2022
03.24

【ビジネススキルとは】目指すレベルはどのくらい?最重要スキルと習得法を解説

国際ニュースまとめ

社会人が仕事をする上で欠かせないのがビジネススキル。しかし、いざ「ビジネススキルとは何?」と聞かれて、すぐに答えられる人は多くありません。本記事では、ビジネススキルについて、『経営戦略全史』などのヒット書籍で知られる、KIT虎ノ門大学院教授・三谷宏治さんに取材。ビジネススキルの分類や、キャリアステージごとに必要なスキルレベル、効果的な習得法、自分のビジネススキルの確認方法などを聞きました。

■ビジネススキルとは? 知識や資質とは異なる

ビジネススキルとは、ビジネスでの問題発見・設定・解決のために、組織の資源や資金、個人の知力や体力などを「正しく効率よく使う」ためのスキル=技のこと。スポーツにおける技と同じく、繰り返し練習し実践し、失敗しながら身につけていくものです。

「ビジネススキル」については様々な定義や解説がありますが、「スキル」と「知識」「資質」などが混同されているものが多くみられます。有名な「カッツ・モデル(*1)」も、本来はマネジメント層のスキルに特化したもので、幅広いビジネススキルをカバーできるものがありませんでした。

そこで、今回は三谷さんが、社会人向け教育事業会社のプセレナやリクルートなどの資料をもとに、独自にビジネススキルを定義・分類してくれました。

*1:米国の経営学者ロバート・L・カッツが提唱したモデル。管理職に求められるビジネススキルを、テクニカルスキル、ヒューマンスキル、コンセプチュアルスキルに分類している。

まずはビジネススキルとは一体何なのか、俯瞰してみましょう。

■ビジネススキルは「人的ビジネス能力」のコア

「ビジネススキル」は、人がビジネスをする上で必要とされる「人的ビジネス能力」の一部です。

図1の通り、ビジネスにおける「基盤・資質」の上に成り立つのが、「問題発見・設定・解決力」。「問題発見・設定・解決力」は「知識」「スキル」に二分されます。その「スキル」から「基礎学力(言語・数・科学)」を除いた部分が「ビジネススキル」に該当します。

■「ビジネススキル」のなかでも汎用的なものが大切

さらに、「ビジネススキル」は、「ビジネス汎用スキル(汎用的なビジネススキル)」と「ビジネス専門スキル」の2つに分類できます。

「ビジネス汎用スキル」は考える力や伝える力といったもの。異動で職種や業務が変わったり、転職して会社や組織が変わったりしても、変わらず使える「持ち運び可能」な汎用的ビジネススキルです。「ポータブルスキル」と呼ばれたりもします。

一方、「ビジネス専門スキル」とは、職種や部署・会社に特有のスキルを示し、それらを越えて使うことはなかなかできません。

一般的には、「ビジネス汎用スキル」を「ビジネススキル」として扱うことが多いので、こちらをさらに詳しく説明していきます。

図2にあるように「ビジネス汎用スキル」は、「コミュニケーションスキル」「思考スキル」「組織スキル」「管理スキル」の4つに分類されます。また、若手・新人層、中堅層、幹部層のステージごとに、必要なスキル内容が段階的に変化していきます。

4つのスキルとステージごとに必要とされるスキル内容を見ていきましょう。

1.コミュニケーションスキル

コミュニケーションスキルとは、他者と円滑に意思を伝え合い、関係性を築くスキルです。

▼ステージごとに必要な「コミュニケーションスキル」

幹部層 多くの人を惹きつけるパブリックプレゼンテーションスキル
中堅層 会議などの進行を調整するファシリテーションスキル
若手・新人層 ロジカルライティングやロジカルヒアリング、ロジカルプレゼンテーション(思考スキルと領域をまたぐ重要スキル)

2.思考スキル

思考スキルとは、論理的に物事を考え、ビジネスの課題を解決していくスキルです。

▼ステージごとに必要な「思考スキル」

幹部層 自ら課題を発見し、解決まで導く議題設定型問題解決スキル
中堅層 データスキル、問題解決スキルに加え、仮説を立て検証し、新たな発想でビジネスを生み出す仮説思考/発想思考
若手・新人層 全ての思考のベースとなる論理思考・重要思考、データを読み解くデータスキル、問題解決スキル

