06.22
「自分を愛す」には何が必要?トランス女性のドラァグクイーンが辿り着いた「本来の自分」との向き合い方【プライド月間】
トランスジェンダーであることを公表し、ドラァグクイーンとして活動するラガンジャ・エストランジャさん。来日に合わせ、トランスジェンダーフラッグの色合いをイメージした着物姿を披露した【あわせて読みたい】50組の同性カップルが渋谷を行進。東京プライドパレードで「私たちはここにいる」「ただ結婚制度を利用したいだけ」
見るだけで気分が上がるようなメイクや衣装、パフォーマンスで、「自分らしく生きること」の大切さを伝えてきた「ドラァグクイーン」。
ゲイ男性が多い中で、トランスジェンダー女性のドラァグとして注目を集める人がいる。アメリカを中心に活動する、ラガンジャ・エストランジャさんだ。
かつては、男性や女性といった枠組みに当てはまらない「ノンバイナリー」を自認し生きてきた。だが「本来の自分でいたい」という思いに向き合い、2021年には「トランスジェンダー女性」であるとカミングアウトした。
その「揺らぎ」の中には、どんな葛藤、そして希望があったのか、来日に合わせてラガンジャさんに聞いた。6月は性的マイノリティの権利を啓発する「プライド月間」。一番伝えたいのは「自分が愛せる自分になること」だという。
◆自分を愛する大切さを伝える中で
13歳の時、姉の服を着て、おしゃれをしてみたいと思った。それ以来、「ノンバイナリー」を自認したり、ゲイとして生きていたりした時期もあった。
大学時代に参加したドラァグのコンペティションを機に、本格的にドラァグクイーンの道に進んだ。ドラァグ・クイーン界の大御所とされるル・ポールさんが主催す、アメリカの勝ち抜き式リアリティ番組『ル・ポールのドラァグ・レース』(日本ではNetflixで配信)などに出演した際は、「少し生意気で魅力的」だと評されるパフォーマンスが注目を集めた。
「ドラァグクイーン(という仕事)が自分を選んでくれた」とまっすぐに語るほど、仕事は順調だった。だが心の奥底では、大きな葛藤があった。性のあり方について学ぶ中で、「自分はトランスジェンダーかもしれない」と気づき始めたからだ。
「故郷のテキサス州は、性的マイノリティへの偏見が強い保守的な地域です。その中でも特にトランスジェンダーは、タブーとされてきました。だから家族や仲間、まわりが自分をどう思うか、すごく怖かったんです」
現状のまま暮らすことも、心理的な負担となった。最終的に「トランジション(性別移行)するか、死を選ぶかというところまで追い詰められた」と振り返る。
その中で、自分らしく生きる道へと背中を押してくれた言葉がある。それは、『ル・ポールのドラァグ・レース』の代名詞とも言える台詞だ。
If you don’t love yourself, how in the hell you gonna love somebody else?
”自分を愛せなければ、どうやって他者を愛せるの?”
ラガンジャさんは、強く共感するそのル・ポールさんの言葉を、ステージ上で伝えてきた。だがその度に「私自身が、(己の性のあり方を含め)自分を愛せていない」と感じてきた。「嘘をついているような感覚もあり、自分がどんどん嫌になっていったんです」。
ラガンジャさんの人生の大きな決断には、ル・ポールさんの言葉があった叶うならば、自分を真正面から愛したかった。そのために何が必要か。辿り着いたのが、トランスジェンダー女性であることを自分で認め、性別移行をするという選択だった。怖さと同時に、「やっと、本来の自分になれる」という希望も感じた。
そして、自身のジェンダーアイデンティティをカミングアウトし、ドラァグクイーンとして活動を続けることを決めた。
ゲイの人が多い世界だが、トランスジェンダーだからこそ、活動の中で大切にしたい軸ができた。それは、「かつての私がいてほしかった、ロールモデルになりたい」という思いだ。
「自分に嘘をつかなくなったことで、前よりも、人に愛を伝えることができるようになった感覚があるんです」
トランスジェンダーの人にも、性別適合手術を望まない人がいる。ラガンジャさんはいろんな選択に共感した上で、「大切なのは、自分がどう生きたいか、ということ。そして、自分を愛すというマインドだと思うんです」とほほ笑む。
「自分を見つけるのに急がないこと。遅すぎるなんてことはないから。とはいえ、のんびりしすぎないでね」
「自分がどんな人間なのか分かった方が楽しいなって思うから、自分の中の『こうかもしれない』を、信じてほしいなって感じます」
ラガンジャ・エストランジャさんは本来の自分で生きる今、「心が軽やかで、幸せ」だとほほ笑む日常にある「当たり前」の数々によって、「周囲と違うこと」に悩む人はたくさんいる。
ラガンジャさんは「子どもの頃はみんな、こうしたら楽しいといった『純粋で、確かな自分』を持っていたように思います。ですが社会で『こう生きなければ』といった模範像を求められる中で、それを失ってしまうのではないでしょうか」と共感を示した上で、こう訴える。
「難しいことだと思うのですが、同調圧力に負けず、本来の『自分らしさ』を愛し、貫いてほしい。その過程は苦しいかもしれないけれど、自分を愛して生きることは楽しいですよ。今なら胸を張って言えるんです」
<撮影=植村マサ、衣装制作=クドウサエコ、着付け=カタヤマトモコ、通訳=西谷友雅>
Source: HuffPost




