2021
07.14

韓国で、日本製バイクの販売が伸びている理由

国際ニュースまとめ

<韓国で日本製品不買運動のターゲットになった日本製バイクだが、コロナの影響で販売が伸びている。その理由とは…… > 新型コロナウイルスが蔓延し、経済が萎縮する韓国で、日本製オートバイの販売が伸びている。国土交通部の二輪自動車登録台数は、2012年に200万台に達して以降、年1万台ペースで増えていたが、2020年、前年より5万2000台余り多い228万9000台に急増した。増加したオートバイの多くが輸入車で、なかでもホンダ・ヤマハ・スズキのシェアが拡大している。 日本製品不買運動に続くコロナ禍で、トヨタとレクサスが苦戦を強いられ、日産が撤退を余儀なくされたが、ホンダ・コリアは二輪車が支えているとも言われている。 商用オートバイは日本製が80%を占める 韓国のオートバイは商用利用が主流だ。首都圏など坂が多く、早くから低運賃のバス路線が発達したこともあり、自転車やオートバイが市民の足として定着することはなかった。 90年代、ホンダの技術支援を受けた大林(デリム)とスズキのライセンス生産で事業を開始した暁星(ヒョソン・現KRモータース)が、商用車を中心に年間30万台のオートバイを生産していた。 2000年代に入ると提携を解消したホンダが韓国に進出した。大林とKRモータースをホンダが追う3強体制となり、また、配達の主力がオートバイから自動車に移行して、韓国二輪自動車産業は一気に衰退した。現在、韓国のオートバイ市場は年8万台から10万台で推移するが、およそ7割が輸入車だ。 ホンダは2016年にKRモータースを抜き、19年上期には大林を抜いて1位に浮上。また、ヤマハがKRモータースを抜いて3位に浮上した。19年1月-7月期の販売台数はホンダ18200台、大林13300台、ヤマハ4500台、KRモータース3500台、スズキ2500台などとなっている(韓国二輪自動車産業協会)。 大型オートバイは、日本のホンダ・ヤマハ・スズキ・カワサキと欧米のBMWやハーレーダビッドソンなどが競合するが、主力の商用オートバイは日本製が80%を占めるようになった。 「ペダル(配達)文化」が発達した韓国 2019年7月、日本政府が対韓輸出管理を強化して日本製品不買運動が拡散し、オートバイも標的になった。 同年8月19日、韓国輸入二輪車環境協会がソウル市中区で日本製オートバイを破壊するパフォーマンスを行った。オートバイを燃やす計画だったが、警察署と消防署が許可しなかったため、日本製オートバイ4台を金槌で破壊した。 不買運動に加えてBMWが攻勢をかけるなどで、19年下期から20年初めにかけて、日本製オートバイの輸入額が50-60%減少したが、新型コロナウイルスの拡大に伴って、再び上昇に転じた。 韓国は「ペダル(配達)文化」が発達しており、オンラインで注文すると、あらゆる料理や食材が配達される。ライダーと呼ばれる配達員は、かつては専業が多かったが、自身の都合で注文を受けて配達するアルバイトが増えている。 ===== 新型コロナウイルスの影響で在宅勤務が拡大し、政府が外食を制限すると、配達需要が急増。配達代行各社がライダーを募集して、就職できない若者や収入が激減した自営業者、残業や会食がなくなって時間ができた会社員などが登録した。 韓国は普通自動車運転免許で125ccまで運転できることから韓国メーカーは100cc級のギア付き商用オートバイに力を入れてきたが、スマートフォンで注文を受けて道順を確かめながら配達するライダーは運転操作が容易なスクーターを好んでいる。その商用利用が可能な110-125cc級のスクーターはホンダとヤマハが充実している。 また、あるライダーは、韓国製オートバイは登録から2年を過ぎると市場価値はほとんどないが、輸入オートバイなら相応の値段で売却できると話す。日本製は韓国製より高額だが、燃費、維持費、数年後の売却額など、実質的な負担が小さいという。 最も人気が高いのはホンダのPCX125で、ヤマハのNMAXを選ぶ人も多い。20年8月-9月に韓国の価格比較サイトで販売されたスクーターの69%がPCXだった。21年2月、韓国メディアが新型の21年式PCX 125が高額だと批判した。韓国価格は434万ウォンで、日本価格30万9800円(約324万2000ウォン)より100万ウォン以上も高かったのだ。 日本製なら価格差に納得できるが、同モデルはベトナム製で、輸送コストは韓国の方が安いので、韓国価格は暴利だと批判した。ホンダコリアは、日本向けの排ガス基準はユーロ4だが、韓国向けはユーロ5なので、価格差が生じると説明した。 スーパーカブも若者を中心に人気 ホンダのスーパーカブもクラシックなデザインから若者を中心に人気がある。110cc級のスーパーカブは2020年1月、個人売買サイトの中古ナラで、120万ウォン前後で取引されていたが、同12月には210万ウォン台に高騰した。新車は注文から納車まで2か月待ちとなっている。 通勤用に日本製商用オートバイを購入する人たちもいる。他人との接触を避けて、通勤手段を電車・バスからオートバイに切り替える人が増え、燃費がよく耐久性が高い日本の商用オートバイを選んでいる。 韓国メーカーは、電気二輪車の開発を進めるが、配達最大手の「配達の民族」が、配送効率が悪いとして導入を見合わせるなど、日本製二輪自動車による席巻はしばらく続くとみられている。

Source:Newsweek
韓国で、日本製バイクの販売が伸びている理由