2023
03.27

斎藤兵庫知事ら刑事告発さる 選挙運動員買収の容疑で 「14人の地元政治家に報酬支払は違法」と専門家 SNSで次々発覚

国際ニュースまとめ

刑事告発された斎藤元彦兵庫県知事。自民と維新の推薦だった。HPより

◆自民と維新の推薦で初当選だが…

2021年7月の選挙で自民党、日本維新の会が推薦して兵庫県知事に初当選した斎藤元彦氏と選挙時の出納責任者の二人が、公職選挙法が禁止している選挙運動員の買収の疑いで、昨年9月に告発されていた。選挙運動は原則として無報酬で行うことが法律で決められているが、斎藤氏が自民党の盛山正仁衆議院議員ら14人の選挙運動員に「労務者報酬」を支払い、選挙運動を行ったと指摘されている。(フリージャーナリスト・鈴木祐太

斎藤知事らを刑事告発したのは上脇博之神戸学院大学教授。告発状によると、斎藤元彦兵庫県知事は21年7月1日に国会議員及び兵庫県内の政治家29人に合計20万4300円の「労務者報酬」を支払っていた。これは、斎藤知事の選挙運動収支報告書(以下、収支報告書)に記載されている。

選挙運動は原則、無報酬で行うことが公職選挙法で決められている。例外として、ウグイス嬢(車上運動員)やポスター貼りなどに関しては、報酬を払うことが認められているが、上限が決められている。

告発状によると、今回、斎藤知事が労務者報酬を払っていた29人のうち、少なくとも14人が選挙運動をしていたことが確認されたという。つまり、無報酬で選挙運動を行うことが法律で定められているにもかかわらず、斎藤知事は運動員に報酬を支払ったということだ。当然、公職選挙法違反だ。

◆現金もらった政治家がブログ、SNSに書いて次々発覚

一例をあげよう。

斎藤知事から労務者報酬を受け取った盛山正仁衆議院議員は、選挙中の7月8日に「さいとう元彦候補のポスター貼りを頑張っています」と自らのブログに書き込んでいる。ポスター貼りだけをしていたのであれば何の問題もない。しかし、7月15日に斎藤知事(当時は候補)とともに街宣車の上から応援演説をしていること動画サイトで確認されている。また、ブログにも斎藤知事と街宣車から応援演説をしている写真が掲載されている。

残りの13人は兵庫県の市町村議員だが、盛山議員と同様に法律で認められていない選挙活動をしていたことが、本人のSNSをはじめインターネット上などに残っていることが確認された。

2021年の兵庫県知事選で斎藤候補を応援する自民党の盛山正仁衆議院議員(左)。この選挙運応援に現金を支払っていたとして斎藤氏は刑事告発された。森山議員のHPより。

◆選挙運動員への報酬は買収罪

今回、斎藤知事らを刑事告発した上脇博之神戸学院大学教授は、問題点を次の様に指摘する。

「公選法は選挙運動無報酬を原則としており、候補者側が報酬を支払えるのは法令で認められた者に限定されます。例えば候補者のポスターを貼った者に報酬を支払うことは法令内の報酬額であれば許容されていますが、その者がポスター貼り以外に選挙運動をすると買収罪に該当します。ですから、選挙運動員には、たとえポスター貼りをしても報酬を支払ってはならないのです。

しかし、斎藤候補の収支報告書には、議員29人に労務者報酬を支払ったことが記載されており、私が調べたところ、そのうち14人が選挙運動をしていることが確認できました。14人に支払われた酬額は計10万2000円。通常、地元の議員が選挙運動をしていないとは思えないので、神戸地検が捜査を尽くせば、選挙運動をしていた議員はもっと増える可能性がありますので、買収額はもっと増える可能性があります。」

民主主義の根幹である選挙運動において、これだけ多くの政治家が違法な選挙行為を行っていたことは驚きである。今回のケースと同様に昨年には細田博之衆議院議長が、地元の政治家に報酬を払い選挙運動に従事させていたことが週刊文春で報じられたことは記憶に新しい。選挙の憲法とも言える公職選挙法が政治家に軽んじられているのではないだろうか。

以下は、労務報酬を受け取り、選挙活動をしていたことが確認された議員
・盛山正仁 衆議院議員(自民党)
・前川進介 丹波市議会議員
・中田愼也 伊丹市議会議員(自民党)
・松隈紀文 川西市議会議員
・秋田修一 川西市議会議員
・大川裕之 宝塚市議会議員
・風早寿郎 兵庫県議会議員(自民党)
・平井真千子 神戸市議会議員(自民党)
・川上朝栄 芦屋市議会議(自民党)
・白國高太郎 神戸市議会議員(自民党)
・田中正剛 西宮市議会議員(自民党)
・松本裕之 加古川市議会議員
・深田真史 加西市議会議員
・丸岡弘満 加西市議会議員

 

■ 鈴木祐太 (すずきゆうた)
1981年香川県で生まれ。岡山、大阪で育つ。大学在学中から貧困状態にある子どもたち、特に被差別部落や在日外国人の子どもたちへの支援に関わり、小学校講師、派遣社員などを経てジャーナリズム活動を始める。フロントラインプレス所属。

Source: アジアプレス・ネットワーク