11.06
<超望遠レンズ撮影>北朝鮮の水害復旧現場は今(1)命綱もなく高所で働く人々、男も女も大量動員(写真7枚)
7月末の集中豪雨によって大きな被害のあった北朝鮮北西部を10月中旬、中国側から撮影した。鴨緑江下流域の広いエリアでは、目視では確認しきれないほどのアパートが建設中だった。北朝鮮の官営メディアが5日に公開した写真によると、数十棟を優に超えるようだ。その現場を超望遠カメラでのぞくと、足場の不安定な高層の建設現場で、軍人ら動員された大量の人員が十分な安全装備もない状態で作業にあたっている姿が見えた。(洪麻里)
◆砂利、ブロック、排水管…大量の資材
7月末の大雨で、鴨緑江流域は下流を中心に甚大な被害を被った。死者数は1000人を超えたという報道もあったが、正確な数は定かではない。北朝鮮北部地域に居住する協力者を通じてアジアプレスが取材したところ、行方不明者や死者が多数発生したほか、家屋や農地が流されたり、線路の崩壊により列車が止まったりする被害が確認されていた。
広範囲が浸水した鴨緑江下流の平安北道(ピョンアンブクト)新義州(シニジュ)市の河岸には、工事現場に不可欠な砂利やブロック、排水管が大量に積まれていた。車両で各現場まで運ぶものとみられる。
◆多数のアパートを同時に建設中
新義州市に位置し、鴨緑江最大の中州である威化島(ウィファド)では、大規模な建設作業の真っ只中だった。目視する限り少なくとも数十棟のアパートが同時進行で建設されている。ひとつひとつの建物を超望遠カメラでズームすると、最上階部分で100人近い人々が固まって作業をしていた。
中には15階建てのアパートもあった。大多数はヘルメットを着用している人もいるものの、命綱のような安全装置は確認できない。足場が不安定な高所に大量の人々がひしめき合い、いつ事故が起きてもおかしくないような現場だ。
服装や階級章などから、軍人や突撃隊、青年同盟などの他に建設関連の企業からも動員されていることが確認できた。女性も少なくない人数が動員されていた。銃を携行した国境警備隊の姿も見られ、作業員たちが中国との国境に近づかないように「検閲官」の腕章をつけて監視にあたっていた。休憩中の労働者たちからは一様に疲れた表情が見て取れた。
※突撃隊:国家的な大きな建設プロジェクトに動員される建設労働部隊のこと。職場や党員などから選抜される。
※青年同盟:正式名称は「社会主義愛国青年同盟」。高校にあたる高級中学の生徒、大学生から概ね30歳までの勤労青年までを組織する労働党傘下の青年組織。
※写真は北朝鮮メディアのものを除いて、すべて平安北道新義州市威化島。2024年10月、中国側から撮影アジアプレス
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Source: アジアプレス・ネットワーク