05.27
目と耳が不自由な小型犬のシーズーを警察が射殺。隣家に迷い込んだとの通報で出動「犬を助けてもらうために呼んだのに」
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アメリカ・ミズーリ州で、目と耳が不自由なシーズーが警察によって射殺される痛ましい出来事があった。小型犬が裏庭に迷い込んできた隣家が通報。通報時に危険は感じないと伝えたが、現場にやってきた警察官が複数回にわたって小型犬めがけて発砲したという。
警察官の発砲について、スタージョン市は「警察官は出動時に入手できた情報に基づき、権限の範囲内で行動した」と擁護した。
ABC17ニュースが入手したボディカメラの映像には、5月12日夕、市内の民家の裏庭でよろよろと歩く1匹のシーズーに向かって繰り返し発砲する警察官の姿が映っている。テディと名付けられた5歳のシーズーで、目が見えず、耳も聞こえない障害があった。
テディの飼い主であるニコラス・ハンターさんはひどく取り乱しながらも、ハフポストUS版の電話取材に「途方に暮れています。まだ実感が湧きません」と語った。
テディはハンターさんが外出中に誤って自宅からさまよい出てしまい、近所の家に迷い込んだとみられる。
自宅庭に小型犬がいることに気づいた家主は、迷子だといけないと思い、市に連絡を入れた。家主が撮影した水飲み容器の横に穏やかそうに座るテディの写真が、市の公式Facebookで公開されている。
今回の事案についてメディアが取り上げる前に投稿されたものとみられる。
家主は報復される懸念から匿名を条件にハフポストの取材に応じた。「犬は私が用意した水を飲みました。腕や足を舐められただけで、危険はまったく感じませんでした」と話した。
外出先でテディのことを聞いたハンターさんは、急いで隣家に駆けつけた。
テディへの発砲について尋ねたハンターさんに対し、警察官は犬を放し飼いにしたとして違反行為を指摘してきたという。さらに、テディを射殺した理由についても口にし、「公共への脅威だからではない。犬自身が怪我を負っている、あるいは捨て犬のように見えたからだ」と述べたという。
警察官による説明は続いた。「怪我をしているように見えたので、殺すことが人道にかなっていると判断した」。
ハンターさんによると、警察官はテディの見た目や動きが変わっていたことが判断の根拠だと話したという。
これに対し、ハンターさんは「テディは目が見えず、耳も聞こえないため、頭を横向きにし、変わった歩き方をするんです。神経にまつわる問題を抱えていて、それが原因で盲ろうになったのです」と説明している。
市は5月23日に声明を出し、警察官の行動を支持するとした。市として通報内容とボディカメラの映像を確認したうえで、犬が市民に危害を加えることを防ぐため「警察官は権限の範囲内で行動した」と考えているとコメントした。
市は「犬は奇妙な動きを見せた。このことは、犬自身に負傷または病気の可能性があるという通報内容に一致している」。これよりも前に出した別の声明では、警察官はテディが狂犬病に感染している可能性を疑ったと説明していた。
警察官に非はなかったとする一方で、市は「二度とこのような不運な事案が起きないように」とし、警察官などの市職員には地元の動物管理施設で教育と訓練を受けさせることを明らかにした。
通報した家主はハフポストの取材に「通報は犬を助けてもらうためでした。攻撃的でも脅威でもなさそうだと何度も伝えました」と強調し、「もし脅威があるとすれば、それは銃を持った警察官の方です」と語った。家主はケビン・エイブラハムソン市長宛てに手紙を書き、テディを射殺した警察官の職務を解くよう要求した。
市長から家主のところに電話があったが、苦情を受け付けたという以上の中身はなかったという。
ハンターさんは「市が非を認め、同じことが別の家族に起きないように対策を打ってもらいたい。私には子どもがいません。私にとって愛犬たちが家族なのです」と話している。
市のFacebook投稿には、発砲した警察官や市の対応に苦情が殺到。これを受け、5月25日、エイブラハムソン市長は同日付で市長職から退くことを市に伝えた。
後任の市長代行は26日、「ボディカメラの映像を目の当たりにし、愕然としました。(発砲した)警察官の行動は、市民や市議会議員の価値観や信念に反するものです。郡保安官に捜査について相談するべく動いているところです。当該の警察官はすでに休職中で、追って通知があるまで休職させます。市議会で警察官を含む関係者の人事について話し合う予定です」とコメント。
テディについても言及した。「テディの飼い主に個人的にではありますが、哀悼の意を表します。私が何をしようとも、テディが戻ってくることはありません」と悲しみの気持ちをつづった。
ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。
Source: HuffPost