03.20
「イスラエルの虐殺に加担しないで」ファナックに対する署名活動に賛同広がる。産業用ロボットの世界4大メーカーの一つ
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イスラエルによるパレスチナ自治区ガザ地区への攻撃が苛烈を極めている。
ガザ保健省によると、3月13日時点で死者は3万1272人にのぼるという。14日にはガザ地区北部で食糧支援を待っていた市民が砲撃された。少なくとも20人が死亡し、155人が負傷するなど、人道支援を待つ市民の犠牲が相次いでいる。
15日にはイスラエルのネタニヤフ首相が多くのパレスチナ人が身を寄せるガザ南部・ラファへの地上侵攻の作戦計画を承認したと報じられ、緊迫した状態が続いている。
この状況の中、「イスラエルの虐殺に加担しないで」とBDS(ボイコット・ダイベストメント/投資引き上げ・サンクション/制裁)運動が日本でも広がりを見せている。
そのうちの一つが、産業用ロボットの世界4大メーカーの一つ「ファナック」に対する署名活動だ。呼びかけ団体のBDS Japan Bulletinは、ファナックの産業用ロボットがイスラエルの武器製造に使われていると主張し、イスラエルや欧米の軍需企業への製品やサービスの提供を停止するよう求めている。
ロンドンを拠点に活動する日本生まれのシンガーソングライターのリナ・サワヤマさんもインスタグラムのストーリーで署名を呼びかけるなど賛同が広がっており、3月19日時点で2万2096筆が集まっている。署名は3月21日まで行う予定だという。
呼びかけ団体の主張は?
グローバルで署名活動を呼びかけたパレスチナBDS民族評議会のコーディネーターの一人、Shir Heverさんはハフポストの取材に対し、ファナックのロボットがイスラエルの武器製造に使用されている可能性を示す写真や動画を示した。
「イスラエル軍の戦車や戦闘機のエンジンを製造しているBSEL社のホームページの写真には、ファナックのロボットが写り込んでいます。同様に、155ミリ榴弾砲を製造するイギリスの軍需企業BAEシステムズのホームページにもファナックのロボットが写っています」
さらに間接的な証拠として、3月3日に掲載されたイスラエルの軍事企業エルビット・システムズの求人の募集要項に「兵器を製造するエンジニアとして働きたいなら、ファナック製品の(取り扱いの)経験が必要」だと書かれていると指摘した。
また、ウォール・ストリートジャーナルが2024年1月24日に投稿した、「ウクライナとイスラエルで需要が高い武器」として155ミリ榴弾砲を解説する動画も、ファナックの製品が武器製造に関わっている可能性を示唆しているという。
工場内で撮影されたとみられるシーンで、ファナックのロゴが入ったロボットアームが、熱した155ミリ榴弾砲のパーツを持ち上げている様子が窺える。
ファナック「軍事用途の販売はしていない」と説明
イスラエル軍事企業に自社の製品・サービスを販売した事実があるか。ハフポスト日本版の取材にファナックは以下の回答をした。
質問)エルビット・システムズやIAIなどのイスラエル軍事企業にファナックの製品・サービスを販売した事実はありますか。契約内容と期間を教えてください。
回答)
・当社がイスラエル向けに製品を販売する場合は、日本の外国為替及び外国貿易法(外為法)に従い必要な取引審査を行い、ユーザの事業内容および用途確認を行い、軍事的な用途である場合には、販売を行わないこととしています。
・外為法等の関係法令上必要な、過去5年の輸出記録は保存していますが、これらを確認したところ、当社および当社欧州子会社から、イスラエルのElbit Systems社, IAI 社, BSEL社, Rosenshine Plast社, AMI社に対しては、軍事的な用途の販売は行っていません。そして、当社および当社欧州子会社からその他のイスラエル企業に関しても、軍事的な用途である場合の販売は行っていません。
質問)軍事以外の用途で製品・サービスを販売した事実はありますか
回答)
個社名は開示することはできませんが、同様に過去5年の記録を確認したところ、掲載された5社のうち1社に対して、当社の電動射出成形機(ロボショット)1台を、民生の医療目的で、注射器の一部を成形する用途で使用することを確認したうえで、販売した記録がありました。それ以外に販売した記録はありません。
質問)欧州の子会社については?
