2022
06.13

<北朝鮮内部>隠されしコロナの実態を探る(2) 都市封鎖を徐々に緩和 外出可能地区から農村に労力動員

国際ニュースまとめ

国境沿いの道路をダンプカーで移動する軍兵士と検問哨所。マスクを着用している。2021年7月に中国側から撮影アジアプレス

<北朝鮮内部調査>隠されしコロナの実態を探る(1) 相次ぐ高齢者・幼児の死亡 判定は発熱の有無だけ 回復者も多数

金正恩政権が新型コロナウイルスの国内感染を5月12日に認めて以来、北朝鮮の多くの地方で都市封鎖=ロックダウンが実施された。市場は閉鎖され、食料や燃料を調達できなくなった住民の間に混乱が広がった。1カ月がたった今、北部地域の都市では一部地区の封鎖解除が始まっている。その実態について取材協力者たちから話を聞いた。(カン・ジウォン/石丸次郎

◆二重マスクで外出可能な地区も

両江道(リャンガンド)の恵山(ヘサン)市は、他地域よりずっと早い5月14日に完全封鎖されて外出が一切禁止された。6月上旬には最新事情を伝えてきた2人(A、B、Cさん)から聞いた。また、咸鏡北道(ハムギョンプクド)のある都市からの報告(Dさん)も紹介したい。

 

――恵山市はいち早く完全都市封鎖されたが、現状はどうか?

A 地区を指定して少しずつ封鎖を解除している。回復者が多い地区から状況を見ながら封鎖を解いていくそうだ。有熱者(発熱者)が多い地域はまだ出られない。まだコロナの流行は深刻だから、具合が悪いことを隠すのは反逆行為だ、些細な症状も報告するようにと防疫所から来て講演もした。

B 私の住む〇〇洞では封鎖が解除されて家から外に出られるようになった。当局はマスクを無条件に2枚以上使えと要求している。アパートから出てマスクをして集まって人民班会議もしている。まだ封鎖されたままの地区が多いし、他所のアパートには立ち入ることもできない。工場や企業所の出勤も停止が続いている。外出できるといっても日光を浴びるくらいしか意味がない。

C 封鎖は緩和されたが、(中国との国境河川である)鴨緑江に近づくことは、以前よりも厳しく取り締まっている。梅雨に備えて堤防工事もしなければならないが先送りになった。中国側から、越境、密輸などを一切させないよう要請があったそうだ。

 

――取り締まりは厳しいままなのか?  

A 取り締まりは続いている。どこか行こうとすると、何の目的で誰の家に行くつもりなのか、必ず警備詰め所で書き込まなければならず、無断で出歩くと防疫法で処罰される。でも、これからは都市封鎖ではなく、感染者だけを隔離する原則に変えるようだ。人民班ごとに歩哨を立たせ、隔離された人は一切動けなくし、感染していない人は移動できるようにするそうだ。

 

――規則に違反する人はいるか?

B 酒を飲んで騒いだり、夜遅くにこっそり外出したりする者もいるし、暮らしが厳しくて泥棒する者も出ている。封鎖期間に出歩く者は反逆者として法的処罰を与えるそうだ。

 

――公設市場は再開されたか?  

A 市場はまだ閉鎖されたままだ(6月10日時点)。6月前半に再開されるという噂がある。街中には、たまに「バッタ商売人」が出ているが、「非常防疫組」が目を光らせているので(商売人も)身動きがとれない。
※取り締まりがあると売り物の包みを抱えて逃げ、場所を変えて商売を再開するゲリラ的なやり方を「バッタ商人」という。

1

2