2019
10.22

南米チリ:地下鉄運賃4.5円値上から始まったチリの暴動と非常事態宣言について

国際ニュースまとめ

チリの暴動と非常事態宣言について

大手メディアで見られるように、チリは非常事態となっている。たった4.5円の地下鉄運賃値上で3日間で国が内戦寸前状態となっている。

この暴動を行なっているのは誰なのか、なぜ許されないような暴力や略奪の行動に走ってしまうのか。

みんな犯罪グループで右翼対左翼の暴動だと簡単な評価で留めてしまうこともできるが、そうするとこの大きな問題の本質には辿り着けない。

問題は何なのか。それは世界各国で起きている似たような出来事が教えてくれる。

その出来事とは、国民が「もう失うものは何もない」という絶望感に陥ったときだ。それは慢性的な不公平感であり、情熱をあふれさせ、1日200万人以上の乗客を支持する地下鉄の改札口とカードのセンサーを破壊する不合理な行動に至ってしまう絶望感なのだ。

この大きな暴動の発端となった地下鉄運賃値上げへの抗議として学生団体中心に大規模な無銭乗車の呼びかけはもっと大きな社会問題が裏にあるのか、それははっきりとは言えない。しかし言えるのはその学生達の親の大半の給料が月40万チリペソ(約6万円)未満で、この4.5円の値上げが彼らの生活費に影響するということ。更に言えるのは、この学生たちの祖父母の5割が17万6千チリペソ(約2万6千円)未満の年金生活を送っていて、その少ない年金を、破綻した医療制度の影響により急騰した医療費に費やしている。

チリは南米の経済ロールモデルとして見られがちだ。過去20年間で収入は増加したが、物価と比較すると低く、基本的な生活を満たすのに十分ではない。 一方、一部の富裕層が経済発展の恩恵を受け、特権を集中し、共謀罪にかけられても免除され、脱税して富を更に増やす。それがいまの「リアルなチリ」で

問題の根源は紛れもなくずっとペンディングとなっている貧富の差だ

ほとんどのチリ人は今起きている非人道的な暴動に反対なのは明白だ。しかし明白でないのはこの不平等な状況と怒りをどう解決するかということだ。この暴動が更に広がる可能性が高い。政府は火をガソリンで消そうとしているようにも見える。このような暴力は市民にしろ政府にしろ許されないことだ。

ツイッターに暴動のインフォグラフィックをツイッターでシェアしたところ、日本の問題と似ているという意見を多々頂いた。日本メディアももっと近くで見た方が良い出来事かもしれない。

ではどうすれば良いのか

まずはこの問題について知ることだ。特にチリ在住日本人向けの情報をこの記事に載せていきたい。

この数日間でメディアを見るとほとんど暴力的な一面のみを見せている。しかし暴動を起こしているのは少数派で平和的なデモが広がりを見せている。

以下に様々な情報を共有する。よろしければコメントに意見や追加情報を載せて頂きたい、そして記事の拡散も願いたい。

外出禁止令地域:(10月21日最新)

  • Antofagasta: 20時〜翌日6時
  • Copiapo, Vallenar, Caldera: 21時〜翌日6時
  • SerenaとCoquimbo: 20時〜翌日6時
  • Valparaiso: 18時〜翌日6時
  • Rancagua: 20時〜翌日6時
  • Concepción:18時〜翌日6時
  • Valdivia: 21時〜翌日6時
  • Santiago: 20時〜翌日6時
  • Talca: 21時〜翌日6時
  • OsornoとPuerto Montt: 22時〜翌日6時

外出禁止令の時に緊急で病院に行かなければいけない場合の手順:

  • 時速10km〜15kmで車で移動
  • 窓は常に開けて運転
  • 見えるように大きな白い布を窓から吊して運転する
  • 社内の照明をつける
  • 軍に呼び止められた場合
    • すぐに車を止める(止めない場合は注意発砲をされる)
    • それでも止まらない場合は撃たれる

