08.17
アフターピルの薬局販売「リスクや課題ばかり挙げられている」市民団体が当事者目線での議論求める
厚生労働省が薬局での販売について検討会議を続けている緊急避妊薬(アフターピル)。アクセス改善を目指す市民団体「緊急避妊薬の薬局での入手を実現するプロジェクト」が8月16日、当事者目線での議論と薬局販売の実現を求める記者会見を開いた。
「(検討会議では)リスクや課題ばかり挙げられているという印象がある。アクセスが改善されることによるメリットにも目を向けてほしい」と訴えている。
90カ国では薬局で購入可能。日本はハードルが高い
緊急避妊薬は、コンドームの破損や性暴力など、妊娠する可能性のある性行為から72時間以内に服用することで、妊娠する確率を著しく下げる薬だ。早く飲むほど効果が高いという特徴もある。
厚労省の調査によると、世界の約90の国では医師の処方箋がなくても薬局などで購入可能だ。日本では産婦人科などへの受診や処方箋が必須で値段も平均約1万5000円と高額。アクセスのハードルの高さが問題になっている。
緊急避妊薬の薬局販売(スイッチOTC化)については、2017年にも検討された。しかし、「性教育が遅れている」「使用者自身のリテラシーが不十分」などの意見が出て市販薬化は見送りに。2021年に議論が再開されており、医師や薬剤師などでつくる団体の理事や大学教授、ドラッグストア関係者などが議論を交わしている。
「科学的根拠や海外の状況を参考に検討を」
この日会見を開いたプロジェクトはこれまで、アクセスの改善を求めてオンライン署名を実施、厚労省に要望書を提出するなど声を上げ、厚労省の検討会議にも2度出席。実現を求めて当事者らの声を届けてきた。
しかし共同代表の染矢明日香さんは「課題ばかりが挙げられていて、具体的な対応策が出てこないことを残念に思っています」と危機感を示す。同じく共同代表の福田和子さんは「OTC化されて長い国も多いので、そういう国の状況も含め、科学的根拠に基づいて議論を進めてほしい」と求めた。
プロジェクトではこれまで検討会議で上がった懸念事項などについてWHOなどの資料を元にファクトチェックを行い公表してきた。
例えば、「避妊具の使用が減ったり、性感染症が増えたりするのでは」などの懸念については、WHOの資料を基に、アクセスの改善によって「性的もしくは妊娠のリス クのある行為は増加しないことが示されています」と説明。
イギリスで行われた研究では、若年層の「緊急避妊薬に対する知識や手に入れやすさと、 性的活動が活発になる可能性との間には相関関係はない」ことが示されていることなども詳しく解説している。
「72時間の壁に向き合って議論を」「若者が軽視されていると感じる」
会見には、セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利・SRHR)の課題などに取り組む若者のネットワーク「SRHRユースアライアンス」のメンバーも参加し意見を述べた。
緊急避妊薬を使ったことがあるという27歳の女性は「緊急性が求められるものが緊急に入手できないというのはおかしい」と問題提起。「次世代のユースが自分の体のことを自分で決めるという当たり前のことができるよう進めてほしい」と求めた。
21歳の女性も「72時間」という時間的なハードルは高かったと振り返り、「手に入らなければ自分の人生が大きく変わっていたかもしれない」「72時間の壁に向き合って議論を進めてほしい」とした。
24歳の男性は、検討会議には「アフターピルを使ったことがある人、今後使う可能性がある人など、若者や当事者が不在」だと指摘。「軽視されていると感じます」と訴えた。
検討会議は「どこを向いて話しているのか」
5年前から活動を続けるプロジェクト共同代表の福田さんは、いまだ緊急避妊薬が薬局で入手できない状況に「悔しい。次の世代に同じような悔しい思いをさせて、声を上げなければいけない状況にしてしまっているのが悔しい」とコメント。
厚労省の検討会は「どこを向いて話しているのかと思うことがある。ぜひ今苦しんでいる人たち、これから苦しんでしまうかもしれない人に目を向けてほしい」と求めた。
厚労省の検討会議では今後パブリックコメントを行う予定で、プロジェクトやSRHRユースアライアンスでは意見を送るよう呼びかけるキャンペーンなどを行うという。
Source: HuffPost