05.30
監修は外国人アルバイト。話題になった、すかいらーくの「採用サイト」の“その後”。本気で取り組む、外国人スタッフの育成とは
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昨年、ファミリーレストランの「ガスト」や「バーミヤン」を運営する「すかいらーくグループ」の外国人向け採用サイトが、SNSで「すごい」と話題になった。
レストランで多くの外国人スタッフが働く中、外国人向けの採用サイトを分かりやすくリニューアルし、「バズった」のだ。
サイトでは、日本語を勉強中の外国人にも分かりやすい「やさしい日本語」を用い、写真や動画も多用するなどの工夫を凝らしている。
実はすかいらーくでは、採用だけでなく、マニュアルの多言語化や、外国人スタッフ向けの研修などにも力を入れている。
採用サイトのリニューアルから1年。さらに強化している、すかいらーくでの外国人採用・育成の取り組みを取材した。
「バズった」やさしい日本語の外国人向け採用サイト
話題となった外国人向け採用サイトのトップには、「いっしょにはたらきませんか?」との言葉と、スリランカ人スタッフの写真が並ぶ。
ふりがなが振られた「色んな外国人の方が働いています」という言葉の下には、外国人のスタッフへの研修の様子の動画や、外国人スタッフが働く様子の写真。スタッフの写真には、ベトナムや中国など、それぞれの出身国の国旗が添えられた。
異国で働く上での不安を払拭してから応募できるよう、1ヶ月で最大2万円まで交通費が支払われることや福利厚生についても明記している。
来日したばかりの外国人留学生などにも分かりやすいよう、採用サイトでは「やさしい日本語」を使用した。
「やさしい日本語」とは、日本の言葉に不慣れな外国人などに対して使われる、シンプルで分かりやすい日本語だ。より簡単な言葉や理解しやすい文法、ひらがなのルビを用いて説明している。
さらに、英語や中国語、韓国語、ベトナム語でもサイトを表示できる。
外国人向けの特集ページは採用強化の一環として2022年に開設され、2023年5月にリニューアルした。
リニューアル時には、外国人のアルバイトスタッフらにサイトを見せてヒアリングし、改善すべき点など意見を聞いた。
結果、リニューアルでサイト閲覧数は増加し、SNSでも話題になった。メディアにも取り上げられた時には、リニューアル公開時の4倍の閲覧数があった。
外国人の応募者からは「ウェブサイトがわかりやすかった」という声が寄せられているという。
「外国の方にもやさしい職場に」多言語化や育成も強化
現在、すかいらーくのファミリーレストランでは、約2000人の外国人が働いている。特に、新宿や池袋など都心部の店舗では、外国人スタッフの割合が高い。
国籍は、中国やネパール、ベトナムが多く、次いでスリランカや韓国出身者も多い。
新型コロナ禍では、留学生が帰国したり、新規に入国できなくなったりして、一時期は外国人スタッフ数も半減したが、その後はコロナ禍前と同程度まで増加している。
外国人スタッフもより働きやすい職場を作ろうと、契約書やマニュアルの多言語化も進めた。マニュアルを動画で見られるアプリがあり、英語や中国語での説明もある。
同社の人財本部人財採用グループ クルー人事採用チームリーダーの芝山英也さんは、そのような取り組みの背景にある同社の考えを、こう説明する。
「異国に来て働くのは、不安なことも多いと思います。少しでも不安を払拭し、安心して働いてもらうため、外国の方にもやさしい職場にしたいという思いがあります」
「すかいらーくで働いてよかったと感じてもらい、母国に帰っても身につけたことが生かされるというような、良い影響があると良いなと思っています」
すかいらーくのレストランでは、料理の注文は卓上のタブレットで行い、配膳は「ネコ型配膳ロボ」が担い、会計はセルフレジで済ますことができる。
そのため、日本語会話能力がそこまで高くなくても、ホールで働きやすい環境ができてきている。Iot化やロボット技術の導入を進めてきた同社ならではの強みだ。
「外国人採用インストラクターチーム」 で体制強化
