06.06
<シリア>化学兵器攻撃の被害住民「悲劇、繰り返さないで」(写真6枚・地図)
◆シリアで繰り返し使われた化学兵器
ロシア軍によるウクライナ侵攻。戦闘が拡大するなか、ロシア軍による化学兵器使用もありうるとも報じられている。内戦が続くシリアでは、化学兵器が繰り返し使われてきた。犠牲のほとんどは市民だ。シリアの地元記者の協力を得て、2017年にイドリブでの化学兵器攻撃で家族を失くした住民を取材した。(玉本英子/アジアプレス、 取材協力:ムハンマド・アル・アスマール)
fa-arrow-circle-right動画【シリア・ダマスカス近郊 化学兵器攻撃から3年】数百人の犠牲者ほとんどは一般市民
◆犠牲の多くは市民
2022年4月、ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシア軍が化学兵器を使う可能性があると述べた。化学兵器は戦闘員だけでなく、市民にも深刻な被害をもたらす。
シリアでは、何度も化学兵器攻撃が起きている。おもなものでも首都ダマスカス郊外(2013年)、北西部イドリブ近郊のハーンシェイフン(2017年)がある。ハーンシェイフンの攻撃では、化学物質サリンを含んだ爆弾が投下され、100人以上が死亡した。
◆妻と幼い双子、親族あわせて25人を失う
「あの日、私のすべてが奪われました」
会計士のアブドルハミド・アル・ユセフさん(33)は、妻と生後9か月の双子の乳児、親族のあわせて25人を失った。
爆弾が炸裂したのは早朝。大きな爆発音が聞こえ、空爆か砲撃と思った一家は、急いで地下避難所へ向かった。
途中、隣人たちも避難させようと彼だけ外に残った。人びとが倒れ、口から泡をふいているのが目に入った。「毒ガスかも」と思った瞬間、呼吸が苦しくなり、気を失った。目覚めると病院にいた。妻や子どもたちは遺体となって収容された。空気より重いガスが地下避難所に流入し死亡したと告げられた。
「亡くなった妻は18歳でした。私は双子の亡骸に、さよならの言葉をかけながら、この手で埋葬しました」
家族を助けることができず、ひとり生き残ったことで自らを責めてしまうこともあるという。
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