回答)
当社欧州子会社は、エンドユーザが決まっていない時点で、商社やシステムインテグレータにロボット等の製品を販売することがあり、商社やシステムインテグレータからの情報によりイスラエルの顧客が見つかった段階で、必要な取引審査を行い軍事的な用途で使用されるかどうかを確認しています。前述のとおり、過去5年に輸出したものについて、軍事的な用途であったものはありませんでした。日本から輸出した後の対応は、輸出先の国の輸出管理法令等に従って、取引先が適切な管理を行っているものと認識しており、取引先の機密事項でもある最終的な顧客がどこであるかを随時知ることはできていません。しかし、販売する際には、大量破壊兵器用途には使用しないよう、商社やシステムインテグレータまたはエンドユーザに求めています。
質問)ファナックのイスラエル支社であるFANUC Automation Israel LTD は、業務内容として「CNC、レーザ、ロボット、ロボマシンの販売とサービス」などを挙げています。これらの製品が軍事品・武器の製造に使われた可能性はありますか。
回答)
ファナックイスラエルで製品の販売またはサービスをする場合は、軍事的用途か否かというユーザおよび用途確認を行っており、販売またはサービス時に軍事品・武器の製造用途であることを確認できたにも関わらず販売またはサービスを行ったという記録はありませんでした。
質問)アメリカのジェネラル・ダイナミクスやイギリスのBAEシステムズなど米英の軍需企業に製品・サービスを販売した事実、また、製品やサービスが米英の企業で軍事用品を製造するために使用されている事実はありますか。
回答)
アメリカ、イギリスに対する輸出については、外為法上、グループA国という分類に該当し、経産省からの輸出許可を要する一定の高性能品以外は、エンドユーザーや用途を確認することが義務付けられておらず、アメリカやイギリスから別の国に輸出される際に、英米の法令により、現地企業が必要な審査を行うこととされています。したがって、当社は、法令上、輸出時に特段エンドユーザや用途を確認することが義務付けられていないものの、大量破壊兵器用途でないことは確認したうえで、当社商品を販売しています
質問)貴社の人権方針には、「当社事業に関連するビジネスパートナー等が人権に対する負の影響に関連している場合には、これらのパートナーや関係者に対し、人権を侵害しないよう働きかけます」などの記載があります。イスラエル軍の軍事行動や植民地化政策に貴社の製品が関わっていると明らかになった場合、人権方針に則ってどのような対応をしますか。
回答)
イスラエルに限らず、人権に対する負の影響に関連しているかどうかについては、事実確認を行う必要があり、それが確認できた場合には、人権方針のとおり、人権を侵害しないよう働きかけることとしています。
「通常兵器に触れていない」と批判も
ファナックの回答に対し、Shirさんは「興味深いのは、ファナックがカテゴリーAとそれ以外の国を区別しているということです。つまり、アメリカとイギリスはカテゴリーAの国であり、ファナックの製品がイスラエルで使われている武器の製造に使われているかどうかのチェックが十分でない可能性があります」と指摘する。
Shirさんは、軍事用途で使用していないと企業側が説明する場合でも、軍民両用(デュアルユース)で製品が使われるケースもあると指摘し、「ファナックは(両用の)可能性の有無まできちんと把握しているのか」と疑問を呈した。
また、長年日本のBDS運動に携わってきた同志社大学人文科学研究所嘱託研究員の役重善洋さんは「欧州法人を通じて商社・システムインテグレータにロボット等を販売する場合、エンドユーザーの情報を把握することはできない仕組みになっているのであれば、大きな問題です」と指摘した。
「しかも、欧州法人経由で販売する際に課される制限は核兵器、生物兵器、化学兵器を意味する『大量破壊兵器用途』で、回答では『通常兵器』の生産のことは触れていません。イスラエルの軍需企業に通常兵器生産の目的で間接的に販売できるということになると思います」
その上で、ファナックは自社の製品が武器製造に使われていると指摘されていることに対し、「もっと向き合うべきだ」とした。
BDS Japan Bulletinらは、集まった署名を3月22日にファナック本社に提出する予定。
2月5日には、伊藤忠商事が子会社を通じてイスラエル軍事大手「エルビット・システムズ」と結んでいた協力覚書の終了を発表。
その理由として「国際司法裁判所(ICJ)による1月26日の暫定措置命令と日本政府がICJの役割を支持する談話を発表した」ことを鑑みたと説明した。
Source: HuffPost