2021
05.31

ベトナムで新たな「非常に危険な」変異ウイルスを確認

国際ニュースまとめ

<インド型とイギリス型の性質を合わせ持ち、伝播性が高いのが特徴。ベトナムの急速な感染拡大の一因とも> ベトナム政府は5月29日、「非常に危険な」新型コロナウイルスの変異株を確認したと明らかにした。イギリス型変異株とインド型変異株が合わさったような特徴をもつウイルスだという。 ベトナムのグエン・タン・ロン保健相によれば、同国各地で最近感染が確認された患者のウイルスの遺伝情報を調べていた専門家が、新たな変異株を発見したという。この新しい変異株は非常に伝播力が強いとみられ、従来型よりも容易に感染が広がる可能性があるとロンは述べた。 グエンは29日、「ベトナムは新型コロナウイルスの新しい変異株を発見した。この変異株はインドとイギリスでそれぞれ最初に確認された既存の2つの変異株の性質を合わせ持っている」と語ったとロイター通信は伝えている。 またロイターによれば、グエンは政府内の会合で「新しい変異株は、イギリス型がもともと持っていた変異がインド型に加わったもので、とても危険だ」と述べたという。 この新しい変異ウイルスは非常に増殖が速いことが実験で明らかになっている。AP通信によれば、ベトナムで最近、新型コロナウイルスの感染が急拡大している原因はここにある可能性があるとロンは述べたという。ベトナムでは58の省と5つの中央直轄市のうち30の省・市で新型コロナウイルスの感染者が確認されている。 WHOによる評価はこれから 新型コロナウイルスが小さな変異を起こすのは珍しいことではない。世界保健機構(WHO)は「国際的に懸念すべき」として4つの変異ウイルスを指定している。このうち、イギリスで最初に確認された変異ウイルスが「B117」で、インドで最初に確認されたのが「B16172」だ。残り2つはそれぞれ、南アフリカとブラジルで最初に感染が確認されたものだ。 イギリス型もインド型も、他の株に比べて伝播力が最大で50%も高いことが研究で明らかになっている。 WHOの感染症対策専門家、マリア・ファンケルクホーフェは29日、本誌に対し、新たにベトナムで確認された変異ウイルスに関する評価はまだ定まっていないと語った。 「ウイルスが広がり、進化を続ける中で、そして世界的に遺伝情報の解析能力が拡大していく中で、今後さらに多くの変異ウイルスが確認されていくだろうと考えている」と、ファンケルクホーフェは述べた。 ファンケルクホーフェは、変異ウイルスが確認された場合はまず第一にWHOによって適切に評価される必要があると述べた。 「WHOのベトナムオフィスはベトナム保健省と協力しており、近いうちにさらなる情報が届くと思う。これまで分かっている範囲では、ベトナムで見つかったのはB16172変異株で、他にも変異を伴っていると思われるが、続報は届き次第公開する」とファンケルクホーフェは述べた。 ===== ロイターによれば、ベトナムではこれまでに少なくとも7つの変異ウイルスが確認されている。ジョンズ・ホプキンズ大学のデータによれば、31日の時点でベトナムでは累計7100人超の感染が確認され47人が死亡しているが、ここ数週間の感染者が3500人超と半分を占めている。 APによれば、ベトナムでは都市部のプロテスタントの教会で少なくとも85人のクラスターが発生したことを受け、宗教的なすべてのイベントが全土で禁止された。大都市圏では多くの人が集まることが禁じられ、公立の公園は封鎖。レストランやバー、クラブ、スパでも客の受け入れを中止している。 ワクチンについては、これまでに290万回分を確保。政府は現在、人口の80%に接種できる量のワクチンの供給確保に向け、米バイオ医薬品企業モデルナと交渉中だ。

Source:Newsweek
ベトナムで新たな「非常に危険な」変異ウイルスを確認