3.組織スキル

組織スキルとは、人々を集めて組織を作り、維持・発展させるスキルです。

▼ステージごとに必要な「組織スキル」

幹部層 組織の構造をデザインする組織設計や高度なリーダーシップスキル
中堅層 部下に耳を傾けながら目標達成を促すコーチング、チームメンバーや交渉相手と結論を導き出す合意形成、自ら物事を解決に導く問題解決話法、部下を導くリーダーシップスキル
若手・新人層 同僚や関係者と良好な関係を築き、業務を遂行するチームビルディング関係構築スキル

4.管理スキル

管理スキルとは、自分自身やチームメンバーなどの人材、業務を管理するスキルです。

▼ステージごとに必要な「管理スキル」

幹部層 目標設定、事業レベルの収益管理、ビジョン構築スキル
中堅層 チームや部署の業務・進捗管理、人材管理、チームや部署の目標設定スキル
若手・新人層 PDCA(*2)OODA(*3)を用いた業務管理、セルフマネジメントスキル

*2Plan-Do-Check-Act cycle *3:Observe-Orient-Decide-Act loop

■最も基礎的なビジネススキルは「論理思考・重要思考」。研修も人気

ステージや職種ごとに、様々なビジネススキルが求められることがわかりました。就職や転職を考えている人、あるいは今の職場でもっと活躍したい…と考えている人は、まずどんなスキルを身につけるべきでしょうか。

最も基礎的かつ重要なのは「論理思考・重要思考」(※重要思考は後述)です。実際、ビジネスパーソン向けの研修では「論理思考」に関するものが不動の人気を誇ります。それだけ、ビジネスの現場で論理思考のスキルが不足していると実感する人が多いようです。

また、「論理思考」は自分一人だけ身に付けてもあまり効果を発揮しません。研修などを通してチームの共通言語にすることで初めて、組織全体の思考やコミュニケーション、管理能力を上げることができます。

なお、コミュニケーションスキルの中でも、近年『伝え方が9割』などで「伝えるスキル」が注目されています。確かに重要なスキルですが、「伝える」前に、「伝える中身=コンテンツ」を論理的に考え抜くことが重要です。論理的に考えたものだからこそ、きちんと伝えることができるのです。

■三谷さんが提唱する最重要ビジネススキル「重要思考」とは?

ビジネスパーソンに必須の基礎スキルとして三谷さんが提唱しているのが、「重要思考」です。重要思考は、最もシンプルな論理思考。必要なのは、「重み」「差」の2つだけ。

これらを掛け合わせることで初めて、DMU(意思決定者:Decision Making Unit)に対してインパクトが生まれます。DMUにとってダイジでない(重みがない)ことで、いくら「他社よりスゴいんです」と売り込んだところで、決して響くことはないのです。

例えば、「電力効率を2倍に上げられる」というサービスを持っていたとします。一見、スゴいことに思えますが、売り込む相手(DMU)が管轄する全コストにおいて電気代は一体どれくらいなのでしょうか。

電気代の「重み」が、もし全コストのたった2%だとしたら、そのサービスで生み出される「インパクト」は全コストの1%分しかありません。

でもDMUの全コストの6割が原材料費で、かつ「原材料単価を1割削減できる」というサービスを提供できるなら、その価値(インパクト)は全コストの6%分に達します。たった1割の「差」であっても、対象の「重み」が大きければ、こちらのサービスを奨めるべきでしょう。だってDMUにとってのインパクトが6倍もあるのですから。

このように、「差」だけでなくDMUにとっての「重み」をきちんと考えることが重要思考です。重要思考は、考える、伝える、聴く、議論しあう…ビジネスのあらゆるシーンで応用できる、最も基礎的なビジネススキル。

シンプルだからこそ一般の論理思考より習得が簡単で、かつ同僚や部下に自ら教えることができます。それによって初めて、個人だけでなく組織の力を高めることができるのです。

■ビジネススキル、おすすめの習得法は?

