12.11
函館イワシ大量死、原因は「Fukushima」とする根拠なき投稿多数。専門家の見解は
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北海道函館市の海岸で12月7日、イワシなど大量の魚が打ち上げられているのが見つかった。
専門家は「大きな魚に追われた」などの理由を考えているが、SNSでは「福島第一原発の処理水の海洋放出が原因」とする根拠のない憶測が広がっている。
大半は英語の投稿で、「Fukushima water」「Fukushima waste water」などと発信。
アメリカで大量の魚が打ち上げられた映像を用いて、「日本で数万匹の魚の死骸。Fukushima Water」と投稿したアカウントもあった。
さらに、イギリスの大衆紙サイト「Mail Online」も、「福島原発の汚染水放出から数ヶ月、大量の死んだ魚が打ち上げられる」と、処理水と函館での出来事を関連付けるように報じている。
このような根拠のない憶測や発信、報道は、福島への差別・偏見を助長する恐れがあり、拡散には十分な注意が必要だ。
経緯を振り返る
函館市によると、12月7日朝に「大量のイワシが打ち上げられている」と連絡があった。
戸井漁港の西側にある砂浜から日浦漁港にかけて、大量のイワシが打ち上げられており、市などは手作業で回収し、清掃工場で焼却処分している。
推定量は不明で、9日は30トン、10日は40トンを処分した。
市の担当者は「この出来事の2〜3日前に、南茅部地区で大量のイワシが網にかかったという話もあった。おそらく大きな魚に追われて打ち上がったのだろうが、大量すぎていつまでに処分できるか見当もつかない」と話した。
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この出来事は海外メディアも報じているが、XなどのSNSでは、処理水の海洋放出と結びつける英語の投稿を数多く確認することができる。
例えば、フォロワーが300万人を超えるロシア国営テレビ局「RT(ロシア・トゥデイ)」。
12月9日、函館にイワシが打ち上げられている映像と共に、「The cause behind the massive death is still uncertain(大量死の背後にある原因はまだ不明)」などと投稿した。
処理水には言及していないが、コメント欄は「Fukushima」「It’s the Fukushima water」「Fukushima radiactive water released could be one reason(福島の放射能性物質を含む水の放出が一つの原因かもしれない)」といった反応であふれた。
国際通信社「BNO News」も7日、北海道新聞がXで公開した現場の動画を引用して投稿。
これにも、「Hmm… Fukushima nuclear water??」「Fukushima water(中指を立てる絵文字)」「Free Fukushima sushi for everyone」「Godzilla(ゴジラ)」などのコメントが相次いだ。
このほか、X上には「Fukushima. Next well see thousands of dead people(福島。次は何千人もの死者が出るだろう)」と発信する人物までいる。
実際はアメリカでの出来事を…
さらに、フォロワー3.1万人の個人アカウントは12月9日、魚が大量に浜辺に打ち上げられた映像を用いて、「Japan Releases Third Batch Of Fukushima Water」などと発信。
しかし、この映像は函館で撮影されたものではなく、6月にアメリカの「キンタナビーチ」で大量の魚が打ち上げられた時の映像だということがわかった。
この映像は米メディア「FOX26Houston」が6月10日、「Hundreds of fish found dead at Quintana Beach County Park(大量の魚の死骸がキンタナ・ビーチ・カウンティー・パークで見つかった) 」と投稿している。
またハフポスト日本版も記事にしており、水温上昇や曇天などによって「水中に溶けている酸素量が減り、魚が酸欠になったことが要因とみられる」と伝えている。
そもそも処理水は一般的に「Treated water」と表記されており、「Fukushima water」ではない。
ハフポストはこれまで、「Fukushima water」という表記は福島への差別や偏見を助長する恐れがあるという記事を3本発信。
そう表記していた共同通信や毎日新聞といった国内メディアに訂正を促してきた経緯がある。
海外メディアも「福島の…」と報道
SNSの投稿だけではない。
イギリスの大衆紙「Daily Mail」のオンラインサイト「Mail Online」は12月8日、次のような見出しで記事を発信した。
「Thousands of tons of dead fish wash ashore in Japan – three months after the nation released treated Fukushima radioactive water into the sea」
つまり、「数千トンの魚の死骸が日本の海岸に打ち上げられる – 日本が福島の放射能処理水を海に放流してから3ヶ月後」と書いてある。
記事は「福島原発から放出された放射能処理水が地元の生態系に大混乱をもたらしたとの憶測を呼んでいる」とし、「今回の現象は、日本当局が放射性物質を含んだ処理水を海に戻し始めてからわずか3ヶ月後に発生した」などと、関連を匂わすような書き方をしている。
しかし、処理水が「日本の生態系に大混乱をもたらしている」という根拠は何も書かれていない。
国内外で魚が打ち上げられる出来事が発生
福島第一原発の処理水は、2023年8月から放出が始まった。
国際原子力機関(IAEA)も7月、処理水の海洋放出を「人や環境に与える放射線の影響は無視できるもの」とする包括報告書を公表しており、これまでの放出で海水・魚類への影響は確認されていない。
また、処理水の放出前にも日本各地で魚が打ち上げられる事案は起きている。
例えば、新潟県糸井川市で23年2月、海岸の砂浜に大量のイワシが打ち上げられているのが見つかった。
このほか、北海道むかわ町(14年11月)、名古屋市(17年9月)、兵庫県西宮市(19年12月)、三宅島(21年2月)、青森県むつ市(23年2月)などでも確認されている。
国内だけでなく、前述したアメリカ・キンタナビーチのほかに、チリでも21年2月、同時期に数千匹の死んだイワシが河岸に集まった出来事があった。
魚の大量死、なぜ?
では、イワシなどの魚が海岸に打ち上げられる要因として考えられることは何か。
北海道総合研究機構函館水産試験場調査研究部の藤岡崇専門研究員によると、函館で打ち上げられた魚は主にマイワシで、大きさは15〜22センチほどだった。
マイワシは夏場に北海道周辺で過ごし、この時期は本州に向かって南下するといい、その途中で函館の海岸で打ち上がった可能性があるという。
原因はまだわかっていないが、「おそらく冷たい水に魚の群れが入ってしまって動けなくなったか、イルカなど大きな魚に追われて打ち上げられたか」と考えている。
北海道の道南では、2021年12月にも松前町で大量のイワシが海岸に打ち上がる出来事があり、藤岡専門研究員は「最近は数年に1回はこういう出来事が起きている印象がある。これまでと同様、先ほど述べた理由が原因だと推測している」と語った。
Source: HuffPost