2021
05.20

再選出馬に逆風?トランプ経営企業に刑事訴追の可能性

国際ニュースまとめ

<共和党への根強い影響力を誇るトランプだが、ホワイトハウスを出た今、免責特権はもうない> ニューヨーク州司法長官事務所は、ドナルド・トランプ前大統領一族のビジネスに関する捜査を拡大し、刑事訴追も視野に入れた取り調べを進めていることを認めた。ニューヨーク州のレティシャ・ジェームズ司法長官の報道官を務めるフェビアン・レビーは5月18日、トランプ一族の経営する企業、トランプ・オーガニゼーションに関する捜査は、「その性質上、もはや純粋に民事捜査ではなくなった」とCNNに語った。今後はマンハッタン地区検事局と合同で捜査を進めることになるという。 「われわれは現在、トランプ・オーガニゼーションの刑事訴追の可能性について、マンハッタン地区検事局と共に積極的に調査を進めている。それ以上はコメントできない」と、州司法長官事務所は声明を出した。 州司法長官事務所はこれまでトランプ・オーガニゼーションの税金及び保険金詐欺と財務記録の改竄の疑いについて捜査を行ってきた。刑事捜査では、同社が銀行から有利な条件で融資を受けるために、ニューヨーク州の一部不動産の価値を過大評価する一方で、納税額を減らすため同じ物件の価値を過小申告した疑いが焦点になっている。トランプとその会社のビジネス慣行にメスを入れる民事捜査は、今後も刑事捜査と並行して続けられる。 合同捜査で立件を目指す 州司法長官事務所は独自の刑事捜査を行わず、これまでに集めた証拠を地検と共有し、地検と役割分担しつつ民事・刑事の両面で捜査を詰めていく意向だと、ニューヨーク・タイムズが伝えた。 具体的に捜査拡大の決め手となったのは何か。気になるところだが、州当局はそれについては明らかにしていない。 トランプは自身の財務関連疑惑に関する捜査を政治的な動機による「魔女狩り」だと非難してきた。 州司法長官事務所が民事捜査を始めたのは2019年。トランプの弁護士だったマイケル・コーエンが連邦議会の証人喚問で、銀行から有利な融資を受けるため資産価値を過大評価し、税の申告では過小評価していたと認めたことがきっかけだった。 民事捜査は、トランプ・オーガニゼーション所有の4つの不動産を中心に進められてきたようだ。その4物件とは、シカゴのトランプ・インターナショナル・ホテル&タワー、マンハッタン中心部にそびえる超高層ビルの40ウォール・ストリート、ロサンゼルスのトランプ・ナショナル・ゴルフクラブ、ニューヨーク州ウェストチェスター郡にある広大な地所セブンス・スプリングスだ。 民事捜査の一環として、2020年10月にトランプの次男エリック・トランプが州裁判所で宣誓証言を行った。 民事捜査と刑事捜査では重複する部分が出てくるため、州司法長官事務所とマンハッタン地検が合同で捜査を行うことになったと、CNNは伝えている。民事と刑事の両方にまたがるのは、セブンス・スプリングスに関する捜査などだ。 ===== マンハッタン地検も2019年から捜査を進めてきた。 地検は過去にトランプとその会社を銀行詐欺と保険金詐欺の疑いで捜査していると示唆したことがあるが、大陪審の守秘規則を理由に、詳細を明かさなかった。CNNによると、地検はトランプの納税申告書も含め膨大な書類を精査してきたという。 地検の捜査は、トランプ・オーガニゼーションで長年、最高財務責任者(CFO)を務めてきたアレン・ワイセルバーグへの事情聴取を中心に進められてきたとみられる。ワイセルバーグは民事捜査でも司法当局に召喚され、AP通信によれば2020年に2回証言を行っている。 トランプ個人に何らかの容疑がかけられているのか、またトランプ・オーガニゼーションの不正行為に対し、トランプに法的責任があるかは不明だ。 ホワイトハウスを去った今、トランプはもはや免責特権に守られておらず、証拠が固まれば、起訴される可能性がある。そうなれば当然、次期大統領選での「政権復帰プラン」にも影響が及ぶ。 トランプはいまだに前回の大統領選での敗北を認めず、ジョー・バイデン陣営が大掛かりな不正投票を仕掛けたと主張し続け、2024年の大統領選への再出馬の意欲をちらつかせている。 別件捜査も進行中 トランプの弁護士だったコーエンは、2016年の大統領選の前にポルノ女優のストーミー・ダニエルズ(本名ステファニー・クリフォード)にトランプとの不倫疑惑について口止め料を払った件に関し、連邦議会における偽証罪と選挙資金法違反で有罪となり、懲役3年の刑を言い渡された。服役中にコロナ禍で早期釈放され、現在は自宅拘禁中だ。 そのコーエンが5月18日にツイッターでこんな発信をした。「ニューヨーク州司法長官事務所とマンハッタン地検が書類を精査するにつれ、ドナルド・トランプは窮地に追いやられる!ドナルドと仲間たちが自らの犯した行為の責任を取らされるのは時間の問題だ」 一方ジョージア州フルトン郡の検察当局も、別件でトランプに関する捜査を進めている。2020年の大統領選で、州の選挙結果に影響を及ぼそうとした疑いが持たれているのだ。 フルトン郡のファニ・ウィリス首席検事は、ジョージア州のブラッド・ラッフェンスバーガー州務長官とトランプとの通話の録音内容を調査している。その電話でトランプは不正投票があったと根拠なく言い張り、選挙結果を覆すために必要な「1万1780票を見つける」必要があると主張。州務長官に圧力をかけたとみられている。

Source:Newsweek
再選出馬に逆風?トランプ経営企業に刑事訴追の可能性