03.31
「身体の不調を、心のせいにしていた」と井桁弘恵さん。学生たちの不調に寄り添う“隠れ我慢“以外の選択肢とは?
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身体の不調を“隠れ我慢”した経験はあるだろうか。
仕事、学校、家事など、忙しない日常の中で「これくらい大丈夫」と、無意識に無理をするのが当たり前になっている人もいるかもしれない。
そんな風に、多くの人が自分一人で抱え込んでいる“見えない不調”のひとつに、生理や月経前症候群(PMS)などの“日常的な不調”が挙げられる。特に学生をはじめとした若い世代では、不調時の相談先がわからずに孤独を感じているという声も多く聞こえてくる。
そこで2021年に始動したのが、株式会社ツムラの 「#OneMoreChoiceプロジェクト」だ。
3月16日、同プロジェクトの一環である「Carellege Action(ケアレッジアクション)」の発表会が、時事通信ホールにて開催された。同社コーポレートコミュニケーション室 室長の犬飼律子さんと、俳優の井桁弘恵さんのトークショーを通して「生理のこれから」を考えた。
「不調なら病院へ!」という“正論”からこぼれ落ちる、学生たちのリアル
「Carellege Action」の“Carellege”とは、 ケア(Care)とカレッジ(college)を組み合わせた造語だ。学生が、生理やPMSなどの不調に隠れ我慢をしなくてもいい環境づくりをする試みで、芝浦工業大学、上智大学、東京経済大学、東洋大学が賛同している。
また、「Carellege Action」の一環である「ヘルスセンター」では、大学に気軽に相談できる場所を設けることで、精神的にも物理的にも身近な選択肢を学生に無料提供するという。
同社の調査によると、女子大学生の約85%が生理やPMSによる不調を日常的に我慢した経験を持ち、さらに6割の学生がその不調を「誰かに相談したい」と考えている。しかし、約3人に1人(34.3%)は、医療機関の利用を含み、誰にも相談ができていないのが現状だという。
この数字だけを見ると「不調なら我慢せずに病院へ!」と“正論”が頭をよぎるが、自身の学生時代を振り返ってみると、限られたアルバイトの給料や時間で生活をやりくりする中で、アルバイトや講義、サークル、お出掛けと並べば、通院の優先順位が下がってしまうのも頷ける。加えて「生理がある人だけが通院のためにかさばる出費を続けなくてはいけない」という現実にも、素朴な疑問が浮かんでくる。
身近な言葉を借りるなら、“コスパ”や“タイパ”の面からも、あまり親和性のある選択肢ではないのかもしれない。
そして何より、デリケートな身体の不調は、そもそも誰にでも気軽に相談できる訳ではないという側面もある。井桁さんも自身の学生時代を「大学1、2年生の時は寮にいて、同世代の同性の友人が身近にいたので相談をしていた方だと思います。でも、一歩踏み込んだ話や、病院に行って相談することはできていなかった」と振り返った。
「身体の不調を、心のせいにしていた」
一口に「生理」と言っても、それに伴う症状や辛さ、そして向き合い方も人それぞれだ。
発表会の後半では、井桁さんから事前に寄せられた質問や悩みに、霞ヶ関ビル診療の丸山綾さんが回答する形で 「ヘルスセンター」を擬似体験した。
井桁さんは「生理痛が重い時、仕事など周囲の環境とのギャップを感じて辛くなることがあります」という悩みを相談した。
丸山さんは質問に対し、生理の前に気分が落ち込んだり、身体に不調が起こったりする仕組みや対処法について説明しつつ、「人によって症状は異なるので、専門家である私たちに相談していただければ、本人になったものを提案できます」と回答。不調との向き合い方の解は個人単位で異なると語った。
丸山さんの回答を受けて「生理中や生理前の気分の落ち込みは、原因がわからないと、そうなっている自分にも腹が立って負のループに陥りやすいんです。その原因を先生が教えてくださることで、自分が正常というか、『体の機能として起きていることなんだ』と分かり、心との向き合い方も変わりました」と井桁さん。
また、以前は「そういった身体の不調を心のせいにしていた」「ネットで調べられるけれど、結局どれが自分に合っているのかが分からなかった」と、正しい情報を教えてくれる環境が身近にあることの大切さを実感していた。
パートナーや生理がない人にも「ヘルスセンター」に来てほしい
擬似体験の後半では、辛さの渦中にいると気持ちや行動が主観的になってしまうという観点から、症状と俯瞰して向き合ってくれる“サポーター”がいることのメリットや、周囲や社会が理解を深めることの大切さについてもトークが進んだ。
特に生理のない人から、その辛さを理解してもらうことは難しい。これに対し、丸山さんは「生理痛に悩んでいる人はもちろん、窓口にはパートナーが生理痛で悩んでいる学生さんをはじめ、生理のない方にもぜひ来て欲しいです」と明るく語りかけた。
擬似体験を経て、犬飼室長は「痛みは人それぞれでなかなか伝わりにくいので、伝えることを諦めてしまいがちですが、さまざまな症状があって、さまざまな選択肢があるということをこのプロジェクトで伝えてきたいと思っています」と発表会を締め括った。
デリケートな問題だからこそ真摯に、できるだけ身近に。そんなウェルビーイングを追求、体現する優しい試みから、これからも目が離せない。
Source: HuffPost