2021
05.28

カール・アイカーンも参入!? ビットコイン暴落でも著名投資家は強気

国際ニュースまとめ

<1カ月で半値になる暗号資産に、なぜ将来性があると思えるのか?> ビットコインをはじめとする暗号資産(仮想通貨)の投資家にとって、この数週間は胃の痛む相場展開となっている。 代表的な暗号資産であるビットコインの価格がテスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)の発言や中国政府による規制強化の動きを嫌気した売りに押され、史上最高値をつけてからわずか1ヵ月余りで半値まで急落したほか、イーサリアムやドージコインなどのアルトコイン(ビットコイン以外の暗号資産)も同じく大荒れ模様となっている。 著名投資家のマーク・キューバン氏は先日、この暴落を「大いなる巻き戻し(Great Unwind)」と呼び、借り入れた資金を元手に暗号資産を購入した後、これを貸し出してさらに高い利回りを獲得してきた投資家が連鎖的なポジション解消を余儀なくされるリスクに警鐘を鳴らした。 ところが市場全体では、一部を除いて驚くほど投資家心理が悪化しておらず、強気派はわずか半年で相場を4倍に押し上げた熱量そのままに、押し目買いのチャンスを虎視淡々と狙っている。 用途が広がり制度の一部に 楽観論を支える根拠の1つは、暗号資産に働いている好循環のメカニズムだ。今年はペイパルがビットコインなどを使ってオンラインストアでの支払いができる機能を立ち上げたほか、スターバックスがビットコインでプリペイドカードにチャージできる仕組みを確立するなど、決済手段としての普及に向けた道が大きく開きつつある。 また、モルガン・スタンレーがビットコインで運用するファンドへのアクセスを提供し始めたり、ゴールドマン・サックスがビットコイン価格に連動するデリバティブ商品の取引に乗り出すなど、大手金融機関の間でも暗号資産需要を取り込む動きが広がっている。こうした動きに伴って流動性も高まっており、相場急落後もこの根本的な環境に変わりはない。 暗号資産はこれまで、一部の投資家のみが熱狂的に取引している新興資産としての色合いが強かったが、ここ数ヵ月の価格上昇や市場拡大で、すでに伝統的資産と横並びでポートフォリオへの組み入れを検討されるまでに成長している。 ヘッジファンド世界最大手ブリッジウォーター・アソシエイツの創業者で、暗号資産弱気派として知られていたレイ・ダリオ氏は今週、仮想通貨メディアのコインデスクが主催したイベントで債券よりビットコインを選好する考えを示して市場の注目を集めた。また、少なくとも昨年末時点では暗号資産に懐疑的な見方をしていたにもかかわらず、今ではビットコインを「いくらか保有している」と明らかにした。 ===== この先、物価上昇とドルの価値下落が見込まれる中、低金利の債券よりインフレヘッジ手段として期待できるビットコインの方が魅力的な投資先であるというのが同氏の主張だ。ただ、投資家がすでに保有する伝統的資産を大量に売り払ってビットコインの購入資金を確保するような状況となれば規制強化を招く恐れがあるとし、暗号資産にとって「最大のリスクはその成功だ」と述べた。 米仮想通貨投資会社BKCMの創設者で最高経営責任者(CEO)のブライアン・ケリー氏もCNBCとのインタビューで、ビットコイン価格の急落は「機械的な売り」に過ぎず、従来からビットコイン購入の根拠として重視してきた制度化の進展と通貨価値下落への対策という「投資テーマは崩れていない」と話した。そのうえで、価格は引き続き上向きの軌道を描くとの見通しを示した。 ビットコイン相場は2013年や2017年などにも大きな調整に見舞われた。今回は価格の絶対値が高いために下げ幅も大きくなったが、暗号資産を取り巻く足元の環境を踏まえると、これまでと同様に一時的な下落で終わる可能性が高いというのが大方の見方だ。 テスラが背を向けようと テスラはビットコイン決済を導入してからわずか数ヵ月で手のひらを返すようにこれを停止したが、暗号資産がどれほど投機的でリスクが大きく、ファンダメンタルズの下支えに乏しいとしても、決済手段として受け入れる企業や投資家層の広がりに伴い、実用化が進む時代の流れは止められそうにない。 そのため、ダリオ氏のように暗号資産懐疑派から支持派へと立場を転じる動きはこの先一段と増えるだろう。 著名アクティビスト投資家のカール・アイカーン氏もその1人だ。同氏はブルームバーグとの26日のインタビューでまだどの暗号資産も購入していないとしつつ、市場にマネーが溢れ、インフレやドルの価値下落に対する懸念が高まる中、こうした資産は「どのような形であれ、定着すると思う」と語り、今後「比較的大々的に」関与していく意向があることを表明した。 ジェンキンス沙智 フリーランスジャーナリスト兼翻訳家。テキサス大学オースティン校卒業後にロイター通信に入社し、東京支局で英文記者としてテクノロジー、通信、航空、食品、小売業界などを中心に企業ニュースを担当した。2010年に退職・渡米し、フリーランスに転向。これまでに、WSJ日本版コラム「ジェンキンス沙智の米国ワーキングマザー当世事情」を執筆したほか、週刊エコノミストやロイターなどの媒体に寄稿した。現在は執筆活動に加え、大手金融機関やメディアを顧客に金融・ビジネス・経済分野の翻訳サービスを提供している。JTFほんやく検定1級翻訳士(金融・証券)。米テキサス州オースティン近郊在住、愛知県出身。

Source:Newsweek
カール・アイカーンも参入!? ビットコイン暴落でも著名投資家は強気