2021
06.18

最愛の人の「生前の姿」をGoogleストリートビューで発見した人たち…その感動と特別さ

国際ニュースまとめ

<手をつないで歩く両親、家族に隠れてタバコを吸う母…。在りし日の一瞬を切り取った写真は、特別な感動を与えてくれる> Googleマップにストリートビューの機能が導入されたのは2007年のこと。もともとは、ドライバーの運転を手助けすることが目的のサービスだが、それよりもずっと感動的な使い方を考え出した人がいる。この世を去った大切な家族や友人の、生前の姿を見つけるというものだ。 ストリートビューは、特殊なカメラを積んだ車などがあらゆる道に赴いて写真を撮影することで、世界中の街並みを見ることができるサービス。ここに、時間が止まったかのように保存されている画像を何度も開いている人が世界にはたくさんいる。 38歳のショーン・ドハーティは、ツイッターで人気の「ざんげ」アカウント@fessholeの投稿を見たことをきっかけに、2009年に撮影されたGoogleマップの美しい写真をシェアした。そこに写っていたのは、今は亡き彼の両親が手をつないで自宅前を歩く姿だ。 Google Mapsに残る手をつないで歩くドハーティの両親の写真 SEAN DOCHERTY ドハーティと同じく、大切な人の思いがけない瞬間を見つけ出した人は少なくない。ストリートビューを開き、左上の時計マークをクリックすると、Googleマップの古い画像を確認することもできる。 ドハーティは両親を、それぞれ2010年と2013年に亡くしている。しかし彼は2014年、Googleマップで2人の姿を発見した。 「まるで、自分が両親のすぐ横を車で通りすぎているような感じだった」と、ドハーティは本誌に語った。彼は、@fessholeが投稿した「父親が亡くなる前に撮影されたストリートビューを開き、父がまだいた世界をあちこち動き回っている」というツイートを見て、「両親が写っている画像が存在する自分はとても幸運なのだと思った」という。 手をつないでいる瞬間だった幸運 「私は一人っ子で、両親も祖父母もみんなこの世を去った。どんなに小さな思い出でも、私にとってはかけがいのないものだ。私には幸い、息子がいる。そうでなければ、完全にひとりぼっちになっていただろう」とドハーティは続けた。 Googleマップの撮影車がドハーティの両親の姿をとらえたのは、母親が末期の大腸癌と診断された直後で、外出できなくなる数カ月前のことだったという。「普通に自宅の前を歩いている2人を目にできるなんて最高だ。一緒にいる姿が、かわいらしく見える」 大切な人が同じ世界に存在しているところを、再び発見できるだけでもラッキーだろう。それがドハーティの場合、両親が何気なく手をつないでいる瞬間なのだから、どれだけ幸運なことだろうか。「2人が手をつないでいるあの瞬間が撮影される確率は、ほとんどゼロだったに違いない。だから、本当にありがたく思っている」 ===== 38歳のリサ・パターソンは、「つらいときや、父親に会いたいと感じるのはたいてい深夜で、そんなときは道を歩いている父親の画像を見る」と話す。彼女がGoogleマップで見つけたのは、かなり以前の父親の画像で、近所に住む高齢者のごみ出しを手伝っているところだった。父親は、62歳だった5年前に突然亡くなったという。 パターソンの父親は、自分が写った画像をネットで発見した当時、「近所に住む高齢者のごみ出しをするために道を歩いているところを撮られたと、とてもおもしろがっていた」という。 今のパターソンにとって特別なのは、父親がその画像を自分で発見したという思い出だけではない。画像を3Dで見られるのも嬉しいようだ。「父親をいろいろな角度から見られるのが好き。まるで、父が今でもその世界に存在しているような気持ちになる」とパターソンは言う。「眠れない夜には、その画像を見て父のことを考える」 こっそりタバコを吸おうとしている母の姿 49歳のバーナード・ベイカーも、母親の思い出を語ってくれた。自宅前にいる彼の母親の姿がGoogleマップで撮影されたのは、亡くなる1年ほど前のことだった。 「母がタバコを吸うのを、家族は嫌がっていた。でも好きで吸っていたのだから、彼女にとってはよかったのだろう。タバコを吸おうとコソコソしているこの画像を見るたびに、笑顔になる」とベイカーは本誌に語った。「母はこの画像が撮影されたおよそ2週間後にこの世を去った。救急車で運ばれていったとき、私は玄関で見送った」 Google Mapsに残るタバコを吸おうとするベイカーの母親の写真 BERNARD BAKER. ベイカーがこの画像を発見したのは幸せな偶然だった。自宅を建て替える前と建て替えた後を比べようとしたのだという。 「父が亡くなった後、私は妻と子どもたちと一緒に母の家に引っ越した。母が独りになるのが耐えられなかったからだ。母はにぎやかな家庭が好きだった」とベイカーは振り返る。「引っ越してから、大切な母の面倒を見られるよう、建て替えを計画した」 「ときどき、母がまだそこにいるのか確認したくて、Googleマップを見ている」 (翻訳:ガリレオ) ===== <Googleストリートビューに写る亡き家族の写真> Google Mapsに残る手をつないで歩くドハーティの両親の写真 SEAN DOCHERTY Google Mapsに残るタバコを吸おうとするベイカーの母親の写真 BERNARD BAKER.

Source:Newsweek
最愛の人の「生前の姿」をGoogleストリートビューで発見した人たち…その感動と特別さ