02.02
岸田首相の「同性婚で家族観や社会が変わる」発言に反発。「変わらないのは政治だけだ」
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法律上の性別が同じふたりの結婚、いわゆる「同性婚」の法制化をめぐり、岸田文雄首相が「家族観や価値観、そして社会が変わってしまう」と述べたことに対し、反発が広がっている。
SNSには「社会はすでに変化している」や、「家族観や価値観は人それぞれで国が決めることではない」「どんな問題が生まれ、誰が困るのか首相にお答えいただきたい」といった声が投稿された。
課題は私たちではない
岸田首相は2月1日の衆議院予算委で、同性婚の法制化について聞かれ「家族観や価値観、そして社会が変わってしまう課題」と回答。
「社会全体の雰囲気や全体のありようにしっかりと思いを巡らした上で、判断することが大事だ」と否定的な姿勢を示した。
この発言について、Netflixの番組『クィア・アイ in Japan!』に出演し、性的マイノリティ当事者として発信をしているKanさんは「岸田首相、課題は私たちではありません。あなたです」とツイートし、思いをつづった。
岸田首相、課題は私たちではありません。あなたです。
The issue is not us. It is you, Japanese Prime Minister Kishida. pic.twitter.com/C1o3OBCg7g— Kan (@kankanyonce) February 1, 2023
Kanさんは2016年に交際を始めたパートナーのTomさんと、2021年にイギリスで結婚した。
日本では同性パートナーと結婚する選択肢がなかったため、移住しなければならなかった。
Kanさんは「当事者の状況を見てください。当事者の声を聞いてください。そうすれば、何年もかけて検討する余裕がある話ではないことは、簡単に分かるはずです」とハフポスト日本版にコメントした。
「あなたたちが時間をかけて検討している間に、僕は家族も友達も仕事も大好きなものも全部置いて、日本を出ざるを得ませんでした。愛する人と結婚することができないまま、亡くなられた方もいらっしゃいます。僕たちには検討する余裕なんてありません。真摯に向き合い、行動してください。検討は、もういりません」
首相がアップデートできていない
現在日本では、30人を超える性的マイノリティの当事者が、結婚の平等(法律上の性別が同じふたりの結婚)実現を求めて国を訴えている「結婚の自由をすべての人に」裁判が進んでいる。
この裁判の札幌弁護団の一人、須田布美子弁護士は「社会の家族観はとっくに変わっていて、首相がアップデートできていないだけだと思います」とツイートしている。
大学や大学院で若い人に同性婚訴訟の話をすると、「どうして結婚できないのかわからない」と言われます。社会の家族観はとっくに変わっていて、首相がアップデートできていないだけだと思います。
同性婚は家族観が変わる課題と首相(共同通信)#Yahooニュースhttps://t.co/6dG1W10hSK
— 須田布美子 (@sudafumiko626) February 1, 2023
さらに「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」の事務局長である井田奈穂さんは、「雰囲気ではなく人権の問題」と指摘した。
「家族観や価値観、社会が変わってしまう課題だ。社会全体の雰囲気にしっかり思いを巡らせた上で判断することが大事だ」
@kishida230
何の落ち度もないのに等しい権利がなく苦しむ国民がいた場合、権利を回復するのが政治の役割です。雰囲気ではなく人権の問題です https://t.co/49rotusAtK— 井田奈穂/Naho Ida/選択的夫婦別姓・全国陳情アクション (@nana77rey1) February 1, 2023
井田さんはハフポスト日本版の取材に対し、人権について「思いやり」ではなく「政府の義務」だと強調した。
「昨年末『武器としての国際人権』(集英社新書)という名著を藤田早苗さんが出版されました。そこにも繰り返して書かれているのは、人権は『思いやり』の話ではなく、実現しなければならない政府の義務だということ。 改めて政府の責任を問いたいです」
人権は、多数派の雰囲気で決められるものではない
松岡さんは「法律上異性のカップルは結婚ができて、同性のカップルはできないというのは、不当な差別的取り扱いです」とハフポスト日本版の取材で述べた。
「岸田首相の答弁は『差別はあってはならない』と言いながら、差別を許容している。明らかに矛盾しています」
松岡さんは、この矛盾は「社会全体の雰囲気に思いを巡らした上で」という発言にも見られると述べる。
「人権は、多数派の雰囲気で決められるものではありません。『思いやり』でも『心のあり方』の問題でもありません。たとえ多数派の“理解”がなかったとしても、守られなければならないのが人権です。その人権を守る義務は、まず政府にあり、首相の答弁はその義務を怠っているものと言えると思います」
岸田首相は同性婚について「家族観や価値観、社会が変わってしまう課題だ」と答弁。すでに世論は賛成が過半数を超え、若い世代では大多数が賛成。社会の実態は、多様な家族のあり方を尊重する方向へともうすでに変わっている。いつまでも変わらないのは政治だけ。→https://t.co/NNo3KmIi7E
— 松岡宗嗣 (@ssimtok) February 1, 2023
背後にある右派宗教とのつながり
岸田首相は、1月25日の衆議院本会議では、同性婚について「我が国の家族の在り方の根幹にかかわる問題であり、極めて慎重な検討を要するものと考えている」と述べている。
これは自民党の歴代首相が繰り返してきた説明だが、松岡さんはこの発言について「婚姻平等の実現を阻止する『言い訳』でしかないと思う」と語る。
自民党が同性婚に反対し続ける背景にあると松岡さんが指摘するのが、旧統一教会などの右派宗教団体との密接な関係だ。
2022年には、自民党などに所属する政治家が、同性婚に強く反対している旧統一教会の支援を受けていたことが明らかになった。
またこの年の6月には、多くの自民党議員が参加する「神道政治連盟国会議員懇談会」の会合で、「同性愛は精神障害で依存症」と書かれた冊子が配られ、問題になった。
松岡さんは「実際には、こういった宗教右派勢力と自民党の繋がりによって、婚姻の平等が阻止されています。こうした事実が広く知られるべきだと思います」と話す。
変わらないのは政治だけ
さらに同性婚を「社会が変わってしまう問題だ」という岸田首相の発言について、松岡さんは「変わらないし、もうすでに変わっていると言えると思います」と述べる。
「よく取り上げられるニュージーランドのモーリス・ウィリアムソン元議員のスピーチのように『関係のある人にとっては素晴らしいものです。一方、そうでない人にとっては、いつも通りの生活が続くだけ』なのです」
ウィリアムソン氏は2013年、同性婚を認める法案の最終審議で、反対する人に向けて、次のようにスピーチした。
「明日も世界はいつものように回り続けます。だから、大騒ぎするのはやめましょう。この法案は関係がある人には素晴らしいものですが、関係ない人にはただ、今までどおりの人生が続くだけです」
松岡さんも「婚姻の平等を実現しても、利用しない人にとっての『社会』は変わりません」と強調する。
岸田首相が同性婚の法制化に対し否定的な考えを示した一方で、2020年の調査では、同性婚に賛成する人が6割を超え、20代〜30代では8割を占めた。また、朝日新聞の世論調査では、自民党支持層でも約6割に上った。
「社会はもうすでに『多様な家族のあり方を尊重する方向』へと変わっていると言えます。いつまでも変わらないのは、政治だけです」
Source: HuffPost