06.10
「原発・石炭火力ゼロは非現実的」という指摘にどう反論する?志位和夫委員長インタビュー【U30×日本共産党】
7月10日に投開票を迎える参議院議員選挙。若者の政治参加が進まず、未来へ希望が持ちにくいと言われるなか、各政党はどのようなビジョンを示すのか。
U30世代に向けてSNSなどでわかりやすくニュースや社会問題を伝えている「NO YOUTH NO JAPAN」の代表で、ハフポスト日本版のU30社外編集委員を務める能條桃子さんが、各政党にインタビューを実施。政治への疑問や社会に対する不安をぶつけた。
第1回は日本共産党。幹部会委員長を21年務める志位和夫・衆議院議員(67)が取材に応じた。
能條桃子さん(以下、能條):
志位さんに最初にうかがいたいのは日本共産党のグランドビジョンです。党として、もしくは志位さん自身、どういう日本を私たち若い世代やその先の世代に残したいと思っていますか?
志位和夫委員長(以下、志位):
まず、本当の独立国といえる日本をつくりたい、ということですね。日本は主権国家として国連に加盟していますが、本当に独立国なのだろうか、という問題がたくさんあるじゃないですか。
例えば、米軍機が東京などで超低空で訓練をしているのは、日本の国内法が米軍機に適用されない、つまり日米地位協定が不平等という問題があるからです。
また、日本は唯一の戦争被爆国なのに、国連の核兵器禁止条約に入っていません。これは日本と(核保有国の)アメリカとの関係で拘束されているからです。これでは日本は本当の独立国とは言えません。
沖縄の普天間飛行場の辺野古移設反対も含め、共産党の根っこにあるのは日米安全保障条約の廃棄です。日米安保を国民の多数の合意で廃棄して、アメリカとは友好条約を結び、本当の対等・平等の友好関係をつくる。これが大きなビジョンです。
能條:
ウクライナ情勢のなか、安全保障への関心は高まっていますね。
志位:
軍事同盟は力対力の悪循環に陥り、平和をつくりません。ヨーロッパにはNATO(北大西洋条約機構)という大陸間の軍事同盟がありますが、東アジアにはありません。ただ、東南アジアにはASEAN(東南アジア諸国連合)という平和的な話し合いで解決していく共同体があります。このASEANの枠組みを広げ、東アジアに平和をつくっていくことに一番の未来があると思っています。
能條:
内政面を考えたとき、若い世代の中には、日本で子どもを産み育てたいと思ったとしても、不安を超えて絶望している人も多いと思います。それが少子化にも表れていると思うのですが、私たちの世代が日本で暮らしていくうえで、政治は何を解決していくべきだとお考えですか?
志位:
ヨーロッパでは当たり前にあるような暮らしを守るルールが、日本にはありません。例えば、日本は労働時間が年2000時間でドイツより数百時間も長く、過労死の問題につながっています。日本は学費も高いし、男女の賃金格差も年収で約240万円、生涯賃金では約1億円も違います。
能條:
男女間の賃金格差はどうやったら減らせますか?
志位:
賃金格差の実態を企業に公表させることが大事です。そうすれば、あの企業は格差がひどい、就職するのをやめておこう、となるじゃないですか。
政府はずっとこれをやりませんでしたが、今年1月の国会で、岸田文雄首相は私の質問に対し「(男女の賃金格差を)有価証券報告書の開示項目にすることを検討していく」と初めて答弁しました。
賃金格差ゼロの社会が実現すれば、女性の持っているパワーが全面的に発揮され、経済も強くなる。DVの問題も女性が経済的に自立できないことが根っこにあるので、賃金格差をなくすことはとても大事です。
能條:
もう一つ私が重要だと思っているのが、国会議員の多様性です。女性や様々なSOGI(性的指向や性自認)の人、若者などの議員を増やすことについて、共産党のなかではどういう議論がされていますか?
志位:
ジェンダー平等を党の活動としても重視していこうと考えています。共産党員はだいたい男女半々ですが、党の国会議員全体では女性がまだ3割です。今年の参院選比例代表の候補者は、3分の2くらいを女性にして、できるだけたくさん当選させたい。私たちだけではなかなか取り組めなかった問題も、女性が中心になることで、どんどん切り開かれる。LGBTQ当事者の方にも議員になっていただき、みんなが様々な仕事に就ける党づくりを目指しています。
能條:
議員の年齢はどうでしょう。昨年の衆院選後、ある報道では当選者の平均年齢が、共産党は62歳で最も高かったと指摘されました。若い議員を増やす取り組みは進んでいますか?
