2023
04.11

<北朝鮮内部インタビュー>「命懸けで穀物増産せよと指示されている」 農業総動員が本格化 春窮で飢える農民も

国際ニュースまとめ

(参考写真)北朝鮮では今でも牛は重要な労働力だ。2008年10月に平壌郊外の農村で撮影チャン・ジョンギル(アジアプレス)

北朝鮮で春の農作業が本格的に始まった。労働新聞は4月4日付の社説で、穀物生産目標の達成のために「全ての党組織、特に市・郡党委員会がその戦闘力と活動性を余すところなく発揮しなければならない」と書き、労働党組織が核になって、企業や組織、住民を増産運動に駆り立てることを求めた。実際どのような動きが始まっているのだろうか? 国内の取材協力者に現状を聞いた。(カン・ジウォン/石丸次郎

◆穀物増産に人民を総動員せよ

咸鏡北道(ハムギョンプクド)に住む取材協力者のA氏は、定期的にB協同農場を訪れて実情を調査しているが、「党組織が、命懸けで穀物生産目標を達成せよと農民たちを強く圧迫している」と伝えてきた。

A氏に農業への総動員体制の現状について聞いた。B農場は人員数が約500人で、主にトウモロコシを栽培してきたが、昨年は金正恩氏の指示があり小麦、大麦の栽培も始めた。咸鏡北道では平均より若干小規模な農場だ。

以下は、A氏との一問一答。インタビューは3月末と4月初旬に行った。

◆今の最優先は「新しい農地探し」

――金正恩政権は穀物増産を連日強調しています。

A 「全人民を農業に総動員して、画期的に生産を増やせ」と、党が要求している。工場や企業で「農村突撃隊」を選抜・組織して、農場の田畑の一部を引き受けて耕作することになった。ただ、多くの人員を送るのではなく、必要な人員を農場に常駐させて一定の面積を分担させるのだ。

 

――総動員というがほかにどのようなことをしていますか?

A 今、最優先でやっているのは「新しい農地探し」だ。とにかく農場の畑を増やせということで、山林経営委員会と協力して、個人が山間に耕した畑、焼き畑をすべて農場に編入させることもしている。B農場では1町歩の新しい土地探しが課題(ノルマ)で、そのために市内の企業から労働者が派遣されている。トウモロコシを1株でも植えられる土地を新たに作れというのが党の要求だ。農場員らも「新しい農地探し」に総動員されていると言っていた。

※1町歩はほぼ1ヘクタール。

◆軍や特殊機関の畑まで農場に併合

――そんなに簡単に「新しい農地」が見つかりますか?

A 今年は副業地に対する全体調査を徹底するそうだ。去年もしたのだが、今年はどの機関、企業所であれ、特殊機関であっても関係なく、所有している副業地を全て調査して報告させ、その大部分を農場に帰属、併合させよと命じている。

 

――軍隊の副業地も対象ですか?

A 咸鏡北道のある地区の高射砲部隊は、周辺に副業地のトウモロコシ畑を持っていが、今年から近隣の農場で移管されることになった。都市から動員される「農村突撃隊」がその耕作を受け持つことになるそうだ。

2月から都市の窮乏民たちが農場に大勢移住したが、無一文で家財もない彼らに分配する食糧も追加で生産する必要が生じた。それも「新しい農地探し」の理由の一つだそうだ。

※副業地とは、軍部隊などの機関や企業が、構成員に供給する食糧を生産するための農地のこと。

◆早くも農村に「絶糧世帯」が発生

――都市住民はお金が無くて飢えているそうだが、農場員の今の暮らしはどうですか?

A 私の住んでいる市内の暮らしも大変厳しいが、A農場では早くも「絶糧世帯」が出ている。彼らに配るために、農場員に対しトウモロコシを1キロずつ出せと命じていた。国がなにも手当をしないので、農場員には不満が大きい。

※昨年の分配食糧を食べ尽し、現金も底をついた家庭のことを絶糧世帯という。

※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。

北朝鮮地図 製作アジアプレス

 

 

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Source: アジアプレス・ネットワーク