2023
08.07

産後うつに初の飲み薬を米FDAが承認 なぜ「革新的」と言われるのか

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FDAは8月4日、産後うつの治療に特化した初めての飲み薬を承認した(イメージ画像)FDAは8月4日、産後うつの治療に特化した初めての飲み薬を承認した(イメージ画像)

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FDA(アメリカ食品医薬品局)は8月4日、産後うつの治療に特化した初めての飲み薬を承認した。

「ズラノロン」(商品名:Zurzuvae)は、1日1回2週間服用することで、産後うつの症状を迅速かつ効果的に緩和することができる。

ヴァージニア大学医学部で生殖精神医学研究プログラムのディレクターを務めるジェニファー・ペイン氏は、「これは革新的なことです」と米Wired誌に語った。

妊娠中や出産後、脳は科学的に大きく変化する。ストレスを受けやすくなり、その結果、うつ病になりやすくなる。妊娠合併症、社会的孤立、基礎疾患など、他の要因も原因となる。

産後うつは一般的に、気分の落ち込み、不安、極度の疲労、痛み、睡眠障害などの症状がある。

産後うつの治療にはこれまで、効き目が出るまで数週間かかる標準的な抗うつ薬、心理療法、あるいは即効性があり効果的だが医療施設で60時間かけての投与が必要なブレキサノロンという注射が使われてきた。

母親になったばかりの患者の抑うつ症状を速やかに改善する経口薬が早急に必要とされており、ズラノロンはFDAから優先審査と迅速な手続きを受け承認された。

研究者によると、ズラノロンは妊娠・出産で急激に変化する可能性のある脳内の化学物質や神経細胞ネットワークの回復を助けるという。これにより、気分、覚醒、行動、認知に関する脳機能がリセットされ、脳が再びストレスに対処できるよう促進する。

・臨床試験での結果は?

製薬会社のセージ・セラピューティクス社とバイオジェン社からの出資で行われた第3相臨床試験では、出産後12カ月未満で、妊娠後期または産後4週間以内に大うつ病性障害のエピソードを経験した女性196人を対象に、ズラノロンの安全性と有効性を評価した。

女性は2つのグループに分けられ、98人は1日1回50ミリグラムのズラノロンを14日間服用し、残りの98人はプラセボ(偽薬)を服用した。15日目には、ズラノロンを服用した女性の57%が抑うつ症状が少なくとも50%改善し、26.9%が寛解したと答えた。

治療終了後30日間に渡り女性たちを観察したところ、効果は持続していた。観察期間最終日に、抑うつ症状が50%改善したと答えたのはズラノロンを服用した女性の62%近くだったのに対し、プラセボを服用した女性では54%だった。

この薬は即効性があり、2回服用しただけで改善したと答えた女性もいた。忍容性も良好だった。報告された主な副作用は眠気、めまい、鎮静作用などで、頭痛や、下痢や吐き気などの胃腸障害を起こした人も一部いた。

薬は授乳中の女性では試験されていないため、今後の研究では授乳中の人に対するズラノロンの影響を調べる必要がある。薬剤が赤ちゃんにどのような影響を与えるか不明であるため、多くの研究では授乳中の人を除外することが多く、今回の試験が特別なわけではない。

イェール大学医学部精神医学助教授で臨床医でもあるジェニファー・マクマホン医師によると、ズラノロンの長期的な効果と、産後うつが2週間の治療後どのように患者に影響するかを理解するためにはさらなる研究が必要だという。

2週間の治療で回復し再び正常に機能する人もいるかもしれないが、維持治療のために標準的な抗うつ薬を服用し続けたり、心理療法を行ったりする必要がある人もいるかもしれない。

・ズラノロンが革新的になりうる理由

日本では出産した女性のうち10人に1人が罹患すると言われている産後うつ。アメリカでは8人に1人が経験すると言われているが、そのうち適切な治療を受けるのはわずか10%だという。

ニューヨーク州にあるファインスタイン医学研究所の教授で、ズラノロンの臨床試験を主導したクリスティーナ・デリギアンニディス医師は、多くの女性は妊娠中や出産後にメンタルヘルスの検査を受けておらず、症状があると診断されてもそのほとんどがメンタルヘルスケアを受けることはないという。

冒頭で述べたように、産後うつのこれまでの治療には効き目が出るまでに時間がかかるなど大きな難点があった。

しかしズラノロンは、医師による産後うつの治療法を変えることができる。

「飲み薬で即効性のある抗うつ薬には、抑うつ症状を速やかに緩和し、女性が機能を回復できる可能性があります」とデリギアンニディス氏は話す。

・いつ発売されるのか?

セージ・セラピューティクス社は、価格やその他の市場情報をまだ明らかにしていない。5月に発表された同社の報告書によると、ズラノロンは承認後の米麻薬取締局のカテゴリー指定などに従い、「2023年末」にも一般に使われるようになる可能性があるという。

ハフポストUS版の記事を翻訳・編集・加筆しました。

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Source: HuffPost