志位:
それは私たちの大きな課題で、とても痛いところです。昨年の衆院選では、党の議席を伸ばせれば平均年齢は下がったはずでした。女性や若い人を増やす努力をもっとやらなければならないと思っています。
能條:
そこがちょっと気になっていたところで、やはり若い議員が増えないと世代交代も起きません。
志位:
共産党の国会議員でも30代の若い議員が生まれてきて、大活躍している。だんだんと進んでいると思っています。
能條:
次にうかがいたいのは、10代~30代の世代に向けて、共産党は何をしてくれるのか、ということです。私たちのなかでは漠然とした将来不安が漂っています。プライマリーバランス(基礎的財政収支)の議論をみても、次世代が財政赤字というツケを払わないといけないのに、現在も未来も厳しい中で「今」の厳しい状況ばかり優先しているように見えます。
志位:
一番大きな問題は、日本経済がこの20年ぐらい成長していないことです。働く人の賃金が上がらず、むしろ下がっていることが原因で、企業は目先の利益を優先して、賃上げをしてこなかった。ただ日本国内にも、お金はあるところにはあります。
私たちが提案しているのは、大企業の内部留保への課税です。内部留保にはもちろん設備投資など必要なものもありますが、流動的な資金など本来必要のないものがどんどん積み上がって、計466兆円に上っています。
特にアベノミクスによって増えた内部留保に時限的な課税をして、そこから財源をつくり、最低賃金を1500円に上げる。一方で、賃上げをした企業やグリーン投資(環境問題を考慮した投資)をした企業からは税を取らない。そうやって、眠っているお金が世の中に回るようにすれば、日本経済は着実に成長し、好循環をつくることができると考えています。
能條:
確かに賃金が上がらないから結婚ができない、というような状況が若い世代に起きていると思います。
一方で、企業が内部留保を増やす理由の一つに社会保険料の負担があると思います。日本は企業にも福祉の負担を求めていますが、私たちの世代も年金を確実にもらえるのか、「持続可能な社会保障」は実現するのか心配です。
志位:
鍵になるのは、やはり税のあり方です。日本は大企業に対する法人税と富裕層への所得税を下げすぎた。とるべきところからお金をとらないと、持続可能な社会になりません。
健全な形で経済が成長すれば、税収も上がっていきます。社会保障にお金をかけると、財政が苦しくなるという議論になりがちですが、社会保障が充実すれば将来不安がなくなり、みんながお金を使って経済はプラスになるはずです。
人に優しい経済をつくった方が、強い経済になる。いまは人に冷たい経済、自己責任を押し付ける経済になっているので、私たちはこれを変えようと訴えています。
能條:
気候変動政策についてうかがいます。昨年の衆院選で、共産党は気候変動対策を重要政策として打ち出していましたが、党としてどんな問題意識があり、今回の参院選でさらに何を訴えようとしているのでしょうか?
志位:
カーボン・バジェット、つまり今後排出が許される二酸化炭素の量は、(人口で割った場合、日本分は)このままだとあと6年分くらいしかありません。そこで、私たちは「気候危機を打開する日本共産党の2030戦略」という政策を打ち出しています。
2030年度までに二酸化炭素などの排出を最大6割カットするため、大規模な省エネと再生可能エネルギーの普及、さらに石炭火力の段階的な廃止と、原発の即時ゼロを提案しています。
大事なのは、この道を進めば経済も良くなることです。雇用が新たに250万人以上増え、GDP(国内総生産)も増える試算を出しています。原発や石炭火力が地産地消の再エネに代われば、地域経済が活性化し、過疎の問題も解決していく。日本経済の希望の道でもあるので、ぜひ若い方々と協力してやっていきたい。
能條:
原発ゼロ、石炭火力ゼロは、それが理想ですし、必要だと思う一方で、SNSを含めた世論のなかでは「現実的ではない」という批判もあります。
志位:
現実を見て欲しい。いま原発と再エネの値段(コスト)がどうなっているか。再エネは原発よりずっと下がっていますよ。
また、原発で私たちが忘れてはならないのは、福島の事故はまだ終わっていないことです。汚染水の問題も解決していない。福島から避難を余儀なくされている方もたくさんいる。原発というエネルギーに頼ったらどういう危険があるのか、私たちはあれだけ体験しました。原発をなくす、石炭火力をなくすという政治決断をやってこそ、本気になって再エネや省エネに取り組めるのです。
能條:
最後に、この夏の参院選でどこに投票しようか考えている人に向けて「こういう人は共産党に投票するといいよ」というメッセージをお願いします。
志位:
私たちは党をつくって今年で100年です。100年間の根本理念は自由と平和です。戦前の人間の基本的人権がなかった時代から、国民主権と人権、平和を訴えてきました。そして未来に向かって、将来にわたって自由と平和を守り、発展させる、花開かせる党が日本共産党です。自由が好きな人、平和が好きな人は、ぜひ共産党を応援してください。
(執筆:小林豪、編集:中田真弥、写真:坪池順)
Source: HuffPost