12.03
「性的マイノリティの子どもも否定した合憲判決だ」LGBTQ当事者、子、親たちが集結。国会議員に結婚平等の法制化を訴える
衆議院第一議員会館で開かれた第8回マリフォー国会(2025年12月2日)国会議員に対して、法律上同性カップルが結婚できるようにするための法改正を求める「マリフォー国会」が12月2日、衆議院第一議員会館で開かれた。
8回目となるマリフォー国会には、「結婚の自由をすべてに」訴訟の原告やその家族、全国に住む性的マイノリティの当事者らが参加した。
「結婚の自由をすべてに」訴訟は、全国5カ所で計6件の裁判が行われている。そのうち5件の高裁は、法律上同性カップルを結婚制度から排除している現在の法律を「違憲」と判断した。
しかし東京2次訴訟の東亜由美(ひがし・あゆみ)裁判長は11月28日、一連の訴訟の高裁で唯一、合憲判決を言い渡した。

原告らはこの合憲判決に「怒りと失望を感じた」と訴え、集まった国会議員に1日も早く結婚の平等実現のための法改正をするよう求めた。
「子どもも否定されたように感じた」
これまで、札幌、東京、福岡、名古屋、大阪の5つの高裁が、同性カップルが婚姻制度を利用できないことを不合理な差別に当たるなどとして、「違憲」と判断してきた。
しかし東京2次訴訟の高裁は、「結婚制度は男女夫婦とその子どもを保護することを目的にしており、それには合理性がある」という理由で、合憲と判断した。
しかし、法律上同性カップルも異性カップルと同じように子どもを育てている。
パートナーの武田八重さんと子育てをしてきた東京2次訴訟原告の一橋穂さんは「私たちはステップファミリーで、自分だけでなくて、子どもも否定されたように感じた」と怒りを語った。
集まった国会議員を前に、裁判の原告らが結婚の平等のための法改正を求めた(2025年12月2日)養育里親として迎えた子どもを約2年間育てている愛知訴訟の原告、鷹見彰一さんも「(法律上男女カップルに育てられていない)子どもたちは普通じゃないと司法が判断したことは、差別を助長するようで本当に悔しいし残念だなと思っています」と語った。
「男女カップルから生まれてくる子どもの中にも、LGBTQ当事者がいる」と指摘したのは、東京2次訴訟原告の山縣真矢さんだ。
「男女夫婦の子どもの中には、少数ではあっても確実に同性愛者をはじめとする性的マイノリティが生まれ、存在する。その事実に社会が向き合ってこなかったことで、歴史の中で性的マイノリティへの差別が作られてきました。高裁判決は、性的マイノリティの人権や歴史への眼差しが徹底的に欠如していた」と強調した。
東京2次訴訟原告の山縣真矢さん(2025年12月2日)「これまでの20年間が消されてしまう」
性的マイノリティのカップルに育てられた子どもの側からも、結婚の平等を求める声が上がった。
東京1次訴訟原告の小野春さんは、パートナーの西川麻実さんとともに3人の子どもを育ててきた。しかし次男が入院した時には親権がない西川さんが手続きができないなど、さまざまな困難に直面してきた。
マリフォー国会には、成人したその次男も参加し、「仮に母が倒れ、死んでしまった時には、私たちの家族の関係はないものとされます。これまでの20年間を全て消されてしまうのです。これは私ひとりの話ではありません。多くの子どもが抱える悩みです」と述べて、性的マイノリティの親たちに育てられている子どものためにも法整備が必要だと訴えた。
(左から)東京1次訴訟原告の小野春さんと西川麻実さん(2025年12月2日)小野さんも「親が結婚できないために子どもたちは不安定な立場に置かれています。どうぞ今すぐ私たちを結婚させてください。子どもたちも安心して育っていける日本にしてください」と涙をこらえながら語った。
子どもに加えて、性的マイノリティ当事者の親も結婚の平等を求めた。
九州訴訟の原告こうぞうさんの83歳の母親は、「息子と(パートナーの)ゆうたさんは一緒に暮らしてそれなりには幸せと思います。しかし(結婚の平等が)法制化されないことには地に足がついた生活には届きません。どうか法制化して、世間一般の人々と同じにしてください。同性婚を望んでいる人にも幸せを与えてください」と集まった国会議員に呼びかけた。
(左から)マリフォー国会で話す九州訴訟の原告こうぞうさんの母と、こうぞうさん、ゆうたさん(2025年12月2日)国会議員の責任が問われている
今回のマリフォー国会には、与野党から54人の議員が参加。原告の訴えに対し、議員からは「すべての人たちに平等である制度をしっかりと作っていかなくてはいけない」などの声が聞かれた。
超党派の「LGBTに関する課題を考える議員連盟」のメンバーである自民党の牧島かれん議員は、議連の中に同性婚についてのプロジェクトチームを立ち上げることを発表した。
マリフォー国会では、東京高裁の「法律婚制度の目的は、子を生み育てる法律上の男女のカップルを保護すること」とした判断に、憲法学者からも問題を指摘する声が寄せられた。
慶應大学法学部の駒村圭吾教授は、判決を「同性婚に対する反対の根拠や説明を寄せ集めた、全員集合の総集編のような内容」と批判。
「裁判官の思想的な決意を感じる個性的な判決」と表現し、この考え方を徹底するのであれば、婚姻届と同時に出生証明や妊娠証明を提出する仕組みでなければおかしいと指摘した。
慶應大学法学部の駒村圭吾教授(2025年12月2日)原告側弁護団の沢崎敦一弁護士も「明治民法以来、生殖できることが婚姻の要件とされたことはない」と強調。
「子を産み育てる家族を保護するということは、婚姻の重要な機能の一つではあるものの、現在の憲法の下では(子を生み育てるかどうかは)当事者の自由に委ねられる」と述べ、多様な家族が存在する現状を無視するような司法判断だと指摘した。
今回初参加した社民党のラサール石井議員は、「(東京2次訴訟の高裁は)同性カップルだけではなく、さまざまな理由で子どもが産めないカップル、産まないカップル、ステップファミリー、里親や里子など、この社会で暮らしを営むさまざまな家族を見下した判決だった」と批判した。(2025年12月2日)東京2次の高裁は合憲とした一方で、全国6件の判決のうち、5件で明確な違憲判決が示された。
その中では、憲法24条1項の結婚の自由や、憲法13条が保障する結婚して法的な保護を受ける権利には、法律上同性カップルが含まれるという判断もあった。
また、大阪高裁は法律上同性カップルが現在の結婚制度を利用できるようにしなければ、新たな差別を生み出すとした。
さらに、合憲とした東京2次訴訟でさえも、このまま同性カップルの結婚が認められていない状態が放置されれば、憲法違反になりうるという考えを示している。
法律上同性カップルに対する差別的な現状を解消するために必要なのが、法律の改正だ。
法律上同性カップルも結婚制度に含まれるようにするための法整備をすることで解決できる問題であり、国会議員の責任が問われる。
原告側弁護団の上杉崇子弁護士は、「異性カップルであれば結婚の選択肢があるのに、相手が同性であるというだけで結婚の選択肢を奪われているということに、説得力のある理由は何一つありません。結婚を望む性的マイノリティは婚姻できないことにより日々、言い尽くせない苦痛と被害をこうむっています。どうか私たちの代表である国会の手で一日も早く結婚の平等を実現してください」と語った。
マリフォー国会に集った訴訟の原告や支援者ら(2025年12月2日)Source: HuffPost