外国人採用を強化するため、2023年4月には「外国人採用インストラクターチーム」を発足した。
ベトナム人、バングラデシュ人、中国人、日本人の4人で構成されるこのチームでは、外国人に特化した採用や面接、研修などを担当している。
日本語学校を訪問してアルバイト募集のポスターを貼ったり、外国人を対象にした集団説明会を開いたりするほか、集団研修、フォローアップなどのサポートまで行う。
発足時からこのチームで働くバングラデシュ出身のハサン・モハンマドさん(31)は、学生時代にガストでアルバイトを経験し、その後、正社員となった。
充実した研修制度などから、モハンマドさんのように、留学生時代にアルバイトとして働き、正社員試験を受けて長く働く外国人が毎年数名いるという。
同社は海外展開にも力を入れているため、正社員化した人の中には、マレーシア店出店の際に、現地に駐在という形で現地に派遣された人もいた。
大学生の頃から海外で働きたいと考えていたモハンマドさんは、2016年春に来日。日本語学校に通った後、専門学校在学中にすかいらーくと出会った。
アルバイトとしてガストで働き、日本での就職を考えていた時期に、日本人スタッフから、「やってみない?」と正社員試験への挑戦を打診された。
試験に見事合格し、店舗で3年間、アシスタントマネージャーを経験した後、外国人採用インストラクターチームへの異動の声がかかった。
現在では、面接などの採用活動だけでなく、集団研修なども担当している。
(動画:市が尾トレーニングセンターでの外国人スタッフ向け研修の様子。サムネイルの中央がモハンマドさん)
2023年4月に開設された、市が尾トレーニングセンター(神奈川県)では、モハンマドさんも外国人スタッフへの集団トレーニングを担当。15カ国以上の出身国の多様なスタッフが初期研修を受けた。
モハンマドさんは、集合研修は「外国人スタッフ同士がつながる場にもなっている」とし、外国人に寄り添う育成制度について、こう話した。
「日本で初めて働く人も多いため、何をすればいいかも分からず、はじめは不安が多い。日本語も、働き始めて最初の1カ月は理解が難しいかもしれません。外国人クルーへのサポートはとても大切だと思います」
研修では、モハンマドさん自身の留学時代の経験も踏まえた上で、実質的な仕事だけでなく、日本文化や習慣、留学生活などについても説明し、仕事を含め、日本での暮らし全般についてもアドバイスしている。
日本語学校や専門学校、大学で学ぶ留学生が多いため、多くの人が日常会話程度の日本語はできる。そのため、外国人向けの面接や研修の際も、基本的にはやさしい日本語を使い、入り組んだ説明の際は、英語などで対応する。
モハンマドさんも留学生時代、日本語勉強中の身として店舗で働いた経験があるからこそ、アルバイトとして働き始める留学生の不安を理解している。
逆に、外国人を初めて雇う店舗に対しては、外国人採用インストラクターチームから日本人クルーに、どう教えれば外国人にとっても分かりやすいかなどのアドバイスをすることもある。
増える外国人労働人口、「サポートさらに必要に」
外国人スタッフが働く上で、困りごとがあった時にすぐに対応できるように、同社は「グローバル人財相談窓口」も設置した。
勤務に関しての相談や日本での生活に対しての不安がある場合、フリーダイヤルを設けて相談することができる。
外国人クルー以外にも、外国人スタッフがいる店舗の店長などがビザの相談で問い合わせることもあるという。
政府の統計によると、日本で働く外国人の数は204万8675人で過去最高を更新している。(2023年10月末時点)
現在、どの業界も人手不足に悩んでおり、外国人採用を強化している企業も増えている。
モハンマドさんは「日本で働く外国人が増える中、すかいらーくで行っているようなサポートはさらに必要になってくると思います」と話した。
すかいらーくでも引き続き今後は、地方での外国人採用に力を入れていく。
首都圏など都心部の店長は外国人を積極的に採用しているが、まだ外国人採用が進んでいない地域もあるという。地域差があるため、地方でも採用や育成を強化していく方針だ。
<取材・執筆=冨田すみれ子>
Source: HuffPost