01.15
タイ映画「今日の海が何色でも」の特別映像&監督コメント&イラスト&推奨コメントが解禁
第 19 回大阪アジアン映画祭で上映され話題となった、タイ映画『Solids by the Seashore(原題)』が、『今日の海が何色でも』の邦題にて、2025 年 1 月 17日(金)より、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開される。
タイ映画「今日の海が何色でも」監督インタビュー~環境問題やムスリム女性に寄り添うGLを超えた人間愛
本作は、タイ南部の海辺の町でふたりの女性が出会い、自然と惹かれあっていく様を、環境問題をテーマにしたアートを交えて、美しく映し出した必見作。第 28 回釜山国際映画祭ニューカレンツ部門では「人間と人間、人間と自然をめぐるさまざまなテーマを、柔軟な姿勢で明確に提示している。人間と自然だけでなく、時間の流れ、伝統と変化、ミクロとマクロを映像で繊細につなぎ、不確かな未来への想像をかきたてる」と称賛され、NETPAC 賞(最優秀アジア映画賞)と LG OLED New Currents 賞をダブル受賞した。
タイは国民の 95%が仏教徒だが、本作の舞台であるタイ南部にあるソンクラー市は、マレーシアとの国境に近く、タイでは少数派であるイスラム教徒が多い場所。主人公シャティも、髪をヒジャブで隠すのが当たり前である保守的な家庭で育ってきた。ある日シャティは、その町で防波堤をテーマにした美術展を開くために都会からやって来た金髪のアーティスト、フォンと出会う。一見対照的だが、お互いを知れば知るほど惹かれあっていくふたり。そして、アイデンティティへの葛藤が、宗教感や環境問題など、様々な背景と隣り合わせに描かれていく……。
今回解禁する特別映像は、主人公シャティが出会ったフォンという人物の何気ない魅力がふんだんに詰まった場面を本編の中から数か所切り出したもの。雨が降る外の景色を眺めながら窓辺で煙草を燻らし、ゆっくりと振り返りこちらを見て少しだけ微笑むフォン。肌が見えるショート丈の水色シャツにデニムパンツをあわせ、ひとりで観光し大きな口を開けて食べ歩きするフォン。夜の街中で踊ろうと誘うフォン。本作の主人公シャティはイスラム教徒の家に生まれ、今までかごの中の鳥のような抑圧された生活を送って来た。そんなシャティにとって、フォンという存在はあまりに新鮮で、自由の象徴にも見えるのだろう。フォンの魅力には男女関係なく「惚れてまうやろ」と言わずにいられないはず。
本作が長編劇映画デビュー作であるパティパン・ブンタリク監督は、本作の前に手掛けた環境ドキュメンタリーで取材した、ソンクラー市のピーラ市長が暗殺されたことをきっかけに本作を制作。ピーラ市長は政府による防波堤建設に反対していたのだという。そこに、「映画監督や社会活動家としての(自身の)背景、偏見との出会い。男性性にまつわる有害な価値観を体験したこと。そして幼少期に祖父母と過ごした記憶。それぞれの闘いを共有した友人たちの物語も織り交ぜました。二人の関係を恋愛と捉える人もいれば友情と捉える人もいる。わたしはジェンダー関係なくフィーリングがあう二人として描きました」とコメントしている。
また、本作をいち早く鑑賞した、野原くろ(漫画家)、児玉美月(映画文筆家)、福冨渉(タイ語翻訳・通訳者)、東紗友美(映画ソムリエ)、ナイトウミノワ(映画ライター・アクセサリー作家)より推奨コメントが到着。漫画家・野原くろ(「ミルク」、「キミのセカ」、「玄太はオレが好き」など)からは、描き下ろしイラストも到着した。
ヒューマントラストシネマ渋谷では、本イラストを使用したポストカードを先着特典としてプレゼント予定(数量限定。なくなり次第終了)だ。
推奨コメント(順不同、敬称略)
野原くろ(漫画家)
選んだ色を纏って生きていけたなら、あるいは脱ぎ捨てられたなら、世界はきっと美しい。
抗っている人にも、受け入れている人にも、寄り添ってくれる、やさしい映画でした。
児玉美月(映画文筆家)
お互いにないものを持ち寄るふたりの女性たち。
彼女たちが出会ったことを祝福するかのような海の眩さ。
彼女たちしか知らない、秘められた夜の海の暗さ。
『今日の海が何色でも』はささやかな物語かもしれないが、
永遠に寄せては返す波のようにその美しさが心に残る映画でもある。
福冨渉(タイ語翻訳・通訳者)
タイ世界とイスラーム世界の交わる場所、ソンクラー。
人間と自然、個人と信仰、性的アイデンティティと異性愛の規範が、岸と波と防波堤のように侵食と再生をくりかえす。
みぎわで起こるそんな変化に翻弄されるシャティとフォンは、水に身を任せることで、自分であることを保とうとする。
透徹した映像と物語の向こうに、変わり続ける変わらないもののかたちが見えてくる。
東紗友美(映画ソムリエ)
ありふれた表現を否定し、新たなフェーズへ進む美しき野心作。
人間関係だけでなく、自然の分子が物語に溶け込むことにより深みが生まれる。
効率優先の現代社会に、時間をかけて完成を待つ”心”が映し出されたアート。
直接的に愛を語らずとも、2 人が過ごした時間の流れが感じられる。
海辺の街で、少女のように惹かれ合うその姿は時に幼くもあり、そして同時に完全な姿だった。
波のように儚くも力強い美しさを放っていた。
ナイトウミノワ(映画ライター・アクセサリー作家)
海風にあたりながら静かに言葉を交わすふたり。
寄せては返す波に想いを乗せて、この気持ちが消えぬように、この海がいつまでも美しくあるように。
祈りにも似た、ささやかな恋心。
2025年1月17日(金)より、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開
今日の海が何色でも
監督・脚本:パティパン・ブンタリク(初長編監督作品)
出演:アイラダ・ピツワン、ラウィパ・スリサングアン
2023 年/タイ/タイ語・南部タイ方言/93 分/1.85:1/カラー/5.1ch/映倫区分「G」
原題:ทะเลของฉัน มคี ลืน่ เล็กนอ้ ยถงึปานกลาง /英題:Solids by the Seashore/日本語字幕:塩谷楽妥
製作:Diversion / 配給:Foggy / 配給協力:アークエンタテインメント
【STORY】
タイの南部の町ソンクラー。かつて美しい砂浜があったが、高潮によって侵食され、現在は護岸用の人工の岩に置き換えられている。その町の保守的なイスラム教徒の家庭で生まれ育ったシャティは親に結婚を急かされていた。しかしシャティは親が決めた相手と結婚させられることに疑問を感じていた。ある日シャティは、防波堤をテーマにした美術展のためにやって来たビジュアルアーティストのフォンと出会い、彼女のサポートをすることに。一見全く正反対に思えたふたりだったが、お互いを深く知れば知るほど惹かれ合っていき……。
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