09.09
タイ注目のシンガーソングライター・COPTER独占インタビュー
コロナ禍前の「タイフェスティバル」に多くのアーティストを送り込んできた「Muzik Move」。タイの音楽シーンに多様性をもたらすレーベルを有し、タイの才能あるアーティストと、日本のアーティストとのコラボレーションやタワーレコードでのCDリリースなど、日本との交流を積極的に行ってくれています。
中でも「BOXX MUSIC」はサマーソニックに出演したことで日本でも知名度を上げた「シンセ・ポップの女王」ことIINK WARUNTORNなど、魅力的なアーティストが所属。タイの音楽が好きな人なら目の離せないレーベルです。
2023年8月2日、「BOXX MUSIC」所属の人気アーティストCOPTERさんが、日本のI love you Orchestraと国内外のR&Bシーンでも活動しているMisato Onoとのコラボレーション作品『Burnout(バーンアウト)』を配信リリース。そのリリースパーティが8月25日に東京都吉祥寺で行われました。
タイランドハイパーリンクスはリリースパーティ前日、下北沢でCOPTERさんを取材。
COPTERさんは、10歳からギターを触り始め、16歳の頃から独学で音楽制作を学び、初めて作った楽曲『IG』を「BOXX MUSIC」に送付。レコーディングに係る全ての事をPC一つで作り上げるというその楽曲センスが目に留まり、デビューが決定したという神童のような方。2019年にデビューして4年にもかかわらず、既に数多くのインディーズアーティストに楽曲を提供しているというから驚きです。
一体どんな方なのでしょうか?
父から日本の話しを聞いていた
ーー日本へようこそ!COPTERさん。日本には来たことはありますか?
COPTER: 日本は初めてです。
ーー今日は下北沢で取材させていただいていますが、下北沢という町の存在は知っていましたか?
COPTER: 全然知らなかったです。でも、実際に来て驚きました。本当にかわいい街ですね。カワイイ(日本語)
ーー(笑)…。でもCOPTERさん自身が下北沢が似合う雰囲気の方ですね。
COPTER:本当ですか?ありがとうございます。実は僕の父は日本で仕事をしてたんですよ。
ーーそうだったんですか?
COPTER:日本のことは父から聞いたことがあるだけです。父の話していた国に来れたことが本当にうれしいです。
ーーお父さんは、日本でのリリースパーティーについて何と言ってましたか?
COPTER:日本楽しんで来てね!って言われました。父が働いていたのは30年も前なんですよ。だから「今の日本を楽しんできてね」とも言っていましたね。
ビジュアルなしで曲がどれだけ受け入れられるか知りたかった
ーー COPTERさんは2019年にデビューしたそうですが、きっかけはなんだったんですか?
COPTER: 僕が初めて作った『IG』という曲を「BOXX Music」に送ったことがデビューのきっかけですね。「BOXX Music」から連絡をもらって、デビューシングルを作ることになったんです。
作る過程で「どんなデビューシングル曲にしようか?」という話になって、僕の失恋の実体験を歌詞にしよう、という話がまとまったんですよ。
ーー失恋の実体験ですかー…(笑)。リアルですね。
COPTER: それがデビュー曲の『เธอบอกว่าฉันไม่ดี(彼女は「僕が悪い」と言った) 』です。
ーーあ、それってYouTubeに上がっていた、かわいいアニメーションのMVの曲ですよね?
COPTER: そうです。
ーーせっかくのデビュー曲なのに、本人が映らないMVってかなりユニークですね。
COPTER: あー…(笑)。デビュー曲のMVに自分を出さないというのは、意図的に考えたコンセプトなんですよね。自分のビジュアルに自信がなかったりとか…。
ーーいや、ぜんっぜんビジュアルは悪くないですよ(笑)。むしろ良いと思いますけど。
COPTER: …(笑)。本当ですか?
