07.31
ロシア料理店への嫌がらせ多発⇨老舗洋菓子店がボルシチのレシピを公開。「他人事に思えなかった」【2022年上半期回顧】
2022年上半期にハフポスト日本版で反響の大きかった記事をご紹介しています。(初出:3月6日)
ロシアのウクライナ侵攻をめぐり、日本でもロシア料理店に対するネット上での嫌がらせや、匿名での中傷書き込みが相次いでいる。
人種、民族などへの偏見、憎悪による嫌がらせは「ヘイトクライム」と呼ばれ、料理店側や利用者には困惑が広がっている。
そんな現状を受け、東京都千代田区の老舗洋菓子店「近江屋洋菓子店」( @omiyayogashiten )がツイッターやインスタグラム、ユーチューブで、ウクライナ発祥でロシアでも親しまれている伝統料理・ボルシチのレシピを公開した。
ボルシチはコロナ禍以前に、同店の喫茶コーナーが通常営業していた頃、飲み放題で提供していたという伝説のメニュー。
現在はピロシキやドライケーキ(ロシアケーキ)など、ウクライナやロシアにゆかりのある品々も販売してるといい、ボルシチのレシピを公開した思いについて、「ロシア料理店へ嫌がらせが相次いでいるという状況を、他人事のように思えませんでした」と語る。
◆「食事から世界平和を」の思いに共感続々
近江屋洋菓子店はインスタグラムで、「食事は伝統文化です。ヘイトクライムによって食文化を無くしてはいけません。ボルシチはウクライナ発祥の料理ですがロシアや他諸国でも独自の進化をして食べられています。食事から文化を知る入り口になり、世界が平和になることを願います」とのコメントとともに、ボルシチのレシピを公開。
投稿には、「お店のレシピ公開してくださるなんて嬉しいです!作ります。ロシア料理の代表格のボルシチですがウクライナが発祥の地なのですね。お料理も含め文化はお互いに絡み合い育ってきたのに、人はなぜ争うのでしょう。コロナも戦争もなくなり、またお店でボルシチをいただける日が来ますように」
「ロシアにも友人がいます。ウクライナにも憧れの人々がいます。手を取り幸せな日々を再び取り戻せることを強く願っています」といった、平和を願うコメントが寄せられている。
◆近江屋洋菓子店、ボルシチの作り方
レシピは以下の通り。お店で提供していたものと全く同じメニューという。
〈材料〉
水 400cc
牛肉 150g
ニンジン 30g
キャベツ 50g
トマト 100g
生ビーツ 150g(缶詰でも代用可)
塩 5g
コンソメ 3g
〈作り方〉
1.ニンジンとビーツの皮を剥きます
2.ニンジンを輪切りにビーツをいちょう切りに、キャベツをざく切りに、トマトを乱切りにします
3.牛肉をサイコロ状にカットします(カレー用の牛肉を買うと楽です)
4.鍋に水を入れ火にかけて、沸騰した鍋に牛肉を入れ再度沸騰させ、アクをとります
5.カットした野菜を全て鍋に入れ再度沸騰させます
6.沸騰したら塩とコンソメを入れ、弱火にして10分ほど煮込んだら完成です
YouTubeには作り方をわかりやすく解説した動画が投稿されています。
◆食から文化を知り、平和な世界へ
ハフポスト日本版は近江屋洋菓子店に、レシピ投稿に込めた思いを取材しました。
ーボルシチのレシピを公開した思いを改めて教えてください。インスタグラムの投稿で「ロシア料理店へ嫌がらせ相次ぐ」という記事に触れられており、強い思い入れがあるのではと想像しました。
その国の食事を作り食べることは、文化を知る入り口になると思ったことがきっかけです。食という切り口から文化を知り、少しでも世界が平和になってほしいと願いを込めて、公開しました。
私どもの会社は洋菓子屋ということで、様々な国の影響を受けてお菓子を作っています。お菓子というと欧州のイメージがありますが、北米やロシアやウクライナの地域からも同様に良い影響を受けて、お菓子を作っています。
弊社では公開させていただいたボルシチのほかに、ピロシキやドライケーキ(ロシアケーキ)も販売させていただいています。そのため、ロシア料理店への嫌がらせが相次いでいる状況を、他人事のように思えませんでした。
ー飲食店への嫌がらせが増えていることに対する思いを、可能であれば伺いたいです。
食事は伝統文化です。いろんな国の文化を知ることの出来る飲食店を、ヘイトクライムによってなくすことは、大きな損失だと思います。
戦争でも民間人を攻撃するのはルール違反です。飲食店への攻撃もルール違反なのではないでしょうか、と思います。
ーボルシチを作るときのポイントを教えてください。
可能であれば、ボルシチの要である「ビーツ」は生のものを使ってみてください。香りと味が段違いになります。入手が難しいようでしたら、比較的手に入りやすい缶詰でも、とても美味しく作れます。
ー食べ物に長らく向き合ってきたからこそ、伝えたい思いを教えてください。
人間は食事をとらなければ生きていけず、食事をとったことがない人はいません。
文化や国を知るために一番身近にあるのは食事なのではないのでしょうか。食事をすることで文化を知る入り口になり、多くの人が考えるきっかけになればいいなと思います。
私は飲食店で働いているため、食事のことで微力ながら行動させていただきましたが、皆が自分にできることを行動することで、世界が少しでも平和になることを願っています。
〈取材・執筆=佐藤雄( @takeruc10 )〉
Source: HuffPost