10.19
【鈴置解説】「日本の輸出規制が失敗」は大ウソ 「韓国の国産化が失敗した」が本当
(以下抜粋で)
――韓国政府はなぜ、それほど卑屈になったのでしょうか。
鈴置:2019年7月の韓国に対する「半導体素材の輸出管理強化」――韓国の言う「輸出規制」――が効いてきたからです。先に引用したハンギョレの社説でも、チラリと本音をのぞかせています。
――「日本の輸出規制は失敗した」と韓国側は言っていませんでしたか?
鈴置:ええ、文在寅大統領は「日本の敗北、韓国の勝利」を叫んできました。日本の韓国専門家のなかにはそれを受け売りする人も登場しました。でも、大統領発言はまったくのウソだったのです。
フッ化水素の対日依存度が落ちる――日本からの輸入が減るのは当然です。日本政府が2019年7月1日に対韓輸出管理の強化に乗り出したのは、韓国企業が日本から輸入したフッ化水素を第三国に再輸出、つまりは「横流し」していたからです。
韓国の国会でも同年7月12日、保守系議員が「横流し事件」を追及しています(「日本に追い詰められた韓国 米国に泣きつくも『中国と手を切れ』と一喝」参照)。
日本政府の輸出管理強化に驚いた韓国政府が、遅ればせながら民間の行政指導に乗り出した結果、対日輸入が減ったのです。
・2019年8月の台湾製のフッ化水素の輸入額は257万1000ドルで、全輸入額の39・9%を占めた。前月の112万9000ドル、全体の14・2%と比べ急増した。
・半面、同年上半期に529万3000ドルと48・5%の輸入シェアを占めていた日本製は7月に96万1000ドルに急減し、8月にはゼロを記録した。
ただ、この記事も指摘する通り、「台湾製」の多くが日本メーカーの台湾工場で製造したフッ化水素であり「切り替えにより日本の産業が損害を被っている」わけではありません。
それによると、この3品目の2019年下半期以降の2年間の対日輸入額は、それまでの2年間と比べ0・67%しか減っていません。
品目コードは日韓で微妙に異なるため、日本の対韓輸出のデータとは必ずしも一致しませんが、「輸出規制で日本の素材メーカーが大損した」わけではないことがこれからも分かります。
――「日本の輸出規制が失敗」とは大ウソなのですね。
鈴置:「韓国の国産化が失敗した」のが本当です。もし、本当に国産化に成功していたなら、全経連が「輸出規制をやめてくれ」と岸田新首相に泣きつく必要はありません。
文在寅大統領だって7月2日の演説で「政府は日本の輸出規制に対しても外交的解決のため努力しています」と語っています。国産化に成功したのなら、日本の規制など放っておけばいいはずです。
――それにしても韓国が「輸出規制」撤廃に異様な執念を燃やす理由が分かりません。
鈴置:確かに、日本にいると分かりにくい。韓国に今時点で実害がないのは事実です。韓国側や箱田論説委員が言う「国産化に成功した」からではなく、「日本が輸出規制をしていない」からですが。
日本は「横流し」が疑われる対韓輸出は厳しく監視し始めましたが、まともな取引は認可しています。日本政府が実施しているのはまさに「輸出管理の強化」であって、韓国政府や箱田論説委員の言うような「輸出規制」ではないのです。
――では、いったい、なぜ?
鈴置:現段階で韓国に実害はない。しかし、米中関係が悪化する中、日本が本当の「輸出規制」に乗り出す可能性が増したからです。そうなれば韓国の半導体産業は壊滅の危機に瀕します。
――米国がそこまでするものでしょうか?
鈴置:ええ、少し前までならしなかったかもしれません。でも今や、米国は中国に勝つためにはなりふりを構わなくなりました。ことに、主戦場に半導体産業を選んで、露骨な囲い込みに動いています。
それに韓国が協力しなければ、米国は日本の「輸出規制」を使って、韓国の半導体産業を締め上げる可能性が出てきました。その布石とも見られる事件が起きたばかりです。
9月23日、米政府は世界の半導体関連企業に対し、保有技術の水準、顧客別の売上高、在庫などの情報を提出するよう求めました。対象企業はTSMC、サムスン電子、SKハイニックス、アップル、インテルなどに加え、GMやフォードといった自動車メーカーも含まれています。「45日以内」と期限も切っています。
全文はソースで
https://www.dailyshincho.jp/article/2021/10180559/?all=1&page=1
Source:脱亜論
【鈴置解説】「日本の輸出規制が失敗」は大ウソ 「韓国の国産化が失敗した」が本当