2022
10.28

<北朝鮮内部>再び医薬品枯渇で医療崩壊深刻 麻酔・点滴・消毒薬消えて死者発生 輸入増加なのになぜ?

国際ニュースまとめ

(参考写真)国産のペニシリン。薬効が弱いと評判は良くない。ニセ薬も出回っているという。2015年4月北朝鮮国内で撮影アジアプレス

北朝鮮の地方都市で再び医薬品不足が深刻になり、簡単な手術や措置が受けられず死亡する事例が相次いでいる。5月に金正恩政権が新型コロナウイルス感染拡大を認めた直後は、地方都市にも緊急に中国製の医薬品が届けられていたが、それが払底したのか医療崩壊事態が深刻化している。北部地域に住む複数の取材協力者が伝えてきた。(カン・ジウォン/石丸次郎)

◆麻酔薬なく盲腸手術もできず

「病気になれば死ぬと思え」
「無償医療制なんて死語になった」

平壌はいざ知らず、今、地方都市で常識として語られていることだという。最近の事情を両江道(リャンガンド)に住む取材協力者A氏が調査し10月中旬に伝えてきた。

「コロナが拡大した時は、12度食べ物を配布し、少し中国製の解熱剤が入ってきたけれど、今は医薬品がどこでも不足している。最近、金亨稷(キムヒョンジク)郡の盲腸の患者が麻酔薬と消毒薬がなくて手術ができず、恵山(ヘサン)市まで運ばれて来たのに破裂して死亡する事故があった。家族が地元の薬局と個人の薬商売人に手を尽くして薬を探し回った、結局入手できず手術ができなかったそうだ。

105日には恵山市中心の渭淵(ウィヨン)洞に住む6歳の子供が急性の下痢症になったのだが、下痢止めが手に入らず脱水症状になったのに点滴がなくて死んだ。

コロナ以前(2019年以前)には受けられた簡単な手術や治療すら、今では病院に行っても無駄なので、道(都道府県に当たる)の病院か平壌に行かなければだめだというのが普通の認識になった。金や地位がある人は、三池淵(サムジヨン)市の病院に行く場合もあるが、あそこの病院は他地域の一般人は受け付けてくれない。三池淵でも医薬品不足は深刻だそうだ」

※三池淵は金正恩氏肝いりで観光都市として開発され郡から特別市に昇格。総合病院も新築された。

(参考写真)両江道のある病院の病室。患者が一人横になっている。2015年4月に撮影アジアプレス

◆薬商売の取り締まりでさらに入手困難に

A 「必要な薬は病院付属の薬局で購入するというのが規則だが、必要な薬は入って来ない。病院に行っても医師が診察する際に『薬は手に入るか』と患者に聞くほどだ。医師は往診にも回っているが、注射を打つなど患者が自分で買って準備できている場合だけだ。

せめて個人の薬品商売の取り締まりをやめるべきだ。取り締まりの安全局(警察)の機動隊を見ると、罵り声を上げる人もいる。取り締まるなら、薬をどこかで買えるようにすべきだという反発が強い。恵山市では、道と市の総合薬局を建設しているが薬がなければただの箱に過ぎない。以前なら同じアパートで薬を貸し借りもしていたが今では無理だ」

◆「無償医療制」は死語になった

A 「国が運営する薬局でも現金で買わなければならない。その薬局にも薬はないから、自分で買える所を探さねばならないが、取り締まりがきつくなって売る人がいなくなった。『無償医療制』なんて死語になった。

国家的な対策として、針、灸、吸引などを利用するように住民たちに通知して、民間療法をする人への規制が緩くなった。金儲けになるからといって、よくわかってもいないくせに本で俄か勉強して治療してやると吹聴している人もいる」

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