02.06
「印象派展」が東京都美術館で4月7日まで。モネ、ルノワールやアメリカ印象派がウスター美術館から来日【展覧会】
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パリから世界へ、印象派の広がりをたどる
モネやルノワールから、アメリカや日本の画家たちへ。パリから世界に広がった印象派の“国際性”に光を当てた企画展「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」が、東京・上野の東京都美術館で4月7日まで開かれている。
アメリカ北東部ボストン近郊のウスター美術館コレクションを中心に、モネの《睡蓮》や「アメリカ印象派」の作品など約70点を展示。フランスから海を越え、世界各地で花開いたそれぞれの印象派の展開をたどる試みだ。
展覧会概要
名前:印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵
会場:東京都美術館(東京都台東区)
会期:2024年1月27日〜2024年4月7日
休館:月曜日(2月12日、3月11日、3月25日を除く)、2月13日
料金:一般2200円など
※土日祝および4月2日以降は、日時指定予約が必要
公式サイトはこちら
「印象派」と聞いてまず頭に浮かぶのは、モネやルノワールといった主要な画家の作品かもしれない。しかしその名が示す運動は現在、発祥地パリやフランス国内だけでなく、世界各地の多様な展開を含んだものとしても語られる。
筆触分割や戸外制作といった新たな絵画表現のスタイルは、19世紀末から20世紀初頭にかけてヨーロッパ各国やアメリカ、そして日本にも広がった。印象派の登場から150周年として開催される本展は、近年注目されるこうした国際的な広がりに光を当てたものだ。
新たな風景画の台頭
全5章で構成される本展のうち、第1章「伝統への挑戦」は印象派の登場以前を取り上げる。テーマは、新たな風景画の台頭だ。古典的な西洋美術のヒエラルキーにおいて、風景画は歴史画や人物画よりも下に位置付けられる、どちらかと言えばマイナーなジャンルだった。ところが19世紀後半、コローやミレーといった画家たちがフランスの田園風景や農村の生活をありのままに描いたところから、アカデミックな美の伝統への挑戦が始まる。
展示会場にはコローやクールべのほか、トロワイヨンといった日本ではあまり馴染みのない作家の作品も。イタリア旅行の記憶をもとに牧歌的な川辺の情景を描いたトマス・コールは、同じ19世紀にアメリカで新たな風景表現を模索した画家だ。古典にならって理想化するか、ありのままの景色に美しさを見出すか。両極の間で揺れ動く、風景画の過渡期を見ることができる。
モネの睡蓮、購入までの経緯も
明るい色彩、筆跡が残るタッチ、アトリエ外での制作。こうしたアカデミーの常識を外れた新しい技法で絵画の刷新を図ったのが、印象派の画家たちだ。クロード・モネ、オーギュスト・ルノワール、カミーユ・ピサロ、アルフレッド・シスレー、ベルト・モリゾ。第2章「パリと印象派の画家たち」では、日本でもおなじみのメンバーが描いた美しい風景画や人物画の小品が並んでいる。
1908年に描かれたモネの《睡蓮》は、ウスター美術館の所蔵品の中でも特別な1点。というのも、モネがジヴェルニーの庭で描いた睡蓮の絵が約300点もある中で、本作は世界で初めて美術館が収蔵した1枚だからだ。購入にあたって美術館が画廊と交わした手紙には「美術館用の特別に低い価格なのでどうか内密に」とも記されており、当時のなまなましい取引の様子を窺い知ることもできる。
国際都市パリから広がる新たな表現
パリから始まった変革運動はその後、世界各地へと伝播する。その一端を担ったのが、留学などの形で芸術の都を訪れていた各国の画家たちだ。
第3章「国際的な広がり」ではその一例として、スウェーデン出身のアンデシュ・レオナード・ソーンや、イタリア生まれのジョン・シンガー・サージェントらの作品が紹介されている。彼らはパリを離れたのち、自身の暮らす地域などを主題に選び、印象派風の技法をそれぞれ応用・発展させていく。
この章ではまた、黒田清輝や久米桂一郎ら、欧州に留学した日本の画家8人の作品も紹介されている。同じフランスで技法を学んだとはいえ、描かれた作品を見てみると、その採り入れ方もさまざまだ。画家ごと、国ごとの違いを探しながら見比べてみるのも楽しい。
アメリカ印象派の独自性
1880年代以降のアメリカでは、画商や収集家の間で印象派が流行していたことなどを背景に、多くの画家が大西洋を渡った。現地で直に印象派の技法を学んで帰国した画家たちは、オリジナルの解釈を加えながら、アメリカ全土でさまざまな印象派のバリエーションを展開する。第4章「アメリカの印象派」では、印象派風の技法とアメリカ的な風景が結びついた多様なパターンを見ることができる。
「アメリカのモネ」とも呼ばれるチャイルド・ハッサムは、東海岸のショールズ諸島にたびたび出かけ、海に突き出た巨大な岩を描いている。同じ場所でも景色は絶えず変わり続けるーー。こうした信念のもと、海岸の風景を繰り返し描いたというエピソードには、モネの連作の影響も色濃く感じられるところだ。一方、窓越しにニューヨークの街並みが見える《朝食室、冬の朝、ニューヨーク》は、カーテンに透ける柔らかな光の描写が美しい。本展の中でも特にイチオシの1点と言えるだろう。
グランド・キャニオン×印象派
「まだ見ぬ景色を求めて」と題した第5章では、フランスのポスト印象派など、印象派以後のさらなる表現の変遷をたどる。セザンヌ、シニャック、ブラックの小品に続いて登場するのは、ドイツで印象派を広めた数少ない画家の一人であるマックス・スレーフォークト。一方、アメリカのブルース・クレインやジョージ・イネスの作品は、もやがかった暗い色調の画面に、深い思索と観照を促すような神秘的な森の情景が描かれている。
展示の最後を締めくくるのは、アメリカ西部グランド・キャニオンを描いたデウィット・パーシャルの作品。峡谷の観光地化を目指す鉄道会社の依頼で描いた《ハーミット・クリーク・キャニオン》は、断崖絶壁に反射する太陽の光を、淡いピンクや黄色、青紫色の陰影によって捉えている。大陸の壮大なる風景を素早いタッチで描いた本作は、まさにアメリカらしい印象派の表現と言うことも出来るかもしれない。
記念撮影用のスポットも
なお本展ではいずれの作品も撮影不可となっているが、展示の途中や最後に複数の記念撮影スポットが設けられている。
小品を中心としながらも、印象派の幅広い展開に触れることのできる本展は、東京都美術館で4月7日まで開催されている。
Source: HuffPost