03.27
アカデミー賞2022は、日本時間3月28日午前。ノミネート作品は? 受賞予想は?【注目ポイント】
第94回アカデミー賞の授賞式が、日本時間3月28日に行われます。
世界最大級の映画の祭典であり、豪華な出演者やそのスピーチも話題になるアカデミー賞。今年は濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』が日本映画として初めて作品賞にノミネートされていることから、国内でも注目度が高まっています。
日本で見る方法や、ノミネート作品、受賞予想などをまとめました。
【記事の主な内容】
・日本で見る方法は?
・作品賞にノミネートされたのは?
・本命は『パワー・オブ・ザ・ドッグ』? Netflixがついに…
・監督賞は2年連続女性が有力
・ろう者3人がメインキャストを務めた『コーダ』に勢い
・日本映画初の快挙。『ドライブ・マイ・カー』はどの部門で受賞?
▼日本で見る方法は?
日本では、WOWOWがアカデミー賞授賞式の模様を独占生中継。
3月28日(月)午前7時30分からWOWOWプライムおよびWOWOWオンデマンドで放送されます。
アメリカ・ロサンゼルスのドルビー・シアターより生中継され、司会は、エイミー・シューマー、レジーナ・ホール、ワンダ・サイクスの3人が交代制で担当します。
▼最高峰「作品賞」の受賞候補は全10作品
最注目の作品賞、ノミネートされたのは、以下の10作品です。
『ベルファスト』 ケネス・ブラナー監督
『コーダ あいのうた』 シアン・ヘダー監督
『ドント・ルック・アップ』 アダム・マッケイ監督
『ドライブ・マイ・カー』 濱口竜介監督
『DUNE/デューン 砂の惑星』 ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督
『ドリームプラン』 レイナルド・マーカス・グリーン監督
『リコリス・ピザ』 ポール・トーマス・アンダーソン監督
『ナイトメア・アリー』 ギレルモ・デル・トロ監督
『パワー・オブ・ザ・ドッグ』ジェーン・カンピオン監督
『ウエスト・サイド・ストーリー』スティーブン・スピルバーグ監督
▼本命は『パワー・オブ・ザ・ドッグ』? Netflix作品がついに
中でも、作品賞の「本命」とされ、受賞が有力視されているのが、ベネディクト・カンバーバッチ主演の『パワー・オブ・ザ・ドッグ』です。
舞台は1920年代のアメリカ。カンバーバッチ演じる無慈悲な牧場主と、その弟家族の緊迫した人間関係を描いており、近年のアメリカ映画の重要なテーマである「有害な男らしさ」をめぐる物語でもあります。
作品賞、監督賞(ジェーン・カンピオン)、主演男優賞(ベネディクト・カンバーバッチ)、助演女優賞(キルスティン・ダンスト)、助演男優賞(ジェシー・プレモンスとコディ・スミット=マクフィー)など、主要部門含む最多11部門12ノミネートを獲得しています。
本作はNetflixが配給権を持っている配信作品で、アメリカでの劇場公開は限定的なものでした。作品賞を受賞すれば、配信作品としての初の快挙となります。
Netflixの作品が初めてアカデミー賞の作品賞にノミネートされたのは、2019年の『ROMA/ローマ』。2021年には、『Mank/マンク』は最多10部門でノミネートされ、Netflixの作品は年々その存在感を強めていますが、どちらも作品賞は逃しています。
映画館でのスクリーン上映を目的としていない配信作品を、アカデミー賞がどう評価するか。この数年さまざまな議論が繰り広げられてきたため、受賞の行方に注目が集まります。
▼監督賞は2年連続女性に?
2021年のアカデミー賞では、『ノマドランド』のクロエ・ジャオ監督が、女性として史上2人目となる監督賞を受賞しました。
「白人男性優位」と長年指摘されていきたアカデミー賞ですが、その中でも特に監督賞は女性が排除されてきた歴史があります。
今回のアカデミー賞では、『パワー・オブ・ザ・ドッグ』のジェーン・カンピオン監督が有力候補に。カンピオン監督は、1993年に映画『ピアノ・レッスン』でも監督賞にノミネートされましたが、受賞は逃しています。今回で2度目の候補入りとなり、前哨戦でもその強さを見せていることから、受賞確実と言われています。
一方で、2022年の監督賞の部門では全5人がノミネートされていますが、女性はカンピオン監督だけ。作品賞の候補作も男性主人公の作品が多く、ジェンダーの偏りが指摘されるノミネーション結果となりました。
▼ろう者3人がメインキャストを務めた『コーダ』の功績
作品賞で、『パワー・オブ・ザ・ドッグ』に続いて有力視されているのが『コーダ あいのうた』。
家族の中で1人だけ耳が聞こえる「聴者」である主人公が、音楽の夢を追いながら、耳の聞こえない「ろう者」の両親と兄のサポートの間で揺れる姿が描かれます。
前哨戦であるSAG(全米映画俳優組合)賞やアメリカ製作者組合(PGA)賞で最高賞を受賞するなど勢いをつけており、注目度も上昇中。
家族を演じるのは、ろう者の俳優たち。父役のトロイ・コッツァーはろう者の男性として初めて助演男優賞にノミネートされる快挙を成し遂げました。ろう者役に、当事者の俳優をキャスティングすることはシアン・ヘダー監督の強い希望で実現。残念ながら監督賞にはノミネートされていませんが、業界内外から、監督と俳優、そして作品を支持する声が広がっています。
この勢いのまま『パワー・オブ・ザ・ドッグ』をおしのけ、アカデミー賞作品賞に選ばれる可能性も十分考えられます。
▼日本映画初の快挙。『ドライブ・マイ・カー』はどの部門で受賞?
日本映画としての歴史を更新した『ドライブ・マイ・カー』は、作品賞・監督賞・脚色賞・国際長編映画賞の全4部門にノミネートされています。
日本映画が作品賞にノミネートされるのは初めてで、監督賞は『乱』の黒澤明監督以来36年ぶり。
アメリカ以外の非英語の映画に贈られる国際長編映画賞の受賞はほぼ確実と言われており、受賞すれば、2009年の『おくりびと』(滝田洋二郎監督。国際長編映画賞の前身の外国語映画賞を受賞)以来13年ぶりの快挙に。
作品賞受賞を予想する声は少ないですが、一部のメディアでは、脚色賞も取るのではないかと囁かれています。
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近年を振り返ってみると、2020年には韓国のポン・ジュノ監督の『パラサイト』、そして2021年は、中国で生まれたクロエ・ジャオ監督の『ノマドランド』が作品賞を受賞しました。
ハリウッドでは、長年社会的マイノリティの人々が排除された状況で映画作りが行われてきましたが、この数年で、多様な視点と多様なルーツをもつ人々による映画が評価される傾向に変わってきています。
一方で、授賞式の開催方法をめぐっては波紋を呼んでいます。
今回の授賞式では、全23部門のうち、編集賞やメイクアップ&ヘアスタイリング賞、作曲賞、美術賞などの一部部門の受賞発表を省略することが決まっています。この背景には、近年アカデミー賞授賞式の視聴率が悪化していることを受けての判断があったことなどが考えられます。
多くの監督らが、この判断は、制作陣の間にヒエラルキーを生み出すものだとして批判。アカデミー賞はこれらの部門のクリエイターや技術者を尊重していないと問題視されています。
毎年新たな問題が噴出し、議論が起こるアカデミー賞は、変化の過度期にあります。2022年は授賞式と受賞結果を通じて、どんなメッセージが打ち出されることになるのでしょうか。注目して授賞式を楽しみにしたいと思います。
Source: HuffPost