では、ビジネススキルはどうやって身につけて行けばいいのでしょうか。

ビジネススキルの習得でもっとも重要なのは、繰り返すこと。冒頭でも触れたように、スポーツの「技」と同じく、何十回も練習し、何十回も実践で使って、失敗と成功を繰り返した先に身につくものなのです。

だからこそ、絞り込むことが大切です。「でも自分に何が本当に必要なのかわからない」という人にまずおすすめしたいのは、実際の研修や講座を試しに受けてみること。これは自分の現在のスキルレベルを知ることにもつながります。

ただし、「ちょっとやってみてうまくいかなかったから、次の研修へ」というやり方では、結局スキルが身につきません。気に入った研修や講座を1つ決めて、数ヶ月間は続けること。

また、仲間を募り、みんなで実践結果を披露しながら学び合うこと。「自分はこういうことをやったんだけど、どうだろう」「あの授業で習ったことからすると、ここが違うのでは?」など、仲間と議論をすることが、繰り返すモチベーションを生み出し、ビジネススキルの習得につながります。

研修や講座は、オンラインでも、オフラインでもどちらでも構いません。オンラインなら、SchooやUdemyなど数多くのサービスが、転職や就職、ビジネススキルの向上に役立つ講座を設けています。MBAの単科コースから始めて、もっと学びたいと意欲が芽生えれば、本科に入学するという選択もあります。

本気でビジネススキルを身につけたいと思うなら、まずは小さなアクションを起こし、自分を知り、有用な研修や科目・学校を見つけて、繰り返し練習をすることです。それしかありません。

ビジネススキルを習得できる研修・講座サービス・学術機関の例

プレセナ オンライン アカデミー  https://academy.precena.co.jp/
Schoo : https://schoo.jp/
Udemy : https://www.udemy.com/ja/
KIT虎ノ門大学院 : https://www.kanazawa-it.ac.jp/tokyo/
早稲田ビジネススクール : https://www.waseda.jp/fcom/wbs/

■まとめ

ビジネススキルとは、ビジネスにおいて人が、組織の資源や資金、個人の知力や体力などを「正しく効率よく使う」ためのスキル=技でした。

また、ビジネススキルは問題発見や解決を目的とする「人的ビジネス能力」の一部で、「ビジネス汎用スキル」「ビジネス専門スキル」の2つに分類できます。

「ビジネス汎用スキル」は、「コミュニケーションスキル」「思考スキル」「組織スキル」「管理スキル」の4つ。若手・新人層、中堅層、幹部層で、必要なスキル内容が段階的に変化します。中でも、最も重要なビジネススキルは「論理思考・重要思考」で、研修でも人気のテーマです。

ビジネススキルの習得には、まず研修や講座を試してみること、次に仲間を募り、議論しながら練習を繰り返すこと。継続することで、スキルの獲得からキャリアの形成につながり、転職や就職にも役立てることができます。

監修者:三谷 宏治(みたに こうじ)さんプロフィール

1964年大阪生まれ、福井で育つ。東京大学 理学部物理学科卒業後、ボストン コンサルティング グループ(BCG)、アクセンチュアで19年半、経営コンサルタントとして働く。92年 INSEAD MBA修了。2003年から06年 アクセンチュア 戦略グループ統括。2006年からは子ども・親・教員向けの教育活動に注力。現在は大学教授、著述家、講義・講演者として全国をとびまわる。KIT(金沢工業大学)虎ノ門大学院 教授の他、早稲田大学ビジネススクール・女子栄養大学 客員教授、放課後NPO アフタースクール・NPO法人3keys 理事を務める。著書多数。『経営戦略全史』(2013)はビジネス書賞2冠を獲得。最新著は守屋淳さんとの共著『オリエント 東西の戦略史と現代経営論』。永平寺ふるさと大使。3人娘の父。
公式サイト:https://www.mitani3.com/

…クリックして全文を読む

Source: HuffPost