でも、その時はまだまだ自分を成長させていきたいって気持ちが強かったんですよね。
デビューは自分を出さない方向でビデオを作りたいとお願いしました。そこからアニメーションを使うことになったんですよね。
僕は自分の曲だけでヒットは可能なのか、ビジュアルなしで僕の曲はどこまで世間に認めてもらえるのかっていうのを試してみたかった。
結果的に成功したと思っています。
常に音楽が流れる家庭で育まれた驚くべき才能
ーー COPTERさんの曲のMVやライブはYouTubeで見てきたんですが、声がクリアで爽やかで聴きやすかったです。でも一番驚いたのは、ギターがびっくりするほど上手いってことなんですよね。ギターはいつごろから始めたんですか?
COPTER: ありがとうございます。
ギターは10歳から触り始めたんですけど、独学です。実はギター教室にも通ったんですけど、先生とうまくいかなくて…(苦笑)。
ーー先生とうまくいかないようなタイプに見えませんが(笑)。
COPTER: (笑)…。
そういうこともあったので、YouTubeで「ギターの弾き方」って検索して、YouTube先生に教わりました。
ーー歌とギターはどちらが先だったんですか?
COPTER: 本当はギターも歌も並行してやっていたんですけど、学生時代にバンドを組む機会があって、ギターの担当でした。その時は自分がボーカルになるつもりはなかったんです。
ーー音楽に目覚めたのはいつ頃ですか?
COPTER: 父も母も、音楽が大好きだったんですよ。家の中でも、車の中でも生活の中でずっと音楽が流れている家庭でした。それが大きいかなと思っています。
自然の流れで、自分もいつか聴いているような曲を演奏したいなあ、と思いました。
タイのアーティスト「The Toys」にインスピレーションを受ける
ーー作曲はギターで完結する人もいますけど、 COPTERさんはデビュー前から レコーディングに関することまで全てひとりで完結できる状態だったんですよね?
デビューする前に機材が揃っている環境って凄すぎるんですけど。
COPTER: あー…それは両親のサポートがかなり大きいですね(笑)。
ギターが欲しい時はお願いしたら助けてもらえましたし、音楽制作用のPCも両親にサポートしてもらいましたし(笑)…。
ーー恵まれていましたね。でもその両親の投資が(笑)天才を産んじゃったかもしれないと。
COPTER:だといいんですが(笑)。 僕はPCが得意なんです。両親は僕が音楽を作るために、PCに没頭しているのを見て「なんで音楽を作るのにPCばかりいじってるのかな?」って思っていたみたいですけどね(笑)。
ーー自分の曲に関係することはすべて自分でやりたいタイプなんですか?
COPTER:実は MV撮影も自分で動画を撮影して、全部自分で作りたいって思うタイプです。
ーー楽曲やMVまで自分で全部完結したいと思わせるような先輩アーティストや、影響を受けたアーティストはいるのですか?
COPTER: 僕に大きなインスピレーションを与えてくれたのは、「The Toys」というタイのアーティストです。彼はタイの音楽シーンを変えた人なんです。一つのPCがあれば、スタジオじゃなくても、どこでも…自分の部屋でも音楽が作れることを教えてもらいました。本当に彼には影響を受けましたね。
ーータイって、まだそんなにシンガーソングライターが多いとは言えないじゃないですか。
COPTER:そうですね。
ーーそれなのに、デビュー前から全部一人でできます、という COPTERさん って凄い才能だと思うんですよね。
COPTER: ありがとー(日本語)。
自称「コロナ世代のアーティスト」
ーー2019年デビューだと、デビューしてすぐコロナ禍の自粛期間。コロナ禍が落ち着いて、ライブができるようになって、日本のアーティストとのコラボ制作やライブもあってと、浮き沈みがとても激しかったと思います。今、もの凄い勢いで色々なことが動いていると思うんですけど、振り返ってどうでしたか?
