08.23
アフガン撤退は愚かな判断と英ブレア元首相が批判
<アメリカと共にアフガン戦争に参戦した当時の首相トニー・ブレアはアフガニスタンを見捨て、タリバンの復活を許したバイデンの判断を酷評した> 2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロの後、アメリカと共にアフガニスタン攻撃を決断し、自らも軍隊を送ったイギリスのトニー・ブレア元首相は、アフガニスタンから撤退したジョー・バイデン米大統領の決定を「愚か」と評し、「世界中のすべてのイスラム過激派組織が歓声を上げている」と警告した。 ブレアは8月21日、自身が主宰する研究機関のウェブサイトにエッセイを寄稿し、そのなかでアフガニスタンから軍隊を撤退させ、タリバンに政権を奪取されやすい状態に置くという決定は政治によって引き起こされたもので、過去20年間に積み上げてきた成果を台無しにする恐れがあると述べた。ブレアは1997年から2007年までイギリスの首相を務めた。 「アフガニスタンとその国民を見捨てることは、悲劇的で、危険で、不必要であり、アフガニスタンの利益にも、私たちの利益にもならない」と、ブレアは書いた。「世界は今、西側の立場がわからなくなっている。アフガニスタンから米軍を撤退させる決定は、大きな戦略ではなく、政治に基づくものであることは誰が見ても明らかだ」 ブレアはさらに、20年続いた「『永遠の戦争』を終わらせる」という愚かな政治的スローガンを実現するために撤退を決めたバイデンを批判し、「あたかも20年前や10年前と同じ規模の戦争が今も続いているかのような言い方までしてきた」と付け加えた。 最後の1人まで退避を 元労働党党首のブレアは続けて、アフガニスタンをいま放置すればイスラム過激派組織を勢いづかせ、中国、ロシア、イランに有利になるだろうと述べた。そして西側はタリバンに「最大限の圧力」をかけ、「信頼できる現実的な」インセンティブ、制裁、行動のリストを起草するよう強く求めた。 ブレアはまた、イギリスとアメリカには、退避の必要があるすべての人が安全に国外に脱出するまで、アフガニスタンに留まる「道徳的義務」があるとも書いた。 「私たちが責任を負っている人々――私たちを助け、私たちの側に立ち、私たちが彼らの側に立つことを要求する権利を持つアフガニスタンの人々を避難させ、安全な場所を与えなければならない」とブレアは述べた。 「勝手に期限を設けることを繰り返してはならない。私たちには、退避が必要なすべての人が国外に出るまで、現地に留まって尽力する道徳的義務がある。それも義務だから渋々とやるのではなく、深い人間性と責任感から進んで努力するべきだ」 8月15日にタリバンがアフガニスタンの支配権を掌握した後、イギリスとアメリカはアフガニスタンに在留する両国市民およびアフガン人協力者の国外退避を急いでいる。 ===== 米国防総省は8月22日、民間予備航空隊(CRAF)という制度を史上3度目に発動し、民間航空会社6社に退避を支援する準備をするよう求めた。これによりアメリカン航空、アトラス航空、デルタ航空、オムニ航空、ハワイアン航空、ユナイテッド航空が合計18機を提供すると、国防総省は声明で述べた。 バイデンは、米軍がアフガニスタンから完全撤退する期限は8月31日だと断言してきた。だが8月18日のABCニュースのインタビューで、まだアフガニスタン国内にアメリカ人が残っている場合、撤退期限は延長されるかもしれないと語った。まだアフガニスタンにいるアメリカ人の数は明らかではないが、バイデンはその数を1万から1万5000人の間だと述べた。 AP通信が報じたところでは、アフガニスタンには約4000人のイギリス市民と、通訳や運転手などアフガニスタン人協力者約5000人がいる。イギリス国防省は22日、これまでに4000人近くが避難したと述べた。
Source:Newsweek
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