06.06
「食べ物が私を支配した」摂食障害に苦しんだ大学生が、自分の体験を発信し続ける理由
6月2日の世界摂食障害アクションデイに合わせて、摂食障害の啓発と支援活動を世界中で同時に行うイベントが5日に開かれた。
一般社団法人日本摂食障害協会などが主催した日本のオンラインイベントには、当事者として、2022年「ミス日本」のグランプリに選ばれた大学生、河野瑞夏(こうの・みずか)さんが登壇。
自身の摂食障害の経験や回復につながるまで、発信する理由を語った。
河野さんが摂食障害になったのは18歳。きっかけは大学生活への“焦り”だった。
「交友関係を広げて、有意義な大学生活を送りたい」と大学で部活やサークルに入り、大学外でダンスレッスンにも通った。
「SNSで周りの人たちが充実した大学生活の様子をあげていて、自分はそのような友達がつくれていないと焦っていました」と振り返る。
「どうしたら友達ができるのか。きれいになって、痩せたら周りの人が寄ってきてくれるんじゃないか」
そんな考えでダイエットを始め、連日ジムに通った。
体重は減っていったが、次第に自分の「食や運動のルール」を優先して、周囲の人との関わりを避けてひとりで行動するようになったという。
「(その様子を同居の)母親に見られたくなくて、深夜にこっそり帰っていました。母は『充実した大学生活を送っている』と思っていました。疲れて誰とも話したくなくて、毎日イライラしていました」
描いた大学生活とは程遠かった。河野さんの体重は、いつしか30キロ台まで落ちていた。2020年の最初の緊急事態宣言で、部活やサークルが活動休止となったことも状況を悪化させた。
「コーヒー1杯だけで過ごしていた私は、食べ物のことしか考えられなくなりました。食べ物が私を支配し、脳を乗っ取りました」
母親が寝た後、食べたい衝動を抑えられず、カレーやシチュー、お菓子を口の中にかき込んだ。冷凍食品も凍ったまま食べた。
「やけ食いとの違いは、お腹がはち切れそうでもやめられないこと。『もう無理だ』と泣きながら食べ、その後に太ってしまうという恐怖がくる」
食べては吐いてを繰り返し、疲れ果て倒れるように寝るという生活を送っていたという。
治療や回復につながるまで
この状況を見かねた母親から、病院に行くよう言われても、河野さんは「自分は摂食障害ではない」と拒んでいた。内心は、摂食障害と診断されるのが怖かったからだ。それでも母親の支えで治療につながり、回復に向かうことができたと振り返る。
健康的に食べるため、母親に食事の管理をしてもらい、拒食と過食で植え付けられた「食への恐怖心」「食べる罪悪感」は次第に薄れていったという。
20歳の誕生日に買ってもらった犬には、サンスクリット語で「希望」という意味の「Aasha」と名づけた。
「深い闇の底にいて、希望を感じたかった」という思いを込めていた。
河野さんは、同じように摂食障害に苦しむ人たちに何か伝えられないかと、自分の経験や悩みをSNSで発信。多くの応援や励ましのメッセージが寄せられた。
その経験から「いろんな人が、自分を肯定しながらつながるきっかけ作りができたら」と考え、2022年の「ミス日本コンテスト」に応募。グランプリに選ばれた。
「完璧でないと愛されないと思っていた。そうでなくそんな自分を愛してあげること、自分で自分を認めることが大事。過食をしないように、吐かないように、自分を大切にするように、一日一日を過ごしています」
相談窓口の案内
摂食障害の症状に苦しんでいる人や、周りに悩んでいる方がいる人たちなどに向けて、次のような支援機関や相談窓口があります。
▽摂食障害
摂食障害全国支援センター:医療従事者や一般の方向けに摂食障害に関する情報発信をするほか、支援拠点病院がある都道府県(宮城県、千葉県、静岡県、福岡県)以外に住んでいる人に向けた窓口「相談ほっとライン」を運営。
NABA:摂食障害からの回復と成長を願う人たちの自助グループ
Source: HuffPost