2024
01.15

<底なしパー券不正>森元首相と世耕議員も初の刑事告発 逮捕の池田議員へのキックバックに共謀の疑い 「池田氏は安倍派の裏金手口をマネしたのでは」と専門家

国際ニュースまとめ

パー券不正疑惑に関連して初めて刑事告発された森喜朗元首相。首相官邸HPより。

東京地検特捜部に1月7日に逮捕された自民党の池田佳隆衆議院議員が、政治団体「清和政策研究会」(以下、安倍派)の派閥のパーティ券の売り上げから4000万円超の裏金のキックバックを受けていた事件に関連して、池田議員と安倍派の元会長である森喜朗元総理大臣、参院安倍派会長の世耕弘成前参院幹事長ら12人が政治資金規正法の不記載罪などの疑いで1月9日に東京地検に刑事告発された。(フリージャーナリスト・鈴木祐太

◆森元総理の刑事告発は一連の事件で初

告発したのは上脇博之神戸学院大学教授。その告発状によると、池田議員は2022年、安倍派から自身の政治団体「池田黎明会」に500万円の寄付を受けたにも関わらず、政治資金収支報告書(以下、収支報告書)に記載しなかった。

一方、安倍派も池田議員側に寄付した事実を派閥の収支報告書に記載していなかった。簡潔に言えば、安倍派の政治資金パーティ収入から500万円をキックバックしていたのに、双方が収支報告書には何も書かず裏金にしていたということだ。

刑事告発されたのは、森元総理、世耕前自民党参院幹事長のほか、安倍派の歴代事務総長の下村博文元文科大臣、松野博一前官房長官、西村康稔前経産大臣、高木毅元復興大臣、萩生田光一元経済産業大臣と安倍派の会計責任者ら12人。共謀して、500万円の記載をしなかったとしている。一連の自民党5派閥のパーティ券問題で森元総理と世耕前参院幹事長が刑事告発されるのは初めて。

池田議員の裏金問題で共謀の疑いで刑事告発された世耕弘成前参院幹事長。本人公式HPより。

池田議員側は同様に、2021年は1330万円、2020年は1378万円、19年は1010万円、18年は608万円を、パーティ券売り上げのキックバックとして受け取っていたにも関わらず、「池田黎明会」の収支報告書にも安倍派の収支報告書にも記載されていない。5年間の合計額は4826万円にも上る。2021年分に関しては安倍晋三元総理とも共謀、2018年から2020年までは細田博之元衆議院議長とも共謀したと告発状では指摘しているが、すでに死亡しているため告発対象からは外された。

◆池田議員は自身のパーティでも裏金作りか

池田議員の「池田黎明会」は、2022年に開催した政治資金パーティ収入が、実際は1928万円だったにも関わらず、1316万円だったと過少申告していた。2021年も、政治資金パーティにおいて2001万円の収入があったにも関わらず、1518万円しか収入がなかったと過少申告している。この2件の過少申告に対しても、別途に池田議員と会計責任者の2人が東京地検に刑事告発された。

◆刑事告発は一連の捜査を終わらせない意味

ふたつの事件の告発をした上脇博之神戸学院大学教授は次のように指摘する。

「安倍派が所属国会議員にパーティ券の売り上げをキックバックしたことについては、会計責任者と事務担当者は事務総長に報告したと報道されました。池田議員に対する裏金の告発においても歴代事務総長を告発しました。

また、22年7月に安倍会長が死去し、その後、安倍派は、塩谷立会長代理ら7名の世話人会による集団指導体制が採られていたと報道されています。同年分についてはこの7名も告発しました。さらに世話人会については森元会長の意向が反映されたものであり、世話人会の幹部と面会していると報道されたので、森元会長も告発したのです。

安倍派は22年に、キックバックを1度は取りやめる方針を決めたものの撤回していて、その前に、複数の幹部が集まって協議していたとみられると報道されています。池田議員は安倍派の裏金の手口を、自分の黎明会でもマネをしたのではないかと思われます」

池田黎明会が訂正した後の政治資金収支報告書。政治団体から寄付10万円から510万円に訂正している。

池田議員と会計責任者はすでに逮捕されている。告発状が出された場合、検察の捜査の結果、例え安倍派側の政治家らが不起訴になったとしても、刑事告発した上脇教授が申し立てをすれば検察審査会でその可否が判断される。

検察審査会が起訴相当、または不起訴不当と判断すれば、検察は再度捜査をしなければならない。池田議員らが逮捕されている中で、告発状が出されていることを不思議に思う人もいるかもしれないが、今回、上脇教授が告発状を東京地検に出したことは、一連の事件の捜査を簡単に終わらせないために重要な意味をもっているのだ。

 

■ 鈴木祐太 (すずきゆうた)
1981年香川県で生まれ。岡山、大阪で育つ。大学在学中から貧困状態にある子どもたち、特に被差別部落や在日外国人の子どもたちへの支援に関わり、小学校講師、派遣社員などを経てジャーナリズム活動を始める。フロントラインプレス所属。

 

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Source: アジアプレス・ネットワーク