。

「若者たちは覆面をかぶって強盗をしている。その上、以前は1~2人単位だったのが、最近は4~7人単位で組織的に動くので、捕まえるのが難しいようだ」

◆犯罪歴のある若者をマークして調査

この取材協力者は、「最近は一日に一度は、強盗や泥棒、暴力事件があって穏やかに暮らすことができない」と漏らす。

当局も治安の悪化に緊張している。協力者によると1月18日、安全局と青年同盟に対し、些細な犯罪も防止しろと指示があったという。過去の犯罪歴や挙動をもとに、犯罪を行う可能性のある者をマークしているという。最近の取り締まり状況について、協力者は次のように伝える。

「当局は、犯罪歴のある若者を中心に調査をしている。他にも、職場を無断欠勤する人や除隊軍人とつるんで稼ごうとしている人らも調査対象で、それらの者が住む地域の人民班長とも連携して、人民班への人の出入りをすべて報告させている。

今は、夜に出歩くこと自体が問題になる。特に、マークされている人は通報されてしまう。あらかじめ監視を強めることで、犯罪を抑止しようとしているのだ」

※青年同盟:正式名称は「社会主義愛国青年同盟」。高級中学(高校に相当)の生徒、大学生から概ね30歳までの勤労青年までを組織する労働党傘下の大衆組織。 

◆「空腹には耐えられない」…治安悪化の原因は困窮

② 過去9間の朝中間の貿易額の推移。2020年のパンデミック発生で対中貿易が激減したのが分かる。中国税関総署の発表値を整理した。(製作アジアプレス)

北朝鮮はコロナ・パンデミックによる国境封鎖以降、経済が急激に悪化した。パンデミックが終息し中国との貿易が再開された今も、当局の「反市場主義」政策によって、商行為が厳しく制約され、ほとんどの都市住民は現金収入が激減したままだ。

若者や兵役を終えて除隊した元軍人たちの多くも、窮乏生活を強いられている。この数年でも、アジアプレスの取材協力者たちからは、都市の脆弱層の中に、餓死や無理心中をしたり、都市生活を放棄して山奥で生活をしたりする事例が相次いで報告されている。 協力者はこう話す。

「安全局がいくら対策を立てて統制しても、空腹には耐えられないじゃないですか。ちゃんと生活できていれば、強盗なんてする必要ないのです」

人が飢えれば、犯罪が増え治安が悪化するのはどこの社会でも同じである。治安回復のためには、住民たちが現金収入を得られるように民生優先の政策を採ることが、何より必要だろう。

※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。

北朝鮮地図 製作アジアプレス

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Source: アジアプレス・ネットワーク