03.16
ディズニーは「性的マイノリティを支援せず、利益得るだけ」と痛烈批判も。「ゲイと言ってはいけない」法案めぐり何が起きてる?
アメリカ・フロリダ州で現地時間3月8日、小学校で性的指向や性自認について議論することを厳しく制限する法案が可決された。
保守派によって押し進められてきたこの法案は、反対派からは「ゲイと言ってはいけない(Don’t Say Gay)」法案や「トランスと言ってはいけない(Don’t Say Trans)」法案とも呼ばれている。
性的マイノリティに対する差別やいじめを助長し、当事者の子どもや若者を危険にさらすとして、抗議する声が多数あがり、ホワイトハウスも、「性的マイノリティの生徒を攻撃するために作られた」法案だと非難した。
ディズニー・ワールドを中心に、フロリダで大規模なビジネスを展開する米ウォルト・ディズニー・カンパニーの代表兼CEOのボブ・チャペック氏は、当初この法案に対し明確な態度を示さず、さらに、法案を支持する共和党の議員に多額の献金を行なっていたことで、批判が相次いだ。
その後一転し、法案に反対する姿勢を見せるも、ディズニー傘下のアニメスタジオのクリエイターらからは「ディズニーは同性愛描写を排除している」との告発もあり、従業員によりストライキが計画されるなど大きな問題になっている。
多様性を掲げてきたディズニー。CEOは「沈黙」し内部から批判
企業としてダイバーシティ&インクルージョンを掲げるディズニーは、作品においても多様性を打ち出し、LGBTQの権利を求める運動の象徴であるレインボーカラーのグッズなども販売してきた。
「ゲイと言ってはいけない」法案が問題視される中、ディズニーはフロリダでビジネスを行い、多くの雇用者を抱える企業として見解を求められていたが、沈黙を貫き、内部からも批判の声が高まっていた。さらに、同社が、法案を支持する共和党の議員に対し多額の献金を行なっていたことも明らかになっていた。
こうした状況を受け、3月7日にCEOのチャペック氏は従業員向けにメールを送信。企業として明確な声明を発表してこなかった理由や献金について釈明した。
「ディズニーが継続的な変化をもたらす方法のひとつは、その作品」だとし、『ミラベルと魔法だらけの家』や『ブラックパンサー』『モダン・ファミリー』などの作品をあげ、「これらの物語は、会社が掲げるスローガンであり、どんなツイートやロビー活動よりも強力だ」などとつづった。
「社として、長年LGBTQコミュニティを支援してきた」とするも、法案に対する明確な見解は示さなかった。
その後も批判はやまず、3月9日にチャペック氏は一転し、沈黙したことに対し謝罪した。CNNによると、性的マイノリティの従業員に向けて、こうつづられていたという。
「LGBTQ+のコミュニティがあるからこそ、私たちは向上し、より強い会社になれると心から信じています」
「皆さんが受けるべき保護を受け、可視化され、機会を享受できるために、私たちは率直な意見を述べる擁護者となります」
チャペック氏の謝罪文では、フロリダ州内での政治献金を一時停止し、性的マイノリティ支援団体への寄付と継続的なサポートも表明した。
しかし、その中で名指しされた支援団体のヒューマン・ライツ・キャンペーン(HRC)はディズニーからの寄付を拒否。法案に対し、意味のある行動を取らない限り、寄付金を受け取らないとした。
Kudos to the LGBTQ+ employees, fans and allies who made their voices heard. With anti-LGBTQ bills advancing at rapid pace from Florida to Texas to Alabama, we cannot stop.
No matter where you live or who you work for, now is the time to speak up.https://t.co/39k2la9coy
— Human Rights Campaign (@HRC) March 11, 2022
「支援せず利益だけ得てる」クリエイターはディズニーを痛烈批判
チャペック氏の謝罪後も事態はおさまらず、ディズニーの作品のクリエイターたちからも告発や批判が相次いでいる。
3月9日にディズニー傘下のアニメスタジオ「ピクサー」の「LGBTQIA+の従業員および関係者」を名乗る人々による告発文が、アメリカのエンタメ業界誌Varietyなどを通じて発表された。
告発文では、チャペック氏の謝罪メールは「空虚なものだった」と批判。性的マイノリティの権利が危険にさらされ、適切なサポートが必要な時にそれに応じず、利益だけを得る企業に所属するのは「最悪の気分」だと糾弾した。
さらに、「作品のストーリーは会社のスローガンであり、何よりも強力なものだ」と述べたチャペック氏だが、その作品づくりにおいても、ディズニー側の審査によって排除されてきた表現があったと告発。
「ピクサーで働く私たちは、多様なキャラクターが登場するはずの美しいストーリーが、ディズニーの審査によって排除されてきたのを何度も目撃してきました。
ピクサーのクリエイティブチームやその上層部が抗議しても、ディズニーの要請により、明らかな同性愛の愛情表現は、ほぼすべてカットになってきました。LGBTQIA+に関するコンテンツを作成することが、世界に蔓延る差別的な法律を正すための手段であったとしても、私たちはそれを作ることを禁じられているのです」
「ディズニーの体裁を良くさせるのにうんざり」
他にも、実名でディズニーを批判したクリエイターがいる。
バイセクシュアルの少女が主人公のディズニー・チャンネルのアニメ『アウルハウス』のクリエイターのダナ・テラス氏は自身のTwitterで「ディズニーの体裁を良くさせるのにはもううんざり」だと批判した。
テラス氏は自身もバイセクシュアルであることを公表しており、『アウルハウス』が放送された2020年に、ディズニーのあるリーダーからは、「番組では、バイセクシュアルや同性愛の関係性は表現できない」と言われたが、奮闘した結果、作品を作れるようになったと明かしていた。
I'm fucking tired of making Disney look good so WHO'S READY FOR ANOTHER ✨CHARITY LIVESTREAM✨ MARCH 13th!!!
More details to come. 🏳️🌈 #dontsaygay#disneydobetterpic.twitter.com/1MtumvjfB0
— Dana Terrace (@DanaTerrace) March 7, 2022
内部からの批判はおさまらず、3月15日には、ディズニーの従業員グループが1週間のストライキを計画していることが明らかになった。
あわせて発表されたオープンレターでは、チャペック氏の謝罪を受け入れるとしながらも、「ディズニーがやるべきことはまだある」とし、性的マイノリティの従業員とその家族に対し、実行力のあるサポートを提供するよう求めた。
Source: HuffPost