05.25
米渡航中止勧告、豪チーム陽性、外堀も埋まる東京五輪
<米疾病対策センター(CDC)は、今の日本の状況では、ワクチン接種が済んだ渡航者でも変異株に感染するリスクがあるとし、「すべての」渡航を避けるよう勧告した> アメリカが日本への渡航警戒レベルを引き上げ、米国民に渡航中止を勧告した。日本は現在、新型コロナウイルスの感染拡大がこれまでで最も深刻な「第4波」に直面しており、アメリカの今回の決定を受けて、夏の東京五輪開催が可能なのかを疑問視する声が高まっている。 米国務省は24日、国民向けの海外渡航警戒レベルにおいて、日本を4段階のうち最も厳しい「レベル4:渡航の中止を求める」に引き上げた。スリランカの警戒レベルも「レベル4」に指定し、カリブ海の島国アンティグア・バーブーダの警戒レベルは「レベル3:渡航の再検討を求める」に引き下げた。 米疾病対策センター(CDC)は24日、新たに発表したガイダンスの中で「日本への全ての渡航を避けるべきだ」と指摘。その理由として「現在の日本の状況では、ワクチンの接種が完了した旅行者であっても、新型コロナウイルスの変異株に感染したり感染を拡大させたりするリスクがある」からだと説明した。 この渡航中止勧告は、東京五輪の開催がわずか2カ月後に迫るタイミングで発表された。既にパンデミックの影響で1年延期されている東京五輪は、7月23日に開幕の予定だ。 医師数千人が五輪中止を呼びかけ 東京五輪については、全ての参加者にとっての安全を最優先する原則にのっとり、既に海外からの観客を受け入れない決定が下されているが、世界各国から何万人ものアスリートやサポートスタッフが参加する見通しだ。 日本では新型コロナウイルスの感染再拡大で医療体制がひっ迫しており、政府に対して、東京五輪の中止または再延期を求める圧力が高まっている。 5月中旬には、何千人もの医師が所属する複数の医師組織が、政府に対して東京五輪の中止を呼びかけた。日本国民の多くが同様に中止を支持していることも、複数の世論調査によって示されている。 大阪医科薬科大学病院の救急医療部の責任者である高須朗は、ロイター通信に対して、オリンピックが開催されれば新たな、より感染力の強い変異株が流入するおそれがあると指摘した。日本政府は現在、東京都をはじめとする9都道府県に発令している緊急事態宣言の延長を検討している。 「オリンピックとなれば、世界中から7万人ないし8万人のアスリートや人々が日本にやって来る。これが夏にまた大変な事態を引き起こす可能性がある」と高須は述べた。 ===== 複数の著名人も、日本政府に対して東京五輪の開催を考え直すよう促している。 ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は、22日にツイッターに「今、国民の8割以上が延期か中止かを希望しているオリンピック。誰が何の権利で強行するのだろうか」と投稿した。 IOC(国際オリンピック委員会)のジョン・コーツ副会長は21日、東京都が緊急事態宣言下であっても、東京大会は「もちろん」開催されると断言。7月23日の開幕までに、選手村に滞在する選手らの80%以上がワクチン接種を済ませる見通しだと付け足した。 豪チームに陽性者 日本ではワクチン接種を加速させようと、複数の大規模接種センターが開設されたが、ほかの複数の先進国に比べると大幅に後れを取っている。日本でワクチン接種が始まったのは2月になってからで、これまでにワクチン接種が完了した人は、人口の約1.9%にとどまっている。 新型コロナウイルス危機の影響で、東京五輪は既に足元が揺らいでいる。先週には、米アイオワ州で開催されていたスケートボードの東京五輪予選対象大会で、オーストラリアチームが失格になる事態が発生した。同チームの選手3人が新型コロナウイルスの検査で陽性と判明し、ほかの選手も濃厚接触者とされたためだ。 このチームのうち、既に東京大会への出場資格を得ている選手は2人だけで、そのほかの複数の選手にとっては、この予選が出場を決める最後のチャンスだった。
Source:Newsweek
米渡航中止勧告、豪チーム陽性、外堀も埋まる東京五輪