2024
10.03

子育て社員の早退・休暇、「1〜6月」は“想定の範囲内”に。誰が休んでも回る職場づくり、企業の対応力にも注目

国際ニュースまとめ

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ハフポスト日本版が2024年4月から展開しているキャンペーン報道ネットスラング『子持ち様』問題

7月3日の記事「子持ち様」問題…フォローする側も4割が「高ストレス」。アプリ活用の調査で判明、企業の制度でリスク減もでは、子育て社員だけでなくフォローに回る同僚も約4割の人が「高ストレス」を抱えていることを報じた。

子育て社員が子どもの体調不良で早退するなど“イレギュラー”な事態が発生した場合、子育て社員は看病、フォローに回る同僚はその分の残業などで、それぞれ睡眠と食事の時間がいつもより乱れる。同記事では、それが高ストレスにつながっているとする医師の指摘を紹介した。

今回、その指摘を裏付けるようなデータが新たに出てきたほか、子育て社員の早退・休暇が相次ぐ「1〜6月」という時期に目を向け、企業側が重点的に対策を取る必要性があることも分かった。

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これまでの経緯

まず、7月3日の記事で紹介した前回調査の結果を振り返る。

ストレス可視化アプリを運営する「DUMSCO」(東京都)の加勇田雄介さんは2024年1月10日〜4月25日、子どもの体調不良で早退したり、休暇を取ったりした子育て社員86人と、その際フォローに入った同僚社員90人の計176人に協力を得て、「子育て社員が子どもの体調不良で早退したり、休んだりした日」「その後の1週間」の2期間のストレスを測定した。

測定に使用したのは、自治体や大学病院、プロスポーツチームなどが導入している同社のセルフコンディショニングアプリ「ANBAI」「ストレススキャン」(ANBAIの個人用)。

その結果、子育て社員は40.7%(35人)、子育て社員をフォローした同僚社員は36.7%(33人)がそれぞれ「高ストレス」と判定された。

ストレス可視化アプリストレス可視化アプリ

その後の追加調査で、高ストレスと判定された社員の多くに「食事と睡眠の規則性に乱れ」が生じていたことが分かり、加勇田さんは「突然の早退や休暇により看病や残業などが発生し、いつもと同じリズムで食事や睡眠が取れなかった。それが高ストレスに繋がった」と分析した。

内科医で産業医の鈴木裕介医師も取材に、「不規則な睡眠や食事は生体リズムを破壊する」と指摘した上で、「日本の職場では『皆が同じことを同じだけできる』ことを求められるため、業務量や時間のばらつきなどに対する不寛容を生みやすい」と述べた。

突発的な早退・休暇が生まれると、食事と睡眠の規則性が乱れるなどし、子育て社員だけでなくフォローする同僚社員も約4割が高ストレスになる。「子持ち様」問題を解消するためには、企業は子育て社員だけでなく、フォローする同僚社員もストレスを抱える傾向があることを認識し、目を向ける必要がある。

ハフポスト日本版ではこれを「働き方改革の『次の課題』」と呼び、①社員全員が休める環境を整備して不公平感をなくすこと②子育て社員の業務を代替した人にインセンティブ・評価を与える仕組みづくり③仕事の属人化の解消ーーなどの必要性を記事の中で示してきた。

今回の調査では高ストレス者が減少

加勇田さんは2024年7月20日〜8月16日、さらにデータを集めようと、同様の調査を子育て社員56人、子育て社員をフォローした59人の計115人に実施した。

その結果、高ストレスと判定されたのは、子育て社員は16.0%(9人)、フォローした同僚社員は22.0%(13人)だった。前回調査(2024年1月10日〜4月25日)と比べると、子育て社員では24.7ポイント減、フォローした同僚社員では14.7ポイント減と、高ストレスと判定された人がいずれも大幅に減った。

理由を探るため、Googleフォームで「いつもの食事時間と睡眠時間の乖離」を尋ねたところ、前回と比べて食事と睡眠の規則性が乱れていない人が多いことが判明したという。

例えば、前回調査では「『食事をとる時間』がいつもと比べて90分以上の開きがあった」子育て社員は43.0%に上ったが、今回は23ポイント減20.0%にとどまった。また、フォローした同僚社員も前回の44.0%から今回は25.0%と、19ポイント減少した。

「睡眠」についても同様の傾向で、「いつもと比べて90分以上の開きがあった」子育て社員は今回、前回(43.1%)比21.7ポイント減21.4%だった。フォローした社員も前回(45.4%)比16.4ポイント減29.0%だった。

今回の調査では「高ストレス」と判定された社員が減少した今回の調査では「高ストレス」と判定された社員が減少した

食事と睡眠の規則性、なぜ改善?

今回の調査結果を受け、加勇田さんは「前回の調査期間はインフルエンザが流行る1月、保育園に通い始める子どもが多い4月が含まれていたため、子育て社員の突発的な早退や休暇が多く、食事や睡眠の規則性が乱れた人が特に多かったのではないか」と分析した。

実際、ネットでは「保育園の洗礼」(保育園に通い始めたばかりの子どもが風邪などで休みがちになること)という言葉も生まれており、X上では2024年4〜6月、「復職して3カ月、ちゃんと働けた月がない」「6月末までで20日休んでる」「保育園の洗礼ってこんなにすごいのか…今月10日しか行けなかった」といった声が数多く見られる。

保育園に通う子どもがいる親382人のうち、80.9%「4〜6月に子どもが風邪をひいて保育園を休ませたことがある」と答えたという調査結果もある。

また、今回の調査期間(7月20日〜8月16日)が夏休みの時期に重なったことも、食事と睡眠の規則性改善につながった要因の一つとみられる。

夏休みは子どもの有無にかかわらず、長期休暇を事前に計画する人が多く、追加調査でも子育て社員の67.8%(38人)が「1週間以上前に夏休みの取得を計画していた」と回答。加勇田さんは、「同僚や企業側も事前に対策を立てやすく、食事や睡眠の規則性が保たれて高ストレスになる人が少なかったのではないか」と話した。

「まずは1〜6月だけでも」

つまり、重要なのは「計画性」ということだ。1〜3月はインフルエンザが流行ったり、4〜6月は保育園に通い始めたりして体調を崩す子どもが増える。

企業側はこの期間(1〜6月)を「子育て社員の早退・休暇がありえる時期」として把握し、特に計画的かつ重点的に対策を構築しておかなければならない。

今回の調査でも、高ストレスとなった人のうち69.3%「子育て社員の休暇を認識した日」「当日から6日前」だった。一方、低ストレスだった人のうち、「当日から6日前」と回答した人は21.3%にとどまっている。

加勇田さんは調査結果を受け、「『保育園の洗礼』や『小1の壁』などの言葉が生まれているが、この時期の子育て社員を巡る状況を把握していれば、1〜6月の早退・休暇はピンポイントな日時は分からずとも、ある程度想定の範囲内」と指摘。

「そこで企業の対応力の差がより如実になる」といい、「もし対応できなければ、子どもの有無にかかわらず優秀な人材が転職していく可能性もある」と語った。

また、「サポートする従業員の食事や睡眠にも悪影響を及ぼし、高ストレスの原因となってしまうので、まずは1〜6月だけでも誰かが休んでも仕事が回る仕組みづくりが必要になってくる。それが『子持ち様』というネットスラングをなくす一歩にもつながる」と話した。

加勇田雄介さん加勇田雄介さん

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Source: HuffPost