11.15
専業主婦vsキャリアウーマンじゃない。『虎に翼』と「女性の痛みを引き継がない作品づくり」を吉田恵里香さん犬山紙子さんと語り合った
吉田恵里香さんが脚本を執筆したNHK朝の連続テレビ小説『虎に翼』は、大きな反響を呼んだ。
作品で描かれたテーマの一つが「女性の痛みを次世代に引き継がないために変えていく」ことだ。
そのために、吉田さんはどんなことを心に留めて物語を執筆したのか。
『女の子に生まれたこと、後悔してほしくないから』の著者でイラストエッセイストの犬山紙子さんと、ハフポスト日本版の泉谷由梨子編集長との鼎談で聞いた。
(右から)犬山紙子さん、吉田恵里香さん、泉谷由梨子ハフポスト日本版編集長女性の痛みを描いた理由
『虎に翼』は日本初の女性弁護士・判事である三淵嘉子さんをモデルにしたオリジナルドラマだ。
法の道を志す主人公の猪爪寅子らが、「女性はこうあらねばいけない」「女のくせに」という抑圧にあらがいながら道を切り開き、社会を変えようとする。
半年間放送された物語の中では、約100年前の女性たちが感じていた「痛み」が丁寧に描かれた。
女に高等教育は必要ない、結婚して子どもを産み、夫や家族を支えるのが役目だ――。それが当たり前とされていた時代に女性が感じていた痛みには、現代では考えられないようなものもあれば、今も変わらないと感じさせるものもあった。
小学生の娘と一緒に見ていたという犬山さんは、「現在の私たちも同じような痛みをまだ感じていて、地続きな感じがあった」と話す。
吉田さんは痛みを丁寧に描いた理由を「100年前の人と同じ傷を、今の人も持っているというのを見せることで、つながれたり誰かの傷を癒せたりするのではないかという思いが強かったので、なるべく赤裸々にやりたかった」と語った。
痛みを描く上で心がけていること
痛みを引き継がない物語を書く上で、吉田さんが心に留めていたのが「完全な悪人も善人もいない」という思いだという。
吉田恵里香さん「例えば、誰かを傷つけている人もその背景とか環境とか、様々な価値観を取り込んだ結果そうなっている。完全な悪人も善人もいないというのはすごく気をつけて書いています」と語る。
「すごくいい人に見える人でも無神経な部分があるし、すごい人に見えても全く偏見がない、差別がない人はいないので、(完全な悪人、善人に描く方が)危険だなと思っています」
「みんなが自分の中にある、ちょっと誰かを傷つけたり、誰かに優位に立ってる部分を見ないと、いい社会には繋がらない。明確に差別する人とか、明確に傷つけてやろうという人は論外ですけど、大抵の人は、『私は傷つけてないし、差別してないし、どっちの立場にも立っていない』って思ってる。だけどそんなことは絶対ないと思います」
「誰かを傷つけているし誰かに傷つけられている。だから一筋縄じゃ語れないっていうのを、エンタメでも、一人のキャラクターだけでも描く。物語の中でも描く。多面的な部分をすごく意識しています」
もう一人の主人公
『虎に翼』では、妊娠した寅子が恩師の穂高重親の一言で深く傷つく。その寅子もまた、裁判所の激務に追われる中で家族の気持ちを省みることができなくなる。
自身も、仕事が忙しくて子どもと一緒に時間を過ごせないことがあるという犬山さんは、『虎に翼』で描かれたそんな「不完全」な部分に惹かれ、より自分ごととして感じられたと語った。
犬山紙子さんまた、『虎に翼』は、初の女性弁護士・判事である寅子が単に活躍する偉人伝ではなく、親友の花江やお母さんのはる、娘の優未など「もう一方の主人公」にもスポットライトが当てられる。
吉田さんは「専業主婦対キャリアウーマンのような敵対視ではないというのを伝えたかった」と振り返った。
『虎に翼』が高く評価されている吉田さんだが、「制作現場から面倒くさい脚本だなと思われてるのかな」と考えることもあるいう。
ハフポストの泉谷由梨子編集長鼎談では、そういった脚本家として感じてきた葛藤や、現在に生きる人々が直面している新たな痛み「課金ベースの社会」についても語った。
吉田さん、犬山さんと「女性の痛みを引き継がない作品作り」を語ったハフポスト日本版の鼎談はこちら。
Source: HuffPost




