05.22
<北朝鮮内部>北部重要都市をコロナで完全封鎖 死者発生情報 「国は食べ物も薬もくれない」 政府は情報流出阻止に血眼
新型コロナウイルスが全国で感染拡大しているとみられる北朝鮮で、北部の両江道(リャンガンド)の中心都市・恵山(ヘサン)市が、5月14日から完全封鎖(ロックダウン)されて一切の外出が禁じられていたことが分かった。恵山市に住む二人の取材協力者が19、20日に伝えてきた。協力者によれば、恵山市では市場も閉鎖され、自宅から出られなくなった住民の中に死者も発生している模様だ。コロナと飢えに対する怯えが深まっている。(カン・ジウォン/石丸次郎)
◆政府は情報流出にピリピリ
新型コロナウイルスの拡散での封鎖にも外部情報の流出に保衛省が総動員されたという。 特に国家保衛省に国境地域に専門人材と幹部を派遣し、情報流出者を防ぐことに総力を尽くしているという。
――連絡を待っていた。市内の状況はどうか?
D 恵山市は5月14日に完全に封鎖された。アパートの窓から電波探知の車が止まっているのが見える。24時間ずっとだ。走っているのはそんな車や軍用車だけだ。外では取り締まりの怒鳴り声しかしない。外国に(国内の状況の)情報が漏れないよう、保衛局(秘密警察)が総動員されているそうだ。恐ろしくて連絡が遅れた。国内の携帯電話もうまく通じない。特に平壌とのつながりが悪い。
※中国との国境沿いの都市では、中国の携帯電話の使用を摘発するため電波探知機を携えた治安要員が巡回している。車両にはアンテナが装備されていて一目で判別できるという。
――外出禁止なのか?
D 今、ここは大混乱だ。いつ封鎖が解除されるのかわからない。市場の商売は中断されて物価もよく分からない。夜中に(アパートの)隣の家の人がコメを分けてほしいと扉を叩いた。家にある家電製品と食糧を交換してほしいと頼まれた。このままでは、皆飢えて死んでしまうのではないか。私の家にはコメはあるけれど、煮炊き用の焚き物がなくて心配だ。
――現在、政府の対応はどうか? 食糧や医薬品の支給は行われているのか?
D 「非常防疫組」という組織ができた。防疫服を着て熱がある人の家を回って生死を確認している。中国の薬を輸送して緊急の人に支給するという通知があった。何の薬かわからないし、まだ薬は何も支給されていない。
また人民委員会(地方政府)が食糧を配ると言っていたが、まだ何もない。地方にはほとんど備蓄はないと聞いた。余裕のある者が助けて耐えていこうと上は言っているが、お話にならない。強盗する者も出るだろう。毎日、宣伝車が「緊急状況なので心を一つにしてこの難関を乗り越えよう」と放送している。
――死者は発生しているのか?
D 今日(19日)、人民班から若い女性と男性が死んだと通知があった。ドアを開けてはならず、直接見ていないので、詳しい死因はよくわからない。
アパートの水道の水が出ないので、水汲み場に一軒ずつ出てきて接触できないようにして汲ませている。ところが、水汲みに出てこない家がある。「非常防疫組」が、出てこない家を訪ねて行ったところ、死んではいなかったけれど、食べられなくて家の中で倒れていたそうだ。夜中に、泣き声も聞こえてくる。
――人が死んだためか? 食べるものが無くて泣いているのか?
D 扉をノックしてみたが、コロナが心配なのだろう、開けてくれなかった。
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