また、スペイン語ではありますが、医療スタッフ(医師や看護士など)と話す必要がある場合、保健省が設置している24時間ホットラインに問い合わせる必要がある。電話番号:6003607777

暴動のタイムライン

  • 10月17日 地下鉄運賃の値上を反対して学生グループが多数の駅で運賃払わずに電車にタダ乗り、暴動を起こす。駅の放火にも発展する。
  • 10月18日 
    • 136駅に被害がでる
    • 地下鉄だけでなく地上でバス16台が放火される
    • 夜になると暴動が過激化しモロトフ爆弾が各場所で投げられる
    • Enel電気会社のオフィスビル非常階段が焼かれる
    • 深夜12時にピニェラ大統領が非常事態宣言をし軍を出動させる
  • 10月19日
    • 1990年以来、数百名の軍が首都サンティアゴに出動される
    • 市民がカセロラソ(鍋を強く叩いてデモを行う)を行う
    • 店やスーパーの略奪が始まる
    • 第2の都市バルパライソにも暴動が広がる
    • バルパライソで新聞局が放火される
    • 300人以上逮捕、負傷者 警察156名、市民11名
    • ピニェラ大統領:地下鉄運賃値上げを取り消し
    • イツリアガ陸軍大将が夜間外出禁止令を出す
  • 10月20日
    • 女性2名がスーパーの放火で死亡
    • 暴動が激化、チリ各都市に暴動が広がり、警察と陸軍計1万人出動
    • 逮捕者1462名(614名がサンティアゴ、848名地方都市)
    • 二日目の野外禁止令が出される(15日続く予定)
    • ピニェラ大統領:「これは戦争だ」とスピーチの中で話す
    • イツリアガ将軍は「誰とも戦争をしてない」と弁護
    • 死亡者が11名に及ぶ
  • 10月21日
    • チリ全土でデモが始まる。
    • 夜間禁止令は20時からスタートすると宣言
  • 現在進行中
これはサンティアゴ住民が共同で作ってい地図。
暴動、デモ行進、スーパーの略奪、カセロナソデモ、放火が起きた場所を登録している。
画像をクリックしたらGoogleMapで見れる。

以下在チリ大使館からのメッセージです:

チリにお住まいの皆様へ

1 地下鉄運賃の値上げに反対する抗議活動から派生した大規模な抗議活動がサンティアゴ市内のイタリア広場やニュニョア広場等で行われています。抗議活動は,地方にも拡大しており,新たにイキケ県,ポソ・アルモンテ市においても緊急事態宣言が発令されました。

2 首都圏州,ランカグア市,ラ・セレナ市,コキンボ市においては,21日(月)午後8時から22日(火)午前6時までの間,バルパライソ州,コンセプシオン県においては,21日(月)午後6時から22日(火)午前6時までの間,イキケ市,ポソ・アルモンテ市においては、21日(月)午後10時から22日(火)午前7時までの間,バルディビア市,タルカ市においては,21日(月)午後9時から22日(火)午前6時までの間,外出禁止令が発令されました。

3 つきましては,不測の事態を避けるためにも同時間帯に外出することは絶対に避けてください。同時間帯に外出する場合は,基本は警察署が発給する外出許可証を携帯する必要があります。   

4 また,引き続き治安状況は不安定な様相を示していますので,最新の情報を入手しつつ細心の注意を払ってください。

<情報参考HP>
・チリ政府 https://www.gob.cl/noticias/informacion-oficial-del-gobierno-de-chile-con-las-medidas-para-enfrentar-la-situacion-de-emergencia/

在チリ日本国大使館 領事部 中谷 大輔 
 住 所:Ricardo Lyon 520,Providencia,Santiago,Chile
 電 話:(+56-2)2232-1807
 FAX:(+56-2)2232-1812
 ホームページ:http://www.cl.emb-japan.go.jp/index_j.htm

引用元:
南米ニュース
南米チリ:地下鉄運賃4.5円値上から始まったチリの暴動と非常事態宣言について