2022
06.29

<北朝鮮内部調査>市場から経済の現状を見る(2) コロナで食品需給は大混乱 10倍超の大暴騰も

国際ニュースまとめ

(参考写真)仕入れた中国製の食品を路上で並べている女性。2013年10月両江道にて撮影アジアプレス。

<北朝鮮内部調査>市場から経済の現状を見る(1)消えた中国製品…石鹸、歯ブラシ、衣料品は国産品が流通

アジアプレスは4月中旬に北朝鮮北部2都市の公設市場で詳細な市場調査を実施した。その報告の2回目は基礎食品についてである。金正恩政権は新型コロナウイルスの国内流入を防ぐとして中国からの輸入を強く制限。基礎食品の中には価格が10倍以上に跳ね上がったものもあった。(石丸次郎/カン・ジウォン

◆化学調味料が大暴騰

北朝鮮国内で生産できないか、ほぼ中国産品に市場を占有されてきた基礎食品に、白砂糖、化学調味料(グルタミン酸ナトリウム、いわゆる「味の素」)、食用油(大豆油)などがある。

化学調味料はパンデミック以前には国産品も流通していたが、4月に調査した両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)市と咸鏡北道(ハムギョンプクド)のA市では中国製品しか販売されていなかった。姿を消したのは、中国から原材料の輸入が止まったためとみられる。

高騰ぶりには驚かされる。化学調味料はパンデミック以前に1キロ当たり1万3000~1万5000ウォン程度だったのが、2021年夏には一時20万ウォンを超えた。4月中旬時点の1000ウォンは約18円だったので、日本円換算でなんと3600円だ。随分値が下がった4月中旬でもパンデミック以前の10倍以上の高値が続いている。

北朝鮮地図(製作アジアプレス)

◆中国産の食品は一時市場から消える

中国産の大豆油も、パンデミック以前に1キロ当たり8000 ウォン程度だったが、一時4万ウォン以上に高騰した。昨年秋に国内で大豆が収穫された後、国内産が市場に出回って値下がりした。

化学調味料も大豆油も、今年1月中旬に陸路の鉄道貿易が再開されて相当量が輸入されて価格は落ち着いている。

白砂糖は、パンデミック以前は1キロ当たり5000~7000ウォン前後だったのが4~5倍に高騰。代替品としてトウモロコシから作る水あめが市場で売られるようになった。

「中国産の食品は昨年までほとんど姿を消していたが、今年初めから、平壌に優先的に入っていったものが地方にも回ってきて販売されるようになった」と、恵山市の取材協力者は説明した。

しょう油と味噌は各地の「穀産工場」と呼ばれる国営工場で生産が続いているが、評判は芳しくない。

「しょう油も味噌も、それっぽい色は着いているがほとんど塩の味しかせずまずい。個人で作ったものや中国産の方がずっとおいしい」と、ある脱北者は言う。

人造肉とは、油を搾った後の大豆カスを固めて乾燥させたもので、タンパク質が豊富で食感が肉に似ている人気食品だ。(続く)

 

<咸鏡北道A市>

品目(1キロ) 産地 価格
白砂糖 中国 23,000
化学調味料 中国 140,000
唐辛子粉 国内 27,000
しょう油 国内 5,200
味噌 国内 3,800
国内 2,000
大豆油 国内 26,000
大豆油 中国 23,000
エゴマ油 国内 55,000
ニンニク 国内 22,000
人造肉 国内 3,800

 

<恵山市>

品目(1キロ) 産地 価格
白砂糖 中国 25,000
化学調味料 中国 160,000
唐辛子粉 国内 30,000
しょう油 国内 6,000
味噌 国内 4,200
国内 2,500
大豆油 国内 28,000
大豆油 中国 25,000
エゴマ油 国内 50,000
ニンニク 国内 28,000
人造肉 国内 3,700

※4月中旬時点の1000ウォンは約18円である。

※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。

 

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Source: アジアプレス・ネットワーク