COPTER: 自称「コロナ世代のアーティスト」って言ってるんですけど
ーーすごいキャッチフレーズですね(爆笑)…。
COPTER: (笑)…。いい経験をさせてもらったなあって思っています。デビュー曲をリリースしたばかりの時に、新型コロナウィルス感染症拡大になりましたからね。僕はどんなことがあっても、状況に合わせることは得意としているので(笑)、問題はありませんでした。
日本のアーティストとの初ライブはぶっつけ本番!
ーー今回はリリースパーティーでの来日ですよね。
COPTER: そうです。
ーーI love you OrchestraというバンドとMisato Onoさんと一緒に『Burnout(バーンアウト)』という曲を制作したそうですが、これはどんな出会いから始まったんですか?
COPTER: BOXX Musicから「海外のミュージシャンとコラボしてみない?」って言われていたんですが、I love you OrchestraとMisato Onoさんからオファーがあったというのもあって、制作が決まりました。僕にとっても、大きなチャレンジになりましたね。
ーー楽曲はどのように作っていったのでしょう?
COPTER: 100%オンラインで制作しましたよ。むこうからデモを送ってもらって、それに僕がギターを弾いて、フィードバックして…そんなやりとりを何度も何度も繰り返しました
ーーえ?と言うことは、リリースパーティーは、そこで初めてセッションするということですか?
COPTER: はい(笑)。明日が初めてのセッションです。ぶっつけ本番なので、今からドキドキしていますよ。
ーー今度は誰とコラボレーションしてみたいですか?
COPTER: 日本のアーティストだとiriさん。大好きです。コラボしたいですね~。
故郷のコーンケーンは恐竜の町。イサーンの方言もかわいい
ーーコプターさんはコーンケーン出身なんですよね。今はもうバンコクに住んでいるんですか?
COPTER: バンコクに引っ越して3年目です。それまでは生まれてからずっとコーンケーンにいました。
ーーコーンケーンはどんな町ですか?
COPTER: コーンケーンでは恐竜が発見されているんですよ。世界的にもコーンケーンにしかいない恐竜の化石が発見されて、ミュージアムもあるほど有名なんです。
※スマートフォンで恐竜のオブジェが鎮座している道路の写真を見せてくれる
COPTER: コーンケーンはイサーン地方なんですけど、イサーンは土壌がとても古いので、タイの中では一番発掘調査で重要な化石や貴重な遺跡が出ることもあるんです。学者にも有名なので、恐竜が好きな人はぜひコーンケーンに行ってみてほしいです。
ーー COPTERさんが好きなタイの場所はやっぱりコーンケーン?
COPTER: やっぱりコーンケーン(笑)。自分の生まれ育った場所だから縁があるし、コーンケーンにはイサーン独自の方言があって、それがとてもかわいらしくて、魅力的なんですよ。
日本の皆さんへ
ーー今回初めて COPTERさんを知る方も多いと思うのですが、日本の皆さんにメッセージをお願いします。
COPTER:COPTERの音楽を聴いてもらいたいなって思います。SNSもフォローしてくれるとうれしいな。
取材を終えて
音楽的天才は堅物かもしれないと身構えていたところ、おっとりとした雰囲気と、優しい語り口調、爽やか好青年という雰囲気のCOPTERさん。多くのファンが付くのも納得です。
しかし、やはり音楽に対しては少年時代から「ギターの先生と合わなかった」というほど、自分のスタイルや感性を曲げない芯の強さを持っていました。
才能だけではなく、自分を信じる強い意志がなければ、成功は難しいのかもしれませんね。
いただいたCDやYouTubeで彼の楽曲を聴くと、澄んだ声と、まるで呼吸をしているような本人との一体感あるやわらかなギターの旋律が非常に心地よく、癒されます。
また、ジャンル問わず何でもできてしまうその才能は、今後多くのアーティストをプロデュースし、更にタイの音楽業界を変えていくような存在になるのでは?
注目の存在です。
【取材・文:吉田彩緒莉】
COPTER
https://www.instagram.com/coptersmurf/
https://twitter.com/coptersmurf
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