10.07
神宮外苑の「伐採4割削減」は全体数ではなかった。「非常に問題がある」と専門家が指摘
明治神宮外苑の「樹木伐採4割削減」は、全体の本数ではない――。
文化財の保護活動を行う「日本イコモス国内委員会」は10月6日、東京都庁で記者会見を開き、事業者が8月に発表した「神宮外苑再開発で伐採数を971本から556本に減らす」という修正案の問題点を指摘した。
同委員会が調査したところ、実際に伐採や衰退が懸念される樹木は1000本近かったという。
971本→556本の4割削減発表の問題点とは?
神宮外苑再開発では、1000本近い樹木の伐採が大きな問題になっており、反対のオンライン署名には10万以上の賛同が集まっている。
こういった懸念や反対の声を背景に、再開発の事業者(三井不動産・伊藤忠商事・明治神宮・日本スポーツ振興センター)は8月16日、東京都の環境影響評価審議会で「伐採本数を、971本から556本に減らすことが可能」と発表した。
これに基づき、東京都も8月18日付の「神宮外苑地区におけるまちづくりファクトシート」で「事業者は、既存樹木の伐採本数を、971本から556本に削減」と説明している。
一方、日本イコモスはこの説明の根拠を確認するため、事業者が提出した資料を精査し、9月に神宮外苑で現地調査を行った。
その結果、次のような問題が明らかになったという。
・事業者が提示した伐採本数の対象地区は「市街地再開発事業エリア」のみで、絵画館前の芝生広場の伐採本数は含まれていない
・事業者側は、伐採本数を「971本」から「556本」に減らすとしたが、提出されたデータには、どの樹木を切り、どれを残すのか書かれておらず、検証できない
日本イコモスは、この点について「市民の間には、伐採本数が事業者の努力により、大幅に減少したという誤った理解が流布する結果となっている」と指摘。
日本イコモス委員で中央大学研究開発機構教授の石川幹子氏は「全体で892本の樹木が危機に瀕しているということは、一行も書いていません。それはやはり、情報の提示として非常に問題があると思います」と記者会見で語った。
実際に伐採される樹木数はどれほどなのか。
日本イコモスは、事業者が提出した3年半前の毎木調査をもとに、改めて伐採される樹木数を計算。その結果、「市街地再開発事業」と「絵画館前広場」をあわせて892本であることが明らかになった。
また、喪失の危機にさらされているのは、伐採対象の樹木だけではない。
事業者は神宮外苑のシンボルである4列いちょう並木を「守る」としているが、石川氏は8月、40年前に地下トンネルが建設された新宿御苑の保全樹木を調査した結果、現計画のままでは4列いちょう並木はダメージを受けて衰退する可能性が高いと指摘した。
こういった樹木を含めると、日本イコモスが「再開発で伐採および衰退が懸念される」と推定する数は989本になった。内訳は以下の通り。
・(伐採対象)「市街地再開発事業エリア」 660本
・(伐採対象)絵画館前の芝生広場 232本
・(保存困難)建国記念文庫の森 37本
・(衰退が懸念)いちょう並木 60本
両者立ち会いでの公開調査を要求
今回の調査を受け、日本イコモスは神宮外苑の保全を求める提言書を改めて作成。
事業者側と日本イコモスの両者立ち会いのもと、公開で伐採樹木数の確認をするよう求めた。
提言書では他にも、正確な情報開示やいちょう並木の名勝指定などを求めており、7日に国や東京都、事業者に提出する予定だ。
40年前に新宿御苑の地下にトンネルを作った時に、樹木の保全プロジェクトに携わった石川氏。この時には、専門家らが現地で樹木を1本1本調査し、十分に話し合った上で、どの樹木を保全もしくは伐採するかを決めたという。
しかし今回の神宮外苑再開発では、樹木の保全や伐採については事業者のみによって決められている。石川氏はこうした状況について「専門家も交えての話し合いが必要だ」とも強調した。
「(新宿御苑の樹木保全は)先生方が議論をして、これは守りましょう、これは無理だから、と一個一個丸をつけて決めました」
「今回はそういうチェック機能がありません。それも大きな問題です」
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Source: HuffPost