08.25
アジア歴訪中のカマラ・ハリス一行を襲った?「ハバナ症候群」とは何か
<ベトナムに向かうハリス副大統領一行の出発を遅延させたのは、2016年以来、米外交関係者に原因不明の体調不良を引き起こす「ハバナ症候群」とみられるが> ハノイにある在ベトナム米大使館によると8月24日、シンガボールからベトナムに向かおうとしていたカマラ・ハリス米副大統領の一行の出発が数時間遅れた。原因は、「異常な健康事案」の発生だった。 AP通信の報道によれば、この「異常な健康事案」は、「ハバナ症候群」とみられている。2016年後半にキューバの首都ハバナに駐在していたアメリカの外交官や米政府職員が初めて訴えたことから、この名前がついた。ハノイでこの症状を経験した職員の数や身元は明かされていない。 医療情報サイトのウェブMDがまとめた報告によると、ハバナ症候群には、頭と耳の突然の痛みや圧迫感、正体不明の大きな音が聞こえる、吐き気、精神錯乱、見当識障害といった症状がある 頭痛、疲労、不安、様々なレベルの記憶喪失といった合併症もあり、外国に駐留していたアメリカ人外交官や職員の一部を帰国させた例もある、とワシントンポストは報じた。 医療関係者は、この症状の原因を特定できていない。一部には、標的を絞ったマイクロ波または音波による攻撃だという説を唱える人々もいる。 2016年の最初の報告以来、ドイツ、オーストリア、ロシア、中国などの国々で外交関係の仕事に携わるアメリカ人から、同様の原因不明の健康事案が報告されている。また、ワシントン周辺でも、ホワイトハウスの近くでの1件を含め、少なくとも2件のハバナ症候群とみられる事案の報告がある、とAP通信は報じた。 本当に「攻撃」なのか AP通信による報道は以下の通り。 シンガポールを訪れたハリスは、演説を行い、南シナ海の領有権を主張する中国を厳しく非難し、現地の財界首脳らとサプライチェーン問題について話し合った後、8月24日夕方にハノイに向けて出発する予定だった。 だが出発は3時間以上遅れた。そして、ハリスの主任報道官シモーネ・サンダースは遅延についての説明を拒んだ。そして記者に質問されてもいないのに、ハリスは「元気だ」と述べた。記者らは24日に何度かハリスに会っていたが、健康状態に懸念は感じていなかった。 米議会は攻撃とみられるこの現象に警戒感を強め、上下院ともに、この症候群に関する全政府レベルでの調査の継続と対応、そしてアメリカ人職員の健康状態の監視と治療に対する資金提供を超党派で支持している。 攻撃とみられる事案の報告が急増するなか、バイデン政権はこの現象を解明する圧力にさらされている。だがこれらが本当に攻撃によるものなのか、攻撃だとすればその背後に何者がいるのか、監視用装置によって不注意に引き起こされた可能性もあるのではないか、といった点について、科学者や政府関係者はまだ確信に至っていない。 ===== 政府の公式な結論が出れば、その内容の如何に関わらず、大きな影響をもたらしかねない。アメリカに敵対する何者かが、米軍人や政治家に害を与える攻撃を行っていることが確認されれば、強硬な対応を求める声が解き放されるだろう。 今のところ、政府はこの問題を真剣に受け止め、積極的に調査しており、被害者に手厚い医療を提供すると断言している。 ある重要な研究では、最も可能性の高い原因として「指向性パルス状高周波エネルギー」が特定された。米国科学アカデミー(NAS)が12月に発表した報告書は、高周波攻撃は「重大な構造的損傷」を引き起こすことなく脳機能を変化させる可能性があると述べた。しかし、NASの調査では、アメリカ人が受けた可能性のある攻撃について、決定的な発見はできなかった。 さらに機密解除された2018年の国務省の報告書では、ハバナ事件への対応における「最高幹部のリーダーシップの欠如、効果のないコミュニケーション、システムの混乱」が指摘されている。負傷の原因については「現在のところ不明」とされた。この報告書はジョージ・ワシントン大学の国家安全保障アーカイブによって出版された。 トランプ政権の最後の数カ月間に国防長官代行を務めたクリス・ミラーは昨年、機密任務についていた間にハバナ症候群を発症した兵士から直接話を聞いたことがきっかけで、国防総省内に攻撃と疑われるこの現象について調査するチームを作った。この兵士は「甲高い」音が聞こえ、その後、頭が割れるような痛みを感じたという。
Source:Newsweek
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