09.22
<北朝鮮内部>人民軍隊の異変(1)兵士による強盗、脱走増加 軍紀びん乱で統制に異例の警察力投入
朝鮮人民軍の兵士による窃盗や強盗などの犯罪や脱営が増加し、治安悪化の一因になっていることを受け、9月中旬、異例にも警察などの治安機関が統制に乗り出したことが分かった。北部の両江道(リャンガンド)と咸鏡北道(ハムギョンプクド)の取材協力者が伝えてきた。(カン・ジウォン/石丸次郎)
◆出歩く兵士見かけたら警察に通報せよ
「昨日(9月18日)の人民班会議で、軍兵士が引率の軍官(将校)を伴わずに出歩いているのを見たら、安全局(警察)に通報するよう指示があった。最近、各地で軍人による強盗や盗みが増えた上、兵士の脱営事件も頻発しているので、事件事故を未然に防ぐための対策だそうだ」
両江道に住む取材協力者がこのように伝えてきた。
また咸鏡北道の取材協力者も21日、「軍人の外出を安全局や治安機関が統制することになったと当局の通知があった」と、ほぼ同じ情報を伝えてきた。
軍隊の統制に警察などの治安組織を投入するのは、北朝鮮では異例のこと。本来は「警務兵」(憲兵)の役割だからだ。
その他、部隊から逃げ出した脱営兵が増えているため、病気や栄養失調の治療目的で実家に戻された兵士たちは、脱営兵と区別するために地域の安全局に登録しなければならなくなったという。
「安全員が兵士を取り締まると、いったん警察で拘留して警務に連絡して引き渡している。もう軍人が街を出歩くのは難しいだろう。道では軍官と警察の機動隊が取り締まりを巡ってしょっちゅうもめている」
両江道の協力者はこのように言う。警務だけでは兵士の犯罪を抑えきれなくなったということだろうか。
◆兵士が押し入り強盗して女性撲殺
実際、兵士によってどのような犯罪が起こっているのだろうか?
「咸鏡北道の吉州(キルジュ)郡で、脱営した軍人らが民家に押し入って争いになり、家主の女性が頭を打たれて死亡する事件があったと、吉州から来た女性から聞いた」(両江道の協力者)
「既に除隊した軍人が、兵士のフリをして強盗やタカリをする事件が発生しているので、軍服を着てうろついてる者がいれば通報しろと指示されている」(咸鏡北道の協力者)
◆飢える兵士が犯罪、脱営も多発
軍兵士による犯罪が急増したのは6月頃からだという。これは、新型コロナウイルスに対する防疫措置が緩和されて、それまで民間人との接触を断つために禁じられていた部隊や訓練場、作業場から兵士の外出が可能になった時期と一致する。
また、各地の軍部隊に対する食糧供給が悪化したのも6月頃からだ。
「私のすぐ近所に栄養失調になって一時的に実家に戻っている兵士がいる。所属していたのは黄海北道(ファンヘド)の自走砲部隊だ。その部隊からは脱営者が何人も出ていて、民家に行って盗みを働くので、部隊の当直官が毎晩3回以上見回って、逃げだした人員がいないか点検するほどだったそうだ」
軍兵士による強盗が頻発しているのは、軍部隊に対する食糧など必需品の供給に支障が生じているためだと考えられる。(続く)
※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。
Related Images:
[ギャラリーを表示: www.02.asiapress.org]
Source: アジアプレス